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【ドイツ旅行 (19)】

「あれ? お家が、ない…?」 「…良く見ろよ。 家の前に門があるんだろ…? 家はあるよ(笑)」 「あっ!本当だぁー! 良かった!」 2週間振りに帰宅してみれば、オープンタイプだった家の前に立派な門が設置されていて驚く2人… 「アホ過ぎっ…! あ、凪。コレで開く。」 「へぇー! スゲーな…!」 後部座席の珊瑚はリモコンを操作して、車が入れるように門を開けた。 「歩きの時は横の扉から入れるって。」 「何でこんなすごいことに…?」 「2人が芸能人だってようやく分かったみたい。テレビ映ってたの見たって。 工事もソッコーだったよ。」 「ヤベー…!これいくらかかってんの? ちゃんと礼言わねーと…。」 旅の疲れも感じさせず、空港から運転してきた凪は久しぶりの愛車(AT車)と自宅にホッとしつつ、同じ敷地内に建つ大家の家を横目に呟いた。 「平ちゃんっ!」 紅葉は玄関を開けると同時に飛び付いてきた平九郎を抱き締める。 ずっとずっと会いたくて、心配だった愛犬は紅葉との再会に尻尾を千切れんばかりに振って喜んでいる。 「わんっ!」 「ただいまぁーっ! 会いたかったよぉー!」 髪も乱れ、顔中舐められながら平九郎を撫で回す紅葉… 愛犬は凪にも尻尾を振って飛び付いてくれた。 「はいはい…! ただいま…。 元気そうだな。」 「最初2日くらいあんま食べなかったけど、みなが来て与えたら食ったよ。 ねー、とりあえず家の中入らない?(苦笑)」 玄関先でずっと愛犬とじゃれつく2人に、後ろから珊瑚の声がかかった。 「ごめーんっ!(笑) ほら、平ちゃん! ソファーいこっ!いっぱい撫で撫でしようねー!」 ソファー前のラグの上で平九郎と戯れる紅葉… 凪もソファーに座ってその様子を眺めつつ、時々寄ってきてくれる平九郎の頭を撫でた。 「一応掃除機かけたけど、ネコ毛残ってるかも…」 「…くしゅんっ!」 珊瑚が言った直後、猫アレルギーの紅葉がくしゃみをしたが、平九郎の毛かもしれない…。何せ揉みくちゃ状態だ。 「にゃんこたちはどうしたの?」 「里親無事に見つかって、でもまだちっこいから譲渡までは猫のプロに任せてある。」 「猫のプロ?」 どうやら動物病院から近所の保護猫活動をしている方を紹介してもらって、預かってもらっているらしい。 「ホントは譲渡まで世話するつもりだったけど… 俺、明日帰ることになったから。」 「「えっ?!」」 珊瑚の急な予定変更に驚く2人… 予定より2週間以上早くの帰国だ…。 「帰るってか、フランス行くんだ。 仕事ー。」 聞けば先輩が足を怪我してしまって、アシスタントに入らないといけないらしい…。 すぐに来い!という師匠をなんとか説得して、明日発つそうだ。 「えーっ!そんな…っ!」 「そんなわけで…疲れてるとこ悪いけど…俺は凪の肉じゃがが食べたい。」 「…いーよ。あとは?」 「肉っ!」 「じゃあ今日は焼き肉行く? 平九郎のこと見てくれた礼に奢るよ。 肉じゃがは帰りに材料買って明日の朝か昼でも良ければ作ってやる。」 「よっしゃ! あの味なら朝からでも食える!」 「翔くんは?」 「…ツアー行ったよ。 南の方…。」 「そっかー…!全然一緒にいれてないんじゃない?寂しいね…。」 「…確かに…今回2回しかヤってねーわ。」 「珊瑚…っ!そこは濁していーって…(苦笑)」 「まぁ…猫の世話手伝ってくれたし。 その間ちょっとだね撮影出来たし…!助かった。 まぁ、あんまずっと一緒にいるとその分ツラくなるから…。ちょうどいい感じになったんじゃね?」 「珊瑚…っ!」 寂しそうに呟く片割れをギュっと抱き締める紅葉。 「お前…犬臭いよ…?(苦笑) うわっ!服までヨダレまみれじゃん! 焼き肉行く前に顔洗って着替えろよ!」 「ごめーん! でもいーの!まだしばらく平ちゃんとこうしてるっ!あ、お土産いるー?」 「…俺ドイツに住んでるんだけど? 自国の土産なんていらねーよ!」 「えー?スーパー行ったら懐かしいお菓子がたくさんあったよ!」 「兄弟のやりとりも和んだけど、お前らの会話が一番面白いな(笑)」 仲の良い双子を置いて、凪は荷物を片付け始めた。 池波へ渡すDVDは移動中に編集も終わり、焼くだけなので先に準備することにする。 さっさと店を予約して、紅葉にも声をかけた。 「紅葉、店行く前にじいさんとこ顔出してDVDだけでも今日渡す?」 「うんっ!」 少し緊張して隣を訪れれば、いつも通りの池波氏が出迎えてくれた。 とりあえず帰国の挨拶と門のお礼を言って、留守中の体調を確認する紅葉。 「紅葉の従姉妹が何回か食事を差し入れてくれたよ。美人の飯は最高だな。」 「みなちゃん?そっか!」 「礼に裏で取れたタケノコをやったら次の日旦那が飛んできてタケノコ狩りをさせてくれと言い出してな。うちの裏は数も少ないから別のところ紹介したぞ。お前さんたちはミュージシャンじゃなかったのか?こどもたちとタケノコ狩りまでするのか?」 「大々的にやってるわけじゃないけど、施設の子たちと仲良くさせてもらってるんだ。多分それでかな?え、今度はタケノコ狩り…?(苦笑)」 「楽しそうっ! 僕タケノコご飯が食べたいっ!」 「…タケノコまだあるぞ。食うか?」 「いいのっ?わぁーい!」 「…ありがと。明日タケノコご飯にして持ってくる。肉じゃがも。」 「お前さんの料理はなかなかだからな。 楽しみにしてるよ。」 そう言われて自然と笑顔になった。 DVDの見方は大丈夫だという池波にディスクをプレゼントして家を後にした。 個室の焼き肉店でたらふく食べる珊瑚と紅葉… 凪は2人が落ち着いてからゆっくり食べようとひたすら肉を焼き続けた。 「それ僕のお肉っ!」 「あ?知らねーよ。早い者勝ちだろ?」 「あっ!またーっ!」 狙ってた肉を取られたらしく、紅葉が珊瑚を睨んでいる。 「紅葉、まだあるから…!」 「うん…ありがとう、凪くん! お茶頼んでいい?」 紅葉は温かい緑茶が良いらしい。 こんな美味しい飲み物が無料だなんて!日本は素敵!と感激している。 「いーよ(笑)それだけじゃ悪いし、俺はビール頼む。珊瑚帰り運転して?」 「はいはい。 こいつ、トロイでしょ?昔からだって皆に聞いた?弟たちにお菓子取られても気付いてなくて、あとで腹減ってから食べてなかったことに気付くんだよ。」 「聞いた。 ジュースとかも配分間違えて自分のがなくなっていつも皆から回収するんでしょ? フィンが得意だからやってもらってたよ?」 「成長してねーな…(苦笑) え、実家で何してきたの?」 「いじわる言わないで! 何って…普通にみんなで遊んでたよ。 トランプしたり、ドッチボールしたり、馬にも乗ったし!」 「本当に遊んでんじゃん(笑) 田舎過ぎて凪はビックリしたんじゃない? そういえば、ばぁちゃんに電話したら凪が飯作ったりしてくれたって喜んでたよ。 旅行にも連れて行ってくれたって。 フィンに空手も教えてたって?」 「良かった。 のんびりした田舎の雰囲気も嫌いじゃねーし。 紅葉のルーツが分かった。」 「凪くんが大人気過ぎて僕はちょっと困ったよ(苦笑)」

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