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【ドイツ旅行 (14)】

そして金曜日… 学校が早めに終わったレニたちの帰りを待って、みんなが揃うと着替えや戸締まりを済ませて駅へ向かう。 凪と紅葉が用意した滞在費をどうしても受け取ってくれない祖父母と、この10日間ですっかり打ち解けた紅葉の弟たち全員(大人はアビーも数に入れて5人、こどもが4人)で家族旅行だ。 行き先はすぐ隣の国、チェコのプラハ。 一泊だが、みんなで想い出作りだ。 紅葉の実家へは月曜日の朝まで滞在予定なので、みんなと過ごせるのもあと僅か…。 日曜日は隣のおじさんおばさん、友人たちも含めてみんなでパーティーの予定だ。 実はプラハは凪の借りている家の大家である池波の息子家族が住んでいる街。 普段親しくしていて、紅葉を自分の孫のように可愛がってくれている池波とは…カミングアウトにより少し距離の出来てしまった微妙な関係…。 しかし、出発の前に小遣いだと言って大金を渡してくれた池波へどんなお返しが良いのかとたくさん考えて、思い付いたのが息子家族のビデオレターだった。 とりあえず息子家族の連絡先は知っていたので、アポを取り実際に会いに行って普段の生活を撮影してもらい、DVDにしてプレゼントにしようと提案すると、快く引き受けてくれたのだ。 家にも招待してくれて、明日は観光とランチも一緒に過ごす予定だ。 池波からの小遣いと紅葉の実家に入れるはずだった生活費や光輝からの餞別もこの旅費に回した。 もちろん池波へのお土産は別にも用意するが…。 電車で数時間の距離だが、サチの体調に十分気をつけながら向かう。 電車のチケットは鉄道会社で働く紅葉と珊瑚の友達がみんなでゆっくり出来る席を用意してくれた。 家の中ではあれだけ騒がしいこどもたちも、公共の場ではとてもお行儀よく、年上の子が年下の子の面倒をよくみていて、更には祖父母への気配りも出来ていることに感心する凪…。 紅葉はみんなにキャンディとチョコレートを与えて、みんなに夕食のレストランのメニューを見せている。 注文も大量になるので、今のうちにアビーが取りまとめて紙に書いていく。 「紅葉、光輝からモデルの仕事来てるけど…メール見た?」 「まだ見てないー。 でもやっていいならやりたい!」 「やっていいっていうか…今回何でか知らないけど、俺も一緒なんだよね。」 「?凪くんと…僕でモデル…? えー、何の?」 「怪しいやつかと思ったら普通にスーツの会社だった。デザイン系も出してるからそれかな?」 「凪くんのスーツ…っ! ヤバーイっ!どうしよう…っ! 絶対カッコいいんだけどっ!!」 頼んだら凪くんのデータ全部もらえるかな?とか雑誌になるなら何冊買おう…などと呟く紅葉… 「…(笑) とりあえずやるんだな。OK!返事出しとく。 あと急だけど、帰ったらわりとすぐ…ツアー前に合宿…って言っても金曜日からの2泊3日だけど。紅葉スケジュール大丈夫?」 「合宿?やるんだね! 春休み中なら大丈夫だよー。 場所と日にちどこ?」 一度スマホを返してもらってスケジュールを確認する紅葉。 「ツアー直前のとこ。場所は京都。」 「京都? そのままツアーに入るんだね。 リハーサル兼合宿かな?」 「そんな感じ。 因みに宿泊先はうち(実家)だって(苦笑)」 「わぁーいっ! あ、だからかー!」 「何?」 「凪くんのお母さんから一緒にお芝居観に行かないかって誘ってもらってて… 凪くんに遊びに行く予定なのか確認しようと思ってたんだー! あ、やっぱり!合宿の日程のとこだー!だから誘ってくれたんだねー。」 「スケジュールの把握が速すぎだな、うちの母親…(苦笑)多分都合つきそうだから俺らは平九郎連れて早めに行ってようか。」 「うんっ!」 紅葉は嬉しそうに答えて、早速凪の母親へメールの返事をしていた。 夜… 「あ、アッシュ…静かだと思ったら寝ちゃってる。」 宿泊先のホテルで、男たちは一部屋に集まってテレビでサッカーの試合を見ていた。 金曜日の夜ということもあり、疲れが出たのだろう、アッシュはいつの間にか寝落ちしていた 「おじいちゃんもウトウトしてる…。 フィンも眠い?」 「うん…。もう寝る。 明日、観光…お城に行くんでしょ?」 毎朝凪に空手を教わっているフィンも眠そうに目を擦っている。 「そうだよ。 明日のために早く寝ようね。」 アビーが優しく諭し、フィンの手を引いて隣の部屋で一緒に寝ると言う。 反対隣の部屋を覗くとサチも眠ってしまったそうで、おばあちゃんがこのまま寝かせると言ってくれた。 「はい、兄さんたちの荷物…。」 レニが凪と紅葉の着替えが入った鞄を渡してくれた。 「ありがとう。 レニ、勉強してるの?」 「うん。 彼とメッセージやりとりしながらね。」 「…ほどほどにして休みなね。」 お休みと言って、少し廊下を進んだ角部屋へ移動した2人…。 同じフロアだが、この部屋だけちょっとランクが上なのだ。本当は祖父母に使ってもらおうと思っていたのだが、もしかしたらみんなが気を遣ってくれたのかもしれない…。

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