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【ツアー中の出来事 1】
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この日は仙台でのLIVE後、光輝と凪は地元の深夜ラジオへ出演へ向かった。
宿泊先のホテルでお留守番の紅葉は寂しくなり従姉妹のみなへLINEすると、コンビニへ行くと言うので"女の子1人じゃ危ないよ!"とついて行くことに…
「あ、あった。」
「良かったね!
僕アイス買おうかなぁー。あ、でも喉も乾いた!コーンスープあるかな?それかおしるこ…みなちゃんもいる?
けっこう歩いたよねー。」
みなのお目当てのゼリー(LINE後の必需品)がなかなか見付からず、コンビニをハシゴすること3件目でようやく手にすることが出来た。
「相変わらず変な食べ合わせ…。
余計に喉乾かない?
夜中だよ?カロリーヤバいって…
私はいつもの炭酸水にする。」
「歩いたし、LIVEだったからきっと大丈夫ー!
あ、もしかしてここってもうラジオ局の近くじゃないかな?ほら、MAPに載ってるよ。
せっかくだからこのまま凪くんと光輝くんのお迎え行こうよー!」
「えー?やだよ。
すぐそこのコンビニまでって思ったからスッピンだし、ジャージなんだけど…」
「大丈夫だよ!変わらなくない?
ほら、サプライズ!
予定より早く会えるし、コーヒーでも買って行ったらきっと光輝くんも喜ぶよ!
ねっ、そうしよ?車で帰れるーっ!」
「…面倒くさい。」
「えー?!
あ、待って!これも買うから…!」
結局、財布を忘れた紅葉の分もみなが支払い、店の前でラジオ局へ行くかこのまま帰るかで揉める2人…
「ちょっとでも早く会えたら嬉しくない?」
「別に…そんな何時間も変わる訳じゃないよね?私は早く帰って1人でゆっくりゼリーを食べたいの。
あまり遅くなるとお肌にも悪いし…寝る直前は食べたくない…って、紅葉…めっちゃ美肌…っ!
こんな暴飲暴食してるのに…っ!
えー、このモチモチ…ムカつくなぁー。
ラブラブし過ぎなんじゃない?」
「えっ?!な…っ!」
赤面する紅葉をからかうみな。
彼女も十分綺麗なのだが、とにかくストイックなのだ。
そんな2人のもとへ見回り中の警察官がやってきた。制服姿の彼らを目にした瞬間、みなは小さく溜め息を吐いた。
「こんばんはー。
高校生かな?」
「この辺最近治安悪いし、もう遅いから女の子2人じゃ危ないよ。
2人はお友達?あ、姉妹かな?」
そんなことを言われて紅葉はショックを受けていた。
今年二十歳になる大学生だし、何より男だし、多分みなが姉だと思われているので三重のショックだ。
みなにもそれが伝わったらしく、隣で笑いを堪えているのが分かった。
「もう帰るとこなんで大丈夫です。」
みなが簡潔にそう答えて紅葉の手を引いてその場を去ろうとしたが、どうやら熱心な警察官らしく、お酒やタバコを買っていないかとか、家はどの辺なのかと聞いてきた。
みなは心底面倒くさそうに話を聞きながら、ヤンキーっぽさが出てしまっている金髪にジャージとスッピンを隠す為にかけてきたサングラスという格好を後悔していた。
「地元の子?それとも観光で来てるの?
よく見たら外国人っぽいね。パスポート持ってる?」
「……。」
いよいよ本格的に面倒くさくなってきたとみなは黙ってしまった。
「僕…日本人だよ?
高校生じゃなくて大学生です。
姉妹じゃなくてイトコで…えっと、
僕たちバンドをやっていて、ここにはLIVEの公演で来ました。」
「僕…?男の子だったか。ごめんなー。」
「未成年だけでどこかに泊まってるの?
誰か大人の人いる?」
「えっと…
どうしよ。誠一くんに連絡して来てもらう?それかスタッフの人?」
「あの人3日寝てないでLIVEだったんだから起こしたら可哀想だよ。
あ。もうラジオ終わったかな?
ちょっと待って、今連絡するから。
旦那たちが来ると思う。
紅葉、アイス溶けるから食べちゃえば?」
「えっ? うん…。
食べてもいいのかな…?」
「旦那…?
カレシってことかな?」
光輝に電話を繋いだみなは手短に説明していた。
「お疲れ。
もう出れる?
悪いけど、すぐ近くのコンビニに来てくれる?
紅葉と一緒なんだけど、しつこいのにナンパされてるー。
…2分で来るって。」
「みなちゃん…!ウソついたらダメなんだよ?」
「この方が早いじゃん?どうせあとで怒られるし。」
彼女の言い分に驚きながら紅葉は緊張したまま凪が来てくれるだろう道路側を見つめていた。
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