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【合宿とトラブル 6】

715 凪と紅葉の部屋 「ん…? 何……もう起きたの?」 腕の中で身を捩る紅葉に気付いて凪も目が覚めてしまったようだが、まだ眠そうだ。 「トイレ…!」 「出て右…突き当たり…」 戻ってきた紅葉は再びベッドに戻った。 凪は少し冷えてしまった彼の身体を温めるように抱き抱えると、額にキスを落として再び眠りについた。 30分程して、みなが戻ると紅葉が起きていて、光輝も戻っていた。3人と一匹で朝食を食べる。 「どんな感じ? まだ朝早いからあんま情報なかったでしょ?」 みなが光輝に聞くと黙って頷いていた。 「雨は収まってきたけど、風が強いから…まだ橋も渡れないし、とりあえず今日はここに待機だね。みんな起きたら各棟に戻って出来る作業しようかと…。 あ、でも…。」 「何?」 「この先に避難所があるみたいだから、ちょっと覗いて来ようかなって。」 「そうなの? 道とか危なくない? そこ行くとご飯もらえるの? 僕別に…人参だけとかでもいーよ。 あ!お菓子がいっぱいあったんだった!」 「() いや… なんか避難してる人がいるみたいだから… 逆に何か出来ないかと思って… あ!LiT Jが移動出来るか道も聞いて来ないと…!」 「…畑違いの仕事増やしてどーすんの?」 妻であるみなに指摘されるが、いてもたってもいられないのかそわそわしている様子の光輝… 彼も大概お人好しで、困っている人を放っておけないのだ。 「ごめん…、でも話聞いたら気になって…!」 「…そっか。 よし!一緒に行こ?」 「……分かった。私も行く。 みんなが起きると余計な仕事が増えるから起きる前に行っちゃおう?」 「ありがとう…。」 「凪くん。 僕、ちょっと光輝くんとみなちゃんとお出掛けしてくるね。」 「は…っ?!」 紅葉の声に目を覚ました凪は思わずその手首を握って彼を止めた。 「…おはよ。」 「出掛けるって何? 雨は?ってか、お前…体調は?」 「大丈夫だよ。 んーっ、寝起きの凪くん可愛い…っ!」 たまらずに凪に抱き付く紅葉… 凪は紅葉の好きにさせながら髪を撫でると1度だけ口付けた。 「10分待って。 俺も行く。」 凪の台詞に紅葉は笑顔で頷いた。 3人は誠一とカナにメールで避難所の様子を見てくると連絡をし、車を走らせること15分程で避難所となっている小学校の体育館に着いた。 中にいたのは近所の住人だろう高齢者が数名と地域の担当者が2名、そして何故か幼児が5人とエプロンをつけた女性が2名… 「なんで小さい子が…?親御さんは?」 光輝が聞くと、近くの認可外保育園の園児と保育士の先生らしい。 こんな山奥に保育園があることにも驚いたが、一先ず状況を聞くと… 大雨の影響で先に保育園の近くの道で倒木が起きた。停電、道路も通行止めになり、連絡を受けた保護者たちはロッジ側の道路へ回ったそうだが、渋滞でなかなか進めず、川の増水で橋が渡れなくなり、お迎えに来れなくなってしまったそうだ。 「えっ?!停電?!」 「うちの集落だけな。 ここからロッジ側は電気は通ってるようだが…」 「ええ…。」 「古い県道がこの先にあるのですが、そちらは細い道だけど通れるようなので、親御さんたちが来るまでここで待つことにしたんです。」 「そうなんですね。 …保育園からここまでは歩いて?」 「はい…。車は私の軽自動車が1台しかなくて全員乗れないし…道も通れるか不安で…。 小雨になったのでなんとか…」 「30分ほどかけて…みんな頑張って歩いたんだよね。」 「みんな偉かったね…。」 紅葉がそう言って近くにいた男の子の手を握った。 「先生も大変だったね。ご飯は?食べた?」 「非常食とお菓子を少し… みんな怖がってあまり食べてくれなくて…! うち小さな園なので給食施設がなくて基本的に食材が置いてないんです…。」 「…皆さんは?」 光輝がお年寄りたちに聞くと家にあった物や備蓄のものを食べたり持ってきているようだが、自宅は電気がつかないので調理が難しいらしい。 「私らはいいからその子たちに何か食べさせてやって。ほら、こんなのしかないけど…!」 そう言っておばあちゃんがお煎餅を差し出してくれた。 保育士がお礼を言って受け取り、堅い煎餅を小さくして子どもたちに与える…。 「…ないない…っ!」 慣れない場所と不安からかいらないと、食べない子もいた。保育士にずっとくっついている子もいる。 「凪くん…っ!」 泣きそうな目で紅葉が凪を見上げた。 「…ハンバーグ好きか?」 凪の質問にコクンと頷く男の子を見ると決心したようだ。 「…ロッジに連れてくって手もあるけど、親御さんが来るかもしれないし、ここにいた方がいい…。 …1時間で戻る。みな、誠一に電話して指示を。カナに下準備してもらっておいて。」 「了解。」 動き始めた凪を見て、光輝も担当者に聞いた。 「すみません、その古い県道ってやつが載ってる地図下さい。 …俺はどの辺りまで親御さんたちが来れてるのか確認してくる。先生、順番に電話してもらっていいですか?」 「あ!僕が抱っこしてる…っ!」 「ありがとうございます。お願いします。」 「…紅葉。しっかりしろ…! お前がそんな顔してたらみんなも不安になるだろ…?」 「うん…っ! …凪くん…っ! いってらっしゃい…っ!気をつけてね!」 凪に指摘されてハッとした紅葉は顔を上げて笑顔で見送る。 「おー!…行ってくる。」 そんな紅葉の頭をクシャっと撫でて、凪も笑顔を見せた。 その様子を見ていた5才くらいの女の子は紅葉の服を引っ張って聞いた。 「…お兄ちゃんたち…ラブラブなの?」

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