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【ドイツ旅行 (10)】

夜… 凪自慢の肉じゃがは大好評。照り焼きチキンは焼き鳥風に仕上げたらビールによく合うと祖父母も気に入った様子だった。 大量にあった食材もあっという間に完食。 一応アビーの分を少し取り分けて置いたのだが、うん、最初に取り分けて置いて良かった。と凪は改めて思った。 この家で残り物が出ることはほとんど皆無らしい…。 そしてこどもたちがベッドへ向かう頃、クロイが家族の運転で迎えに来てくれて凪と紅葉はバーへ向かった。 友人たちが次々と集まって同窓会のような雰囲気の中、ドイツビールを手に何回目か分からない乾杯をする。 凪は飛び交う英語とドイツ語の会話にも不安だったが、年下ばかりだから話が合うだろうかと心配していたが、みんな気さくで話しやすく、意外と年の近い人もいて楽しく過ごせている。 普通に来店した人も顔見知りなので、気付けば一緒に飲んでいるという平和さだ…。 「ハーイ! 日本でどんな仕事してるの?」 「カケの友達だって?」 凪は完成したばかりのLinksの新曲MVを見せるとすごく盛り上がってくれた。 イントロに紅葉のヴァイオリンを入れていてロックとのミックスが絶妙なのだ。 「モリー(紅葉のこと)カッコいいじゃん!」 「2年前、好きな人が出来たから日本の大学行くって聞いた時はどうなるかと思ったけど…!」 「一番青ざめてたの高校の担任だよな!」 「今連絡して呼んでるよー!」 紅葉の成績は本当にギリギリだったそうで、実は猛勉強したのだとか… 「そんなに日本に来たかったの? 俺がいるから?」 「うん…っ! 絶対、僕の王子様だって思って…!」 照れ隠しだろう、急にメルヘンチックに答える紅葉。 「まさか本当に恋人同士になるとはね…!」 「モリーはつい最近まで恋愛って何ー?美味しいの?って感じだったのになぁ…!」 「一途さでサムライを落としたんだなっ!」 みんなの学生時代の笑い話を聞いて、酒を楽しむ。こんな風にバカみたいに騒げるのは貴重だ。 「ねぇー! 2人は婚約したんだって?おめでとうっ!」 「おめでとうっ!」 「モリーおめでとうーっ!乾杯しよう!」 田舎の情報の速さに驚きながら、2人は笑顔で乾杯に応えた。 その後現れた高校の先生は紅葉に熱烈なハグをしてくれた。 「モリー! 元気そうだな! あぁ、お前が日本へ行くって言い出してから俺がどんなに苦労したことかっ!」 「えへへ。先生ありがとー! 僕も頑張ったでしょー?」 「日本の音大はどうだ? いつこっちの音大に戻るか決まった? コンクールはどうした? お前ならエントリーするんだろう? うちの高校から世界コンクール出場者が出るなんてなぁ!」 恩師からの質問攻めに紅葉は少し考えてから答えた。 「んと、彼氏と従姉妹と一緒にバンド始めてそっちの活動があるからドイツには戻らないことにしたよ。 ドイツには…っていうか、凪くんと一緒にいたいし、犬も飼ってるから日本で暮らすの。 コンクールは出るのはいいんだけど、時間が勿体なくて…どうしよっかなって…。 最近、上手に弾くことより、楽しく弾く方がやりがいががあるなって思ってるんだよね…。 珊瑚とみなちゃんとストリートで演奏してみたいなとか…やりたいことはいっぱいあるんだ! でもヴァイオリンもベースも大好きだからずっと続けるよ! あのね、僕は日本で幼稚園の先生の資格とって、こどもたちに音楽の楽しさを伝えたいんだ!」 紅葉の台詞に絶句する担任の先生…。 紅葉ならヴァイオリンで華々しく活躍する道も選べるだろうが、本人が望んでいるのはバンドとの両立と恋人と日本で暮らすこと。そして音楽を通じてこどもたちを笑顔にすること。 「先生のおかげもあって紅葉と再会して恋人にもなれました。ありがとうございます。 ちゃんと俺が面倒みますので…一生。 ご心配なく…。」 凪はそう言って握手をした。 紅葉は少し離れたところで友人たちと盛り上がり、凪はクロイに家の設備の相談をしていた。 「クロイ、リフォームもやってる? 紹介でもいいんだけどさ。 バスルームのお湯、なんとか出来る?」 「出来るよ。」 「あとウォーターサーバー…分かる? こういうのってある?」 凪は写真を見せてこちらも見積もりを頼んだ。 「凪ー!飲んでる?」 「みんなでご馳走するからたくさん飲んでね!」 「ありがとう。 みんなに日本のお土産持ってきたから好きなやつもらって帰って! ドイツ人はよく飲むねー!」 「ありがとう! ビールの国だからね!」 「違う、ビールとサッカーの国!」 酔っ払いたちは陽気に話している。 「マニーは色気が出たね! サムライのおかげだな!」 「そう? 光栄だね。」 「モリーとは相性がいーの?」 首もとのキスマーク(正しくは噛み痕)を指差されてからかわれる。 奢ってくれるというし、酒の肴に…と凪も応えることにした。 「男は他を知らないけど…相性は…うん、そうだね。いいと思うよ(笑)」 友人たちは口笛を吹きながら笑って盛り上がる。 「今夜も?あんま飲ませない方がいい?(笑)」 「ハネムーンだからなっ!」 「いや、今日はもう済ませてきたし…! ってヤバイ。 紅葉が見てる…(苦笑) 怒られるから…秘密。 ってか、みんなどこでしてるの? この辺ホテルないよね?」 「隣街にあるよ。治安悪いからオススメしないけどね。 あー、家か納屋とか車?(笑)」 「なるほど…(笑) ドイツはさ、中学生のカップルって…してる?」 「え、するよね?親の目盗んでさ(笑)」 「全然ありだよー!」 「日本は?」 「まぁ、ありだね…(苦笑) マジかー…。 よし、見張っておこう。」 「何?レニ? あれは可愛いからモテるよな。」 年の差的にはレニ(13)と彼等(19)も紅葉(19)と凪(24)も同じなので、警戒する凪…。 「何の話ー? さっき変な話してたでしょ? 夜の話はみんなに喋ったらやだよ…っ。」 紅葉が凪の腕を取って言うので「ごめん、ふざけてただけだよ」と髪にキスをする凪…。 「ちゃんとキスしないとダメなんだよっ!」 「…お前…、酔ってるね?」 紅葉がビールを2杯飲んだところまでは見ていたが、凪も話に夢中だったのでその後が分からない。先程から日本語しか話さず、キスをねだる紅葉は完全な酔っ払いだった。 「酔ってないよ! ビールだもん!」 「それ酔っ払いがよく言う台詞。 はい、こっちきて。あとは水ね。」 凪にくっついてニコニコと嬉しそうな紅葉… 友人たちも幸せそうな2人をみて安心したようだ。 日付が変わる頃、クロイの家族の車で送ってもらった。 「ありがとう。 じゃあ例の件、よろしく。」 「OK! お休みー!」 紅葉は半分以上寝てしまっているのでそのままベッドへ運ぶ凪。 「ん…。 凪くん…っ!」 「何?水いる?」 「キス…っ! チュウがいるのっ!」 「分かったから……! はい、もう寝て。」 「あと5回っ!」 面倒なので、高速で5回キスして、身体を離した。 「…寝なさい。」 「はーい。おやすみー。」 紅葉を寝かせると凪はシャワーを浴びにいった。 紅葉が日本で成人しても外ではビール3杯以上飲ませないと誓ったのだった。

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