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【ツアー中の出来事 3】
ビジネスホテルの狭いユニットバスなので、別々にシャワーを浴びてベッドで寛ぐ2人。
凪はいつも通り丁寧に紅葉の髪を乾かし、トリートメントをつけると一仕事終えたと満足そうだ。
「ありがとー。
何か飲む? 取ってくるよ。」
「水取ってー。
…ん。ありがと。」
「ふふ…っ。」
凪がミネラルウォーターを飲み終わるのを待つと、ベッドの上に座る彼の足の間に座り、抱え込むように後ろから抱き締めてもらい、ご機嫌な紅葉。
「そーいえば、さっきのコンビニまで歩いたの?」
「うん。
みなちゃんのゼリーがなかなか見付からなくて…。喋りながら歩いてたから距離感じなかったし、楽しかったけど、さすがに足がちょっと疲れた。」
「だろうね…。LIVE後だし…
マッサージしよっか?」
「あ…っ、大丈夫…。
さっき自分でシャワーの時ほぐしたから…。
ぁ…、ん…っ!」
紅葉の言い分をスルーして、凪は恋人の細い足に手を伸ばした。
さりげなく太股の間にまで伸びてくる大きな手にドキドキする紅葉…
凪は恋人の鼻にかかった甘い声に気を良くしながら疲れを取ろうとしてくれているようだ。
紅葉はそっと視線を向けて凪にキスをねだった。
「ん…、そういえばさっき…みなちゃんに"ラブラブしすぎじゃない?"って言われたんだけど…」
「…そう?
え、ごめん。身体キツかった?」
「…大丈夫…っ。
凪くん加減が絶妙ですし…っ!
…それで、思ったのは…、普通ってどのくらい?」
確かに光輝たちと比べたらずっとくっついているし、交際期間から見ても自分たちの新密度は高い自覚がある。
凪は少し考えてから紅葉に言った。
「…平均とか知らないけど、まぁ…カップルによるんじゃねーの?
俺としては最近紅葉から誘ってくれるのが増えたから嬉しい限りだけどね。」
紅葉はカァ…っと顔を赤らめながら、もう一度キスをねだる。
「さすがに今日はもう寝よ(苦笑)
チェックアウト時間に寝坊する…!」
「うん…っ、そうだね。」
「明日牛タン買って帰る?」
「買うーっ!
おじいちゃんと3人で食べよっ!
平ちゃんも食べれる?」
「おー。タンは噛みきれないと怖いから平九郎には違う肉な。
じいさんは…大丈夫かな?」
「おじいちゃん入れ歯じゃないよ!」
「(笑)
まぁ、ちょっといい肉買うか。せっかくだし。…この前スゲー高い焼き肉ご馳走になったしな~!」
「あれは美味しかったねー。
…思い出したらお腹すいてきたよ…」
「もう食べるのは止めておこうな…(苦笑)」
「うん。キスで我慢する…っ!」
ベッドに入りながら何度もキスを交わし、紅葉は今日も凪の胸の中で眠りにつく。
「凪くん…?
お家に帰ったらラブラブしてくれる…?」
「…もちろん。」
何気無い日常の中でも、些細な約束や小さなコミュニケーションが大事なのだと改めて感じた2人だった。
End
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