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【ドイツ旅行 (11)】

翌日は土曜日… 昨夜飲みに行ってたこともあり、寝坊した凪と紅葉は祖母が作ってくれたフレンチトーストとコーヒーをいただく。 「ごめん、毎日作るって言ったのに。」 食べながら凪が謝ると祖母はなんてことはないのだと笑った。 彼女のフレンチトーストはなかなかの絶品である。 「いいのよ。 あんまり怠けてるとあなたたちが帰ったあと大変だもの! 昨夜は楽しかった?」 「うんっ! 久しぶりに友達にも先生にも会えたよ!」 紅葉も笑顔で答えていろいろと報告している。 こどもたちは朝から隣の農場の手伝いへ行っているらしい。紅葉も食べたら合流するらしい。家畜の世話は凪には難しいので家事を手伝うことにする。 アッシュとフィンは午後からサッカーのレッスンだ。それに合わせてレニとサチを連れて買い物へ行く予定。 お昼はホットプレートを出してお好み焼きをみんなで作る。初めて目にするベタベタのタネに不信感を抱いていたが、だんだん焼けてきていい匂いが漂うと早く食べたい!と急かし始めた。 お好み焼きは二枚同時に焼いているが、絶対足りないので、普通にキッチンのフライパンでやきそばも作ることにする。 焼きそばはパンに挟んでも美味しいのだというと、みんなが一斉にパンを取りに走る。 「ほんと、紅葉も兄弟も、みんなよく食うね(笑)」 「えへへ。 大食いなとこ似ちゃって…。 みんなー、凪くんのご飯美味しいよねっ!」 「最高っ!」 「美味しいーっ!」 「俺もっと食べるっ!」 「作りがいがあるよ(苦笑)」 「次来る時はたこ焼き器も持ってくるねっ!」 午後… アッシュとフィンを練習場へ送り、凪と紅葉はレニとサチを連れてショッピングセンターに来ていた。 「これにするー!」 「…ダメ。それスカート短過ぎる…。」 「えー? そうかなー? いいじゃん、可愛いよー!」 「もうちょっと中学生らしいやつにして。」 「えー…!」 レニの選んだ服にリテイクを出す凪はもう立派な保護者だった。 「さっちゃんはどれにする?」 「サチはレニお姉ちゃんのがあるからいいの。」 紅葉が聞くが、お下がりをもらうからと遠慮するサチ。誰も告げていないが、彼女は自分の薬代や治療費が高額なことをうっすらと分かっているのだ。 与えなければお菓子ひとつ欲しがらず、いつもスーパーで選ぶのはみんなで分けられるジュース一本。 祖父母はもちろん紅葉も珊瑚も、サチにはもっとワガママでこどもらしくいて欲しいのだと願っている。 「サチー! おいで。」 凪が呼んで、紅葉とサチが売場を移動してやってきた。 「これどう? レニとお揃い。 ここならサイズありそうだよ。」 可愛らしい花柄のカットソーはサチも気に入ったようだ。大好きなお姉ちゃんとお揃いの服にサチの顔も自然と笑顔になる。 「わぁー!可愛いっ! 絶対2人とも似合うよ!」 「お揃いとか…色違いでも、レニは嫌?」 難しい年頃のレニ。 凪は心配して小声で聞くが、彼女は笑顔だった。 「嫌なわけないよ! 妹とお揃いって着てみたかったの。 これにする!」 「じゃああとは……」 買い物と休憩(スイーツ)を終えて、練習場へ戻る。 ちょうど練習試合をやっているところだった。 「頑張ってー!」 サチが可愛らしく兄たちを応援している。 「アッシュ速っ!(笑)」 パスをもらったアッシュは猛スピードでピッチを駆け抜けていく。 最後はフィンがシュートを決めて、兄弟のコンビネーションにみんなで盛り上がった。 試合も勝ったようだ。 「お兄ちゃんたちすごいっ! サチも走りたいっ!」 「……。そうだよね…。 でもね…」 思いっきり走ることは身体に負担がかかるので、困惑する紅葉… するとアッシュがやってきて、サチを抱いてピッチを走っていく。 「わっ!バカっ、危ないっ!」 6才のアッシュではいくら小柄でも4才のサチを抱っこするのには無理がある。 それでも妹を落とさないように何度も休憩しながら走っていく彼はとても楽しそうで、誇らしげだった。 途中からフィンが交代してサチを抱えて走り、紅葉たちの元へ戻ってきた。 「楽しかったーっ!」 「良かったねっ。 ほら、2人とも!まだ挨拶残ってるみたいだよ!早く戻りな。」 レニが言うと2人は再び走っていった。 「「はーいっ!」」 本当にいい兄弟たちだ。 「晩飯奮発しないと。」 「そうだね!勝ったもんねっ! ここはやっぱりカツカレーだねっ!」 「…それ試合前の験担ぎで食べるんだけど…。まぁいいか。肉食いたいだろうし。カレーはみんな好きだよな。」 翌日のランチは約束通り、凪お手製のお子様ランチを作った。 ハンバーグに付け合わせはブロッコリー、トマト、エビフライはエビが高額で手に入らなかったのでミニコロッケにして、オムライス、デザートに手作りプリン。 因みにオムライスの上に乗せる旗は紅葉の手作りだ。 日本で買ってきた新幹線型のプレートに乗せてテーブルに出せばみんな目を輝かせた。 13才のレニには女子が好きそうなカフェ風オムライスとサラダに仕上げて、SNS映えを狙った。 「すごい!お店みたいっ!」 「美味しそう!」 「好きなのばっかりー!」 「毎日これがいいっ!」 とても喜んでくれた。 午後、凪と紅葉はアビー、フィン、アッシュを連れてサッカー観戦へ。 凪はせっかくだからと全員分のユニホームを購入してスタジアムへ。 凪も紅葉もルールは分かるが、特別サッカーファンというわけではないのだが、気がつくと白熱した強豪プロチームの試合を目の前に大いに盛り上がっていた。 試合が終わる頃には隣や前後の席の人たちともビールで乾杯し、笑い合っていた。

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