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平九郎の不思議な力(1)

※今回BL要素があまりなくてすみません。 2人の愛犬 平九郎のお話(梅ちゃんも出てきます) ※一部、児童虐待などの話も含まれますが、フィクションですのでご了承下さい。 前の飼い主の夜逃げ?…急に引っ越してしまい、置き去りにされた平九郎は近所の人の通報で保健所へ連れて行かれそうになったところを紅葉と出会い、その命を救われた犬だ。 もともと賢くて飼い主に忠実だと言われている犬種(ゴールデンレトリーバー)で、基本的に平九郎は怒らず、吠えず…とても物分かりの良い子だ。 優しくて穏やかな性格もあり、どんな犬や猫、他の動物とも、もちろん人間とも子どもから老人まで仲良く出来るタイプ。 紅葉の双子の兄、珊瑚と共に散歩をしている時には子猫を見つけて世話を手伝ったこともある。 その経験をしてから、不思議と消えてしまいそうな命を感じとる機会が増えていた。 捨て猫は3度、計10匹を見つけ…、全てボランティアへ託して新しい飼い主のもとへ引き取られて幸せにしている。 つい先日も少し遠出をした時に凪と紅葉が平九郎と梅を連れて湖の畔を散歩していると草むらにいた一匹の子猫を見つけたのだ。 「可愛いっ! …迷子? お母さん猫は?」 「いなさそうだな…。 あ、こら!梅! 驚かせたらダメだって。」 まだまだヤンチャな梅は凪がリードを引いて押さえて、平九郎はゆっくり子猫に近付いて様子を伺っている。 「捨てられたのかな…? ひとり? かわいそうに…。お腹が空いてるの? 凪くん…この子痩せてるよ…っ!」 放っておけないと紅葉は目を潤ませた。 「…もう暗くなるし、確か明け方雨の予報出てたから…とりあえず一回保護しよう。」 少し動き回らせて疲れてきたところを抱っこしてみれば、案外大人しくしてくれているようだ。 「可愛っ!すっごいかわ…いっ!」 手のひらサイズの子猫に興奮気味の紅葉… 平九郎も見せて見せてと顔を近付けてくる。 「…貸して。」 ひょいと子猫を抱えた凪は自身のパーカーの中へ入れてしまった。 上までファスナーを閉めてしまえば暖かく狭いところが好きな子猫は大人しくしているようだ。 「あ、ずるいー!」 「お前アレルギーでしょ? さーて、とりあえず帰って…。 どうすっかなぁー(苦笑)」 獣医に見せたあと、平九郎と梅も大丈夫そうだったので自宅で少しの間面倒を見ていたが、やはり紅葉にアレルギー症状が出てしまい…本人は今回見つけたのは一匹だし飼いたいと言っていたが、里子に出すことになった。 引き取ったのはLiT JのボーカルAoi…の恋人のユキくんで、以前珊瑚から子猫を譲ってもらう予定が出来なかったので、今回改めてという形になった。 白地に額の部分に少し茶色の混ざった子猫をミルクと名付けてとても可愛がっているようだ。 その後も公園にケージごと放置されていたハムスターや迷子のインコを見付けている平九郎。 インコに至っては、散歩中に電柱に貼られた迷子の張り紙を読んでいる紅葉が振り返ったら平九郎の頭にそのインコが乗っていてものすごく驚いたらしい。 ちなみに飼い主が来るまでインコはずっと平九郎の頭に乗り、時々耳をつついて遊んでいたという…。 迎えにきたインコの飼い主さんも相当驚いていた。 「平ちゃんには不思議な力があるんだねー! すごいねー。」 「そうだな。 梅も、最初会った時に比べてめちゃくちゃ明るくなったもんな。 いつの間にかご飯前にめっちゃ吠えたり、食べ物漁ることもしなくなったし…」 「うん! 梅ちゃんもえらいね。 でも平ちゃん…特別じゃなくてもいいんだよ。 ずっと元気で一緒にいてね。」 紅葉は不思議な力を使うことで平九郎自身の寿命が短くなったり、病気になったりしないか不安なようだ。 紅葉はお礼にとたくさん頂いた犬用のおやつを与えながら、たくさん平九郎を撫でた。

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