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【新しい家族 (3)】

後日、トライアルで家に連れてきてみれば、初めての場所に驚きつつも元気に過ごしてくれた。 外で会った時にはとても大人しかったのに、家に来たら少々元気過ぎるくらいだった。 「ちょっ!…興奮しすぎだから…!(苦笑)」 2人で抑えて落ち着かせる。 平九郎との相性の他に気掛かりだったのは、音の問題。 一般家庭と一番の違いは2人がミュージシャンであることだ。 平九郎は何故だか最初から全く動じなかったが、防音部屋から多少は漏れてしまうドラムとベース、ヴァイオリンの音にその子は大丈夫かと心配していたが、吠えたりもせずにとりあえず大丈夫そうだった。 音を気にするよりも凪のドラムスティックが大好きなようで、ずっと見つめて目で追いかけていてすごく欲しそうにしていた。 消耗品だからとボロボロになったものを凪が与えてみれば、大興奮で咥えたままずっと走り回っていた。 「凪くんのこと大好きみたいだね!」 「いや、俺じゃなくてスティックが欲しいんだろ?(笑) 折れたやつが刺さると危ないからほどほどで取り上げないとな…。 ってか、練習中スゲー気になるからカーテンかブラインドつけた方がいいかもなぁ…(苦笑)」 食料品の買い物で短時間のお留守番をさせてみればペットモニターを見た紅葉が「ちょっとヤバイかも…」と言い出し、慌てて戻ってみれば、パントリーやリビングが荒らされていて驚く2人。 幸い食べてはいけないものは口にしていなかったが、小麦粉まみれの2匹のシャンプーと部屋の片付けに数時間かかった。 やはり対策は必要になりそうだ。 「ゲート付けるか…」 「梅ちゃん…。 うちに来たらちゃんとご飯とおやつあげるから大丈夫だからね! イイコにしてたらたまに凪くんがお肉くれるよ。」 餌を与えれば用意する段階から大騒ぎして、物凄い勢いで食べ、平九郎の分まで奪う始末… まるで別の犬のようで驚いたが、それだけこの子が受けた傷は深いのだろう…。 平九郎はご飯を横取りされても怒らずに彼女を見守っている…。 食べ終わり皿を舐めながらようやく落ち着いた彼女が怒られていると庇うように間にはいってくる。 平九郎は本当に不思議な犬だ。 「ダメっ! これは平ちゃんの分! 梅ちゃんは食べちゃダメなんだよっ! 平ちゃんごめんね…!優しいね。 …怒っていいんだよ? さぁ、食べて!」 紅葉が間に入ってなんとか平九郎に食べさせた。 「どーしよ…。 大丈夫かなぁ?」 「よし、平九郎、肉をやる。 ご馳走を使って根気良く躾よう。」 凪のアイディアと協力もあり、なんとかやっていけそうだと梅を新しい家族として迎え入れることに決めた。 「ありがとう、凪くん…! これから4人だね! 益々楽しくなるね。」 「おー! あいつ外では大人しかったけど、イタズラもしそうだし、だいぶ賑やかになるな。」 「あの…、さっきソファーも齧ってた…!」 「早速かよ…!(苦笑) まぁ、もう落ち着くまでしょうがないだろ。」 家具もそのまま譲り受けるので、もう細かなことは気にせず梅の成長が落ち着いたら買い替えよう、それまではボロソファーで我慢しようと凪は言ってくれた。 紅葉は器の大きな恋人に感謝して頬に口付けた。 「しばらくソファーではヤれないね?」 ソファーの回りを走り回る平九郎と梅を見て凪がそんなことを呟いた。 「っ! もう…っ!」 「…風呂入って、ベッドいく?」 「…ん、いーよ…っ?」 「で、本当に誕生日はキャンプで一泊して、そのままうち(凪の実家)に帰省でいいの?」 「うん! お父さんとお母さんに心配かけちゃったから、元気になったよって顔を見せに行きたい。 梅ちゃんも紹介したいし!!」 「了解…。 ありがと。めちゃくちゃ喜ぶと思うよ。」 「僕も嬉しいよっ! 平ちゃんも梅ちゃんも楽しみだねー!」 凪は少しいいロッジに泊まろうと決めて、 2人は仲良く手を繋いでバスルームへと向かった。 End

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