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【ドイツ旅行 (17)】
翌朝の朝食はアビーとフィンがカフェでパンとコーヒーを買ってきてくれたので、ありがたく受け取り部屋で食べることに。
「どっか痛くない?
動けそう?」
「うん。大丈夫。
食べたら元気になるよー。」
昨夜の余韻を引き摺りながらも紅葉は笑顔を見せた。
凪はチェックアウトに向けて荷物を片付けながらベッドの上で身体を休める紅葉にキスを仕掛けた。
「ん…っ、あ…、もう…っ!
ダメ、だよ…っ。
観光行けなくなっちゃう…!」
「あとちょっとだけ…。」
2人が甘い時間を過ごしていると、ドアがノックされた。
「お兄ちゃんたちー!
もう出発よーっ!」
「…はぁーい!
今行くよっ!」
子供たちは今日も元気いっぱいらしい。
池波氏の息子家族と合流して、観光へ。
カメラを回しながら有名なお城を見て回る。
祖父は歴史の先生なので活き活きと、とても詳しく説明してくれている。
回りの観光客の質問にも答えたり、家族旅行というか修学旅行のような雰囲気だ。
「絶対に団体ツアーだと思われてるな…(苦笑)」
サチを抱っこしながらゆっくりと坂道を登る凪はそんなツッコミを入れながら景色を楽しんだ。
アビーは池波氏の孫たちと年も近くて、楽しそうに日本語で話をしながら、きちんと弟たちにも注意を払いながら歩いている。
レニはお城に夢中で写真を撮っているし、フィンとアッシュは時々少し前を走っては戻ってきてを繰り返している。みんな元気いっぱいだ。
「サチも歩く…!」
「お。歩く?
でもちょっと人が多いから…もう少し広いところに行ったらね。
…あっち行ったら歩こうね。」
「うんっ。」
凪が簡単な英語でそう伝えれば分かってくれたようだ。
「ごめんね、凪くん…!任せきりで…。
ずっと抱っこは重いよね…。」
「全然大丈夫。
紅葉こそ身体ツラくない?
もっと体重かけて掴まっていーよ?」
「だ、いじょうぶ…。
ゆっくり行けば…!」
腰を支えられて赤面した紅葉はそう答えて、みんなの後を追った。
みんなでお土産を買い、ランチへ。
その後は、自宅に招かれて広い庭でお茶をごちそうになった。
こどもたちは池波(息子)宅の飼い犬とフリスビーで遊びながら走り回っている。
「平ちゃんに会いたいよぉ…っ!」
紅葉は平九郎よりだいぶ小柄な黒い犬を抱き締めながら呟いていた。
こどもたちを祖父母と紅葉に任せて、凪はビデオ撮影。
家の中を案内してもらったり、一人ずつメッセージを撮影し、家族写真も撮った。
カメラを切ったあと、息子さんは複雑な胸の内を明かしてくれた。
「本当は一緒に暮らせたらいいんですけどね…。親父も年だし…!」
「こどもたちがずっとこっちなので、友達と離れたくなかったり、大学もこちらに進学する予定で…
私たちも悩んだんですけど…苦労した分、こちらの暮らしが気に入ってしまって…。」
奥さんも板挟みになり、大変そうだ。
「親父がこっちに来れないか…何度か聞いてみたんですが、まぁ、難しいですよね、言葉も分からないし…。食べ物だって…!
親父はずっとあの地域で育ったので家を離れたくないんだと思います…。
こっちに来たらお袋の墓参りも出来なくなっちゃうし…!」
「…そうでしょうね。
きっと分かってくれると思いますよ。
このビデオ見せたら、皆さんがここで幸せに暮らしているのも伝わるだろうし、じいさん…無理に日本に帰ってこいとか言わないと思います。
ご家族全員での帰省は難しくなっても、長期の休みの時、誰かは顔見せに行く感じですよね?
普段は俺たち…主に紅葉が仲良くさせてもらっているので、体調とかもし心配なことがあれば連絡させてもらいます。」
「ありがとうございます。
近くに親戚もいるのですが…、みんな父さんのお金目当てで…ご機嫌取りだけなんですよ。
本当に父のことを心配して、いつも気遣って下さり、こうして私たちにまで会いにまで来て下さったお二人のことを信頼しています。
…よろしくお願いします。」
帰りの電車ではみんな爆睡で、夕飯は隣のおばさんが差し入れてくれたビーフシチューとサラダをいただきながら想い出話に花を咲かせた。
日曜日…
みんなで過ごす最後の日。
凪はリクエストに応えてもう一度お子様ランチを作って、手作りプリンはホイップクリームとフルーツで飾り付けもした。
夕方から夜にかけてはずっとパーティーだ。
友人たちもビールや食べものを手に集まってくれた。
家の中に入りきらないので、庭でビールを飲みながら楽しむ。
唐揚げに野菜の天ぷら、ちらし寿司(生物はなし)、茶碗蒸し、肉じゃが、お好み焼き…内容は統一感もなくバラバラだが、凪はみんなが好きな料理をたくさん作った。
「帰っちゃヤダっ!」
「日本に帰らないでっ!」
1人がそう言えばみんなもそう言ってくれた。
「本当っ!
こんな素敵なお料理が作れるなんて!
凪は最高のお嫁さんねっ!」
特に家事を休めた祖母は本気で凪を手放したくない様子だった。
「えっ?!待って!…俺が嫁なの…?(苦笑)」
「ふふっ!」
凪はこんな風に恋人の家族と打ち解けて過ごすことが出来て本当に嬉しかったと礼を伝えた。
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