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【ツアー中の出来事 2】

ピッタリ2分で凪の車が滑り込んで来て、その後は状況を飲み込めないまま光輝がひたすら頭を下げていた。 「すみません、すみませんっ! ヤンキーじゃなくてロックバンドなんです! あ、これバンドのチラシです…! 今日LIVEで…仙台にお邪魔していて…」 「あ、これね。 …あー!けっこう大きい会場でやってるんだね。 若者音楽に疎いから…知らなくてごめんよ。」 「とんでもない!まだまだなんで! すみません!自分が彼女のLIVE後のゼリーを買い忘れたまま次の仕事に行ってしまったんで…自分が悪いんです!ご迷惑おかけしてすみません!」 「いえいえ。別に悪さしてて捕まえたわけじゃないし、そんなに謝らなくても大丈夫ですよー。 えっと…君の彼女なのかな?」 「あ!えっと名刺…っ! 自分がバンドの責任者です。 彼女は僕の妻で、彼は妻のイトコです。」 「……なるほど…! 若いのに夫婦でしたか。 …そちらの彼は?」 「彼もうちのバンドのメンバーで…」 「こいつのパートナーです。 お前ら…何したの?」 車を駐車場に停めた凪が紅葉の隣に立ち、警察官に軽く頭を下げた。 「凪くん…っ! 迷惑かけてごめんね!」 「…口にチョコつけてるぞ(笑)」 「あ、これあんこだよ。おしるこ…」 「…拭きなさい…。 場が閉まんないだろ…(苦笑)」 「…ねー、もう帰っていい?」 許可を得てコンビニを後にする。 もう一度ラジオ局に戻って挨拶を済ませてから、みんなでホテルへ帰ると、凪は紅葉を連れてみなと光輝の仲裁に入った。 車内で"夜中に出歩くな"、"俺が買って帰るまで待ってたらこんなことにならなかったのに"と説教をする光輝に"いい加減息が詰まる"と強烈な一言を放ったみな。 険悪ムードの2人を前に紅葉もオロオロとしている。 夜中に未成年2人で出歩いたのは少し軽率だったが、光輝の説教も白熱して話が脱線してきている。 「はいはい。余計なことしてすみませんでしたっ! ってかさ、なんでまた同室なの? 公私をきちんと分けようって話どーなったの? ツアー中は心身共に集中したいし、1人部屋がいいって何回も言ってるよね? 家でもさ、生活リズムが違うから物音がストレスなんだよね。」 「凪たちはいつも一緒じゃないか! …一緒の部屋がいい。」 「他所は他所。うちはうちでしょ。 張り合ってどうすんの?」 「あのさ、言い合いじゃなくて話し合いをしろよ…。」 ずっと話が平行線なので、凪が間に入る。 「僕は凪くんと24時間一緒に、出来ればずっとくっついていたいタイプだけど、みなちゃんは1人の時間も必要なんだよね? 感情をのせて歌うってすごく大変だと思うから、落ち着ける環境作りをしてあげるのも光輝くんの役割じゃない? 光輝くんは裏方のお仕事に集中する時間は必要だけど、出来るだけみなちゃんと一緒にいたいんだよね?」 「…そうだね。」 「紅葉がまともなこと言ってる…」 みなが驚いている。 「…お仕事の部屋は別々にして、寝るのは同じにしたらどうー?」 「そうしろよ。 家建てる前に一回少し広いとこに引っ越したらいいじゃん? ツアー中のホテルだってとりあえず2部屋と取って行き来するならすればいいし。 同室が嫌っていうか、みなはスタッフとかに光輝と同じ部屋で過ごしてるって思われるのもストレスなんだよ。」 凪もそう言って付け加えた。 「そ、そっか…。でもそんなことしたら多分部屋に入れてくれないよね?」 「さぁ…?」 「あと、光輝くんはみなちゃんに負担かけないようにって外食に誘ってくれてるみたいだけど、みなちゃんはお家で食べる方がリラックス出来ていいんだよ。 せっかく材料買って準備してるのに、急に外で食べようって言われたらガッカリしちゃうんだよ。」 「あー、それな。 メニュー考えるとこから料理って始まってるからなー。あと外食はカロリー高かったり、味付け濃かったりするし…、食事制限してたら食べられない物の方が多いんじゃね?」 凪の指摘にみなは頷いた。 「そうなんだよねー。 あまりにもいい店ばかり連れてかれるから最近は光輝くんは私の料理とか味付けが好きじゃないんだと思ってる。」 「そんなわけない! めちゃくちゃ美味しいよ! でも疲れてるのに家事までさせられないと思って…。それに結婚するまでデートしたことなかったから2人で一緒に出掛けたいんだ。」 「別にわざわざ外に出なくてもいいじゃん。」 「…はぁ…。 お前らはもっとちゃんと会話しろ。 光輝も前も言ったけど、プライベートはちゃんと仕事モードから切り替えて、相談してから物事決めろよ。みなはひねくれてるんだから余計ややこしくなるんだって。」 「う…。分かった…。」 「あ、ひどい。ディスられた(苦笑)」 2人は顔を見合わせて苦笑している。 「おい、紅葉!部屋に帰るぞ。 そこで寝るなー!」 「ん…?あ、ごめんー。 ……!」 「何? ヨダレ出てるよ?(苦笑)」 「ふふー、凪くんだぁ。カッコいいーっ!」 「そりゃどーも(笑) そんなに俺が好き? …もう部屋戻って寝るよ。」 「うん。 えっ?!待って! すーっごく大好きって伝わってなかった?」 「…それはこいつらだろ。 お前は分かりやすいから大丈夫。 …寝惚けてんの?可愛いじゃん? …じゃー、お疲れ。おやすみー。」 凪は紅葉の腰を抱いて部屋を後にした。 「…あーいうのが足りないと思う。」 光輝がみなに告げる。 「却下。見てるだけでお腹いっぱい。」 「…まぁ…そーかも(苦笑)」

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