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【暖かな居場所 (17)】

翌朝、凪は早朝から厨房を手伝い、仮眠をとってから紅葉と共に大阪へ向かう。 「平ちゃん、お父さんたちの言うことちゃんと聞いて、イイコにしててね。小麦ちゃんとも仲良くね。平ちゃんの方がお兄さんだから優しくするんだよ!あと、僕のこと忘れたらダメだよ!」 たった数日離れる愛犬に何度も言い聞かせて、ギュッと抱き締める紅葉。 早苗たちにもお礼を言ってハグとまたねを伝えた。 「うう…っ、寂しい…っ!」 「また会えるって。 …LIVE大丈夫…?」 「頑張る……。」 元気のない紅葉に凪は魔法の言葉をかけた。 「道路空いてるから早めに着けそうだな。 よしっ! 大阪入ったらたこ焼き買ってやるから。」 「ほんとっ?!」 「紅葉たこ焼き好きだもんな? 実はいろんな種類あって旨いとこ調べてあるんだ。」 「わぁー! さすが凪くん! ありがとうー! すっごい楽しみになってきた! あ、いっぱい食べれるようにお腹を空かせないと!よしっ!…じゃあ僕歌うねっ!」 紅葉のノリに笑いながら、ハンドルを握る凪。 この笑顔なら今日もいいLIVEが出来そうだ。 終演後… 「じゃあ…よろしく頼むね。」 車で紅葉とみな、そして未成年2人だけで夜の移動は心配だということで誠一を駅まで送った凪は簡潔にそう伝えた。 「了解ー。お疲れ。」 「…ちょっと煙草吸ってきていい?」 「いーよ。どうせアレ待ちだから。」 みなと誠一がそんな会話をしている隣では紅葉が凪の袖を掴んで離さない。 「凪くん……!」 「はいはい…。」 寂しいと凪に抱き付く紅葉。 対照的にみなは眠そうに欠伸を堪えていた。 「なんでみなまで帰るの…?」 不満そうな声をあげたのはリーダーでみなの夫でもある光輝。 「別にいーでしょ? どうせ明日の午前中帰る予定だったし。 紅葉が夜一人だと怖くて寝れないとか言い出すから…。面倒だからうちに泊めようと思って。」 「…よし、俺も帰る…!」 「光輝くんは明日こっちで仕事でしょ? あ、部屋に置いてある残りの荷物、明日ちゃんと持って帰ってきてよね? 紅葉ー、もう時間だから誠ちゃんと合流して行くよ!」 凪の腕にくっつく紅葉を引き離して駅へと向かうドライ対応な彼女を見送った光輝は落胆しながら車へ乗り込んだ。 「凪っ! 帰って飲もう!」 「いや、俺明け方に実家戻らないとだから飲めねーよ?(苦笑)」 「じゃあノンアルで!」 「えー?…まぁいーけどさ…。 お前らほんと大丈夫だよなぁー?(苦笑)」 2日後… 凪は平九郎と、大阪での仕事を終えた光輝も途中で乗せて帰京することに。 義父の正が「お給料払わないと…!」と焦っていたが、丁重に断り、代わりにたくさんのお土産をもらって車に積んだ。 見送りに出てきてくれた早苗は「これ持って行って」とおもむろに手渡してきたのは凪名義の通帳と印鑑だった。 凪は驚いて母を見つめる。 「あなたがお店出す時か結婚する時に渡そうと思ってたのよ。」 「ごめん…両方とも予定ないし、貰えない…。 母さんが使ってよ。」 早苗は突き返そうとする凪の手を優しく包んで止める。 「ダメよ。これは私の子育てのケジメなの。 二十歳の時にと思ってたけど…あなた転職しちゃうし!…ちょっと渡すタイミングが遅くなっちゃったけど…!受け取って? …1つはお父さんからのよ。お母さんからのは額は大したことないんだけど…一応ね。 凪…、紅葉くんとずっと一緒にいるって決めたんでしょう? …2人のために使って。」 母の真剣な思いに凪は頷き、そっと手を引いて通帳を受け取った。 「…分かった。 …ありがとう。」 「…気をつけてね。 紅葉くんによろしく。 平ちゃんも、またね。」 光輝から仕事の話や夫婦関係の相談を聞かされながら、時折運転を交代し、夜自宅へ到着した。 「お帰りなさい! 凪くん! 平ちゃん! んーっ!会いたかったよー! もう…すっごく寂しかったっ! もう僕凪くん不足だよっ! 平ちゃんのお散歩行ったら一緒にあわあわのお風呂入ってラブラブしよ? あっ!オムライス作ったの! ねー、抱っこしてもらって食べたいな…。 スプーンで食べれるから…ダメ?? 今日は絶対片時も離れないたくないよーっ!」 玄関を開けた瞬間に凪に飛び付いてマシンガントークを繰り広げる紅葉に苦笑する凪と、尻尾を振って喜ぶ平九郎… そしてその後ろからは… 「ずいぶん熱烈なお出迎えだね…(苦笑)」 「あれ…? 光輝くんだぁ…っ!どうしたの?」 「…うん。 お邪魔しちゃってごめんね? 預けてた荷物、ちょっと必要なのがあって…寄らせてもらったんだ。 すぐ帰るから…」 「とりあえず家に入っていい? あ、光輝、送るよ?」 「いーよ。 そんな重くないし、近いし… ほんと…邪魔してごめん…(苦笑)」 遠慮がちに帰る背中を見送り、改めて紅葉と向き合った。 「そんなに寂しかったの? 電話もしてたし、みなのとこと、じいさんのとこにいたんでしょ?」 「うん…。一人暮らし寂しくて無理だった…。 朝起きても夜も寝る時に凪くんが隣にいないし…お風呂も一人で寂しかった…っ! 平ちゃんの暖かいもふもふも触りたかった!」 「そっか…(苦笑)」 ソファーに座る凪に腕を絡めながら、もう片方の手で平九郎の頭を撫で続けている紅葉 「凪くんは寂しくなかった…?」 「んー? そうだな。俺も…紅葉がいなくて寂しかったよ。母さんたちもお前がいないと静かすぎて寂しいって。」 凪の優しい声に笑顔を見せた紅葉。 凪は髪を透きながらゆっくりと口付けた。 「…紅葉…?お前、ちゃんとトリートメントつけて乾かした?2日の間に髪がパサついてる…!」 へへ…っと笑う紅葉に短くため息をついた凪。 「ダメじゃん。せっかく綺麗な髪なのに。 今日は念入りに手入れするからな。」 「はぁい!」 その後は夕食。 オムライスの卵をふわふわにするのが上手く出来ないという紅葉に凪は丁寧にコツを教えて、最後の仕上げまで紅葉に作らせてくれた。 要望通り、後ろから紅葉を抱かえながらの食事。 「美味しい?」 「うん…。ん…ちょ…っ! 今食ってるんだけど…?(苦笑)」 少し形は悪いが、ふわふわの卵とケチャップ味のご飯を口に運ぶ凪に身体を振り向かせながらキスをする紅葉。 「だって… なんか、我慢出来なくて…。」 「……。 ほら、ちゃんと食べて。 食べ終わって、平九郎の散歩行ってからな?」 「分かった。…あーんってやって?」 2日間離れただけで随分と甘えたになった恋人に苦笑しながらも要望通りにスプーンを口元に運ぶ凪。 「…はいはい…! あーん…。 おー、デカイ口だな(笑)」 いつでも全力で自分へよ愛情と素直な感情を向けてくれる紅葉の隣が自分の居場所だと改めて凪は感じたのだった。 End

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