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【暖かな居場所 (3)】

普段はなかなか一緒に食事が出来ないのだが、2人が帰ってきているからと都合をつけて集まってくれた。 改めて部屋のお礼を伝える。 発起人である義父、正は"そんなそんな…っ!"とにこやかに笑いながら手を振った。 「いつも凪くん手伝ってくれるのにお給料受け取ってくれないからさ。 お礼とお祝いだよ!」 「家の手伝いで金なんてもらえないって。 …ほんと嬉しかった。 でも…片付けて良かったのかなってのも気になって…」 「もう亡くなって随分経つし、物置になってたからね。いい加減片付けないとって思ってたんだ。 2人が使ってくれたら両親も喜ぶと思うよ。」 「…ありがとう」 凪はもう一度お礼を伝えた。 「こんなに素敵なお部屋…! お部屋…っていうか…居場所をありがとうございます。 何も知らなかったからビックリしたけど、すごく嬉しいです! あ…。僕…、何もお返し出来ない…!」 「その気持ちだけで十分!」 「こちらこそお土産をたくさんありがとう!」 紅葉の精一杯のお礼は正にも早苗にもきちんと伝わったようだ。 みんなでお蕎麦を食べて、お土産の説明をしたり、いろいろな写真を見せながら旅の話しをしていた。 「結局向こうでも音楽やってたんだね(笑)」 「うん。凪くんはずっとご飯も作ってくれてたよ。」 「紅葉の家族、みんな細いのにスゲー食べるんだよね(笑)」 「羨ましいね~。」 最近お腹が出てきたという義父はそんな相槌をうった。 「あら、じゃあ食後のデザートにいただいたお菓子をと思ったけど、お父さんは止めておく?」 早苗が聞くが、義父は食べます!と答えてみんなを笑わせた。 「あら、このお菓子…!」 数あるお菓子の箱から早苗が1つ手に取りポツリと呟いた。 「どうかした?」 「これ…!珊瑚くんも送ってくれたのよ。 ほら、うちに来る予定だったのにお仕事で来れなくなっちゃったからってわざわざ…! あなたたちに渡した弟さんたちへ京都のお土産のお礼もって、あぁ、これももらったわ。」 「そうだったんだー! ごめんなさい、被っちゃったねー。」 「いいのよー。 どっちも美味しかったから。」 「さすが双子! 同じの選んでる(笑) お菓子たくさんあるね! スタッフにも分けてもいい?」 義はそう言ってお菓子の箱を覗いていた。 「あ、お父さんもこれ1つ欲しい。 美味しかったから…!」 「お父さん…、あまり食べすぎないでね? 珊瑚くん、次は来れるといいんだけど…。 あまり気を遣わないでって言ってね?」 「うん。 恋人と来たいと思うから、その時はよろしくお願いします。」 「ねぇー! 話変わるけど、 兄さんプロポーズなんて言ったの?! 紅葉くんのお祖父さんとお祖母さんに"お孫さんもください"って言った?」 義の質問に紅葉は赤面して下を向く。 「えっ?! えっとぉ…!」 「西洋式だと跪くのかな?」 正も興味津々だ。 話の犠牲になったのは凪で"頼むから止めてくれ"という目線を母親に投げている。 「……秘密。 ってか、普通にハズイんだけど(笑)」 「録画してないの?」 「録画?! したかった…! そんな余裕なくて…! あぁ…もったいない…!」 何故か義と紅葉が盛り上がっていて、話が変な方向へと向いている。 「あ、じゃあ再現しようよ! 俺撮るからさ!」 「…お願いだからやめて。(苦笑)」 照れる凪を中心に笑い合う4人はとても幸せそうだ。 「ふふ…っ。 僕、とっても幸せ!」 紅葉の一言にみんな微笑む。 隣に座る凪はそっと頭を撫でてくれた。 その優しくて温かな手に後押しされて紅葉は言葉を繋いだ。 「僕…男だし、外国人で、音楽以外は本当に…特に上手に出来ることもないんだけど…。 でも…凪くんのことが大好きです。 これからどんなことがあっても凪くんと、平ちゃんとずっと一緒にいたいって思ってます。 お父さん、お母さん、義くんのことも大好き!…あ、小麦ちゃんも! だから…僕もここのお家の家族になってもいいですか…?」 凪のようにカッコ良くプロポーズは出来ないけど、大事な家族にはきちんと想いを伝えたかったのだ。 紅葉の問い掛けに義父は即答した。 「もうなってるよ。」 そう言って優しく紅葉の頭を撫でた。 「そうよ。でもありがとう。 私たちも紅葉くんのことが大好きよ。」 「やっぱり紅葉くんはすっごいイイコ! 俺感動したよ! …あー、今の録画すれば良かったー!(笑)」 義の一言に場は和みみんなで笑い合った。 「ははっ。 ってか、のんびりしてていいの? 仕事あるなら普通に手伝うけど。」 「あら、こんな時間? 凪、出来たら厨房お願いしていいかしら? 杉さん腰が痛いって言うのよ…!」 「そーなの?病院行ってもらったら? あ、義くん、仕事終わったら飲もう。」 「是非っ!」 「いいなぁ。お父さんも飲みたい…!」 「父さん下戸でしょ?(苦笑)」 椅子から立ち上がり、支度をするみんなを眺め、紅葉は聞いた。 「僕は…? 出来るお手伝いある?」 「また夕方のお散歩お願いしていいかしら?」 「もちろん!」 「あ、あと商店街の福引きが今日までだからやってきてもらえるかな?」 義父が後ろの棚から福引券を紅葉に手渡した。 「ふくびき…?」 「くじ引きだよ。ガラガラって回すやつ。」 義が身振りで説明すると分かったようで頷く紅葉。 「紅葉やりたいって言ってたじゃん。 良かったな。」 「僕がやっていいの? 後は?」 「後はお片付けかな…。 ごめんなさいね、隠したいわけじゃなくて、あなたたち有名になってきたから…もし騒がれたりしたらゆっくり出来ないでしょ? だから裏方のお仕事になっちゃうけど、お願い出来る?」 早苗にそう言われて、凪にも外へ出るときはかならず帽子を被るよう念をおされる。 「うん!お手伝い頑張ります!」 「ありがとう。 今ちょうど学生バイトさんの入れ替わりの時期だから人手が足りなくてバタバタしてるんだ。助かるよ。」 正はお菓子を1つポケットに隠し持って、自分の持ち場へと戻っていった。

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