87 / 201

平九郎の不思議な力 (3)

その後、救急隊に男の子を託して、警察に事情を話す2人。 平九郎と梅は木陰で余った氷を食べながら寛いでいる。 警察官に偉かったね、スゴいね!と、誉められて、たくさん撫でてもらい、ご機嫌なようだ。 「あなたがガラス割ったの? 怪我は大丈夫? まさか素手で?」 「あー、別に大丈夫…。 今思えば石とか使えば良かったんだけど、慌ててたから…蹴りました。」 「すごいね、格闘技とかやってるの?」 「まぁ一応…。え、これ、必要なら弁償するけど、もしかして罪になります?(苦笑) あ、親見つかった? ここに来るなら俺に見せないで下さいね、絶対殴るんで。 …捕まりたくないしー(苦笑)」 と警察官と和やかに話している凪の隣で紅葉は固まっていた。 「凪くんっ!! …血がっ! 血が出てるっ! 大変…っ!」 青ざめた顔でそう叫ぶ紅葉の顔は今にも泣きそうだった。 「大丈夫…。 飛び散ったガラスで少し切っただけでもう止まってるから。 お前は?怪我してない?」 「…僕は平気。大丈夫…。」 紅葉の答えに笑顔を見せる凪。 「…良かった。」 しかし、紅葉には相当ショッキングな出来事だったらしく、まだいろいろと動揺しているようだ。 「凪くん、逮捕されちゃうの? ガラス割ったから?? でも…それは…っ!」 どうしよう…と、心配し過ぎてポロポロと涙を流す紅葉に慌てる凪。 紅葉を抱き止めて、落ち着かせるようにゆっくり背中を撫でた。 警察官の目の前で抱き合う形になっているが、仕方ない…。 凪はパニック状態の恋人を優先させた。 結局、平九郎や梅と共に水分を摂りながら事情を説明し、紅葉にも分かりやすく丁寧に話をした。 そうこうしているうちに病院に運ばれた男の子が意識を取り戻して、命に別状なないことを聞いた。 やっと紅葉も落ち着きを取り戻し、笑顔を見せた。 「罪に問うどころか感謝状をお送りしないと…!」 そう告げる警察官に丁重にお断りをして、2人はホテルへと戻ったのだった。 「助かって良かったね。」 「ほんとだな。 紅葉が助けたんだよ。」 「ううん。みんなで、だよ! …退院したら、おじいちゃんおばあちゃんと暮らすって聞いたよ。」 両親は逮捕されるだろう。 複雑な気持ちもあるが、あの子の命がもう2度と危険にさらされることがないことを願うばかりだ。 「そっか…!」 「寂しくないように…平ちゃんと梅ちゃんのぬいぐるみをプレゼントしようかなー?」 「…いいね。 じゃあ、早速買いに行こう…2人で。 平九郎と梅の御褒美も買わないと。」 「うんっ!」 2人は命の大切さを改めて実感しながら、しっかりと手を繋いだのだった。 End

ともだちにシェアしよう!