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【合宿とトラブル 5】

片付けは他のメンバーに任せて休憩タイム。 みなは「この大雨なら苦情も来ないかな…」とピアノを弾き始めていた。傍らでカナがピアノに触れて音の響きを楽しんでいる。 とりあえず今夜はみんなで喋ったり、どこからか持ち出したカードゲームをしたり、音楽を聴いて過ごすらしい。 ミュージシャンの夜は長い。 本当は宴会といきたいところだが、アルコールは少量(缶ビールかチューハイを2缶まで)のみ、万が一避難となった時のために運転要員を決めてその人は飲まないことに決まった。 凪はもちろん運転をかって出て、平九郎のトイレ散歩を手短に済ませて戻ると、自分のコーヒーと紅葉にはミルクティーをいれてソファーへ座る。 平九郎はボディーガードのご褒美に茹でた鶏肉をもらってご機嫌だ。たくさんの人がいるので最初は緊張していたようだが、凪が紅葉の隣に戻ると愛想良く全員の匂いを嗅ぎにいき、みんなに可愛がってもらっている。 「何? LINEしてんの?」 「うん。 おじいちゃん一人だから心配で… あ。雨は強いけど、大丈夫だって。返信早っ!(笑)」 「まぁ、うちの方は大丈夫だろ。」 「お母さんたちのとこはほとんど降ってないって。良かった…。 あ、あと、あの子たちもちゃんと帰れたみたいだよ。」 紅葉はあれだけ暴言を吐かれたというのに、Aliceのメンバーの心配までしていたようだ。 「あの子たち…? あー……あいつら? そんなんほっとけばいーのに…(苦笑)」 「そんなわけいかないよー。 あ、スタッフさんの連絡先しか聞いてないよ! ごめんなさいって。無事に東京着いたって。」 「お人好しー。自分の調子はどうなの?」 「落ち着いてきたー!お薬も飲んだし、もう大丈夫!」 「油断しないで早めに寝ろよ。」 「えっ!でも…悪いよ…。みんな起きてるし…。 …凪くんは?」 「ちゃんと側にいるから。」 結局みなとカナと3人でソファーで寛ぐうちにウトウトと眠りについてしまった紅葉…。 平九郎もすぐ側で眠っている。 凪はその様子を見守りつつ、光輝から状況を聞いた。 「とりあえず待機…。 土砂崩れの危険が出てきたら避難するかもだけど、この辺割りと平地だから大丈夫かな…。 どっちにしても夜明けまでは動かない方がいいって。 雨が止んでも川の水はすぐにはひかないだろうからしばらく通行止めになるのかなぁ…」 「そっか…。 風も出てきたから倒木とかないといーな。」 「食料は備蓄とかあるみたいだけど、ちょっと不安だね。紅葉は体調大丈夫?眠れてはいるみたいだね?」 「なんとか…。」 「みなとカナを部屋に行かせるから凪も少し休んで。」 「あ、凪お疲れ様ー! ご飯美味しかったよ。ごちそうさま。」 声をかけてくれた誠一はノートPCを広げて勉強中のようだ。 「ありがと。 光輝も誠一も少しは寝ろよー。」 他のバンドのメンバーと少し話をして、大半が酔いつぶれるか寝袋や椅子で雑魚寝を始めた頃、眠ったままの紅葉を抱き抱えて自室へと向かった。 平九郎も眠そう起き上がると後をついてくる。 ベッドに紅葉を寝かせると平九郎にもベッドクッションとお気に入りの毛布を出してやり「おやすみ」と告げた。 荒れる雨音と木々が揺れる風の音を聞きながら紅葉を抱き抱えて凪も眠りについた。 翌朝早朝… 窓の外を眺める人物を見て、翔は思わず息を飲んだ。 「珊瑚…?」 「…違うけど…?」 振り向いたのはみなで、朝方の彼女は起床後ストレッチとシャワーを終えたばかりだった。 「あ、ごめんー。 一瞬横顔が似てた。 そーだよな…ここにいるわけないんだけど…(苦笑)」 翔の最愛の恋人であり、紅葉の双子の兄、そしてみなのイトコでもある珊瑚は遠い異国の地にいて、最近写真の新人賞を授賞し、忙しい日々を送っている。 「私が厚化粧みたいな言い方止めてくれる?(苦笑)」 「あははっ! みなちゃんはスッピンでも美人だよー。 ちょっと妄想が幻想になっちゃった。」 「…遠距離大変だよね。」 「まぁねー。 仕方ないんだけど…」 そう寂しげに話す翔は眠そうだ。 明日ツーマンLIVEの予定があるLiT Jのメンバーはなんとかこの地を出られないかとMAPを見ながら迂回路を探していて気付いたら朝だったそうで… 「これから寝るの? 光輝くんさっき起きたからベッド使う?」 「えっ?!もう起きたの? ってか、さすがにご夫婦の寝室にお邪魔は出来ないよ!」 「あ。大丈夫。 同室は誠ちゃんだよ。 私はカナと。」 「……なるほど。 じゃあ…寝よっかな(笑)」 「どーぞ。 あ、リゾット作っておくから、良かったらあとで食べて。 おやすみー!」 「ありがとうー! 残ってたらもらうねー(笑)」 その辺に転がる男たちを避けながら、ゴミを拾ってキッチンへ向かう。 前の合宿の時と同じような光景にため息をつきながら食材を確認する。 道路が通れないなら人の移動も物資の調達も無理だ。今日もここへ留まるのなら、あまり食材は使えない…。 とりあえず昨日余った野菜を刻んでにベーコン、トマト缶、コンソメ、マカロニでリゾットを作ることにした。 レトルト食品のカレーもあるので、一応白米も炊いておく。 きっとみんなまだ起きないだろうし、朝は食べない人も多いだろう… 適当に作ると、凪たちの部屋へ平九郎を迎えに行き、紅葉のレインコートを借りて散歩に出掛けた。

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