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【クリスマスパーティー (1)】

12月中旬… 今年のLinksのクリスマスパーティーは誠一の部屋で行われた。 理由は夜景を見ながらパーティーしたい!の一言からはじまり… "タワマンなら夜景が綺麗だから"、とか、"なんかセレブっぽいから"という理由なのだが… 肝心の夜景は曇りという天候のせいもあって、みんな大して見ていないし、セレブっぽさを演出(?)するためにUber Eatsで頼んだピザとオードブル(揚げ物多め)よりも、凪やみなの手料理が評判である。 「これ美味しい! え、何? これじゃがいも? あ、違う! …里芋だ!」 「そう。意外と合うだろ?」 凪作のグラタンは手作りのホワイトソースに里芋やズッキーニ、パプリカが入り色鮮やかで栄養価も高く味も絶品だ。 みなの美味しいにカナも頷いている。 彼女の作ってきたローストビーフも好評だ。 「ユキくんスープ食べるー? この前買ったドイツソーセージ入りだよっ!」 「ありがと…。 あ、運ぶの手伝うよ…!」 相変わらず誠一は自炊してないので、綺麗なキッチンで自宅で作ってきたスープを温めていた紅葉は、この日も同行しているユキに声をかけた。 スープを運びながら、紅葉は持参したバスケットの存在を思い出した。 「みなちゃん、ここにサンドイッチもあるよ。 玉子焼きサンドっ!TVで見て食べたいって言ってたでしょ?」 「ほんと? 並んでるって言うからまだ食べたことないんだよね。 わ、…すごーい! え、紅葉が作ったのー?」 「うん! あ、正確には凪くんが焼いた玉子焼きと手作りパンを僕がサンドしたんだよっ!」 「なるほど? 凪ー、ついにパンまで焼いてんの?(笑)」 「いや…紅葉がドイツのパン食べたいっつーから…(苦笑) 近くで売ってねーし、じゃあ作るかって…ホームベーカリー買った。 因みにそれ(玉子焼きサンド)には米粉が一番合う。」 カナは有名洋菓子舗でケーキを買ってきてくれて、光輝は大きなクリスマスツリーを運び入れて飾り付けをしていた。 家主の誠一は場所とお酒を提供してくれて、高そうなシャンパンと、みなとユキはシャンメリーで乾杯。 みんなで談笑しながら和やかなパーティーを楽しむ。 「そういえば紅葉、この前ユキくんとホストクラブ行ったって? どうだった?」 「なんか疲れたよー…。」 イトコ(みな)の質問に、その後のイロイロを思い出した紅葉は苦笑した。 「ユキくんは? 楽しかった?」 「…うん。 …でも今日の方が楽しいし、みんなカッコいいからあの店よりレベルも高いと思う。」 ユキの台詞にみんなで笑って、料理を楽しんだ。 途中からAoiも合流し、部屋の豪華さと料理のレベルに悪態をつきながらも箸を進めているようだ。ユキも嬉しそうに隣に座っている。 パーティー…というか、ただの食事会だが、みんなが盛り上がってくると… 「あ、そろそろみんなにプレゼントをあげようかな。」 光輝の発言にみんなが注目する。 「えっ、プレゼントっ?! もらえるのっ?」 「わーいっ! 何だろうー?」 ユキと紅葉がプレゼントの言葉につられて喜ぶ。 「紅葉…、気が早い。 光輝のこの笑顔見ろよ…! 録なもんじゃねーかもよ?(苦笑)」 「えっ?!」 凪の指摘にビビる紅葉。 わくわくした雰囲気からその場に少し緊張感が生まれた。 「なんてこと言うんだよー、凪はっ!」 「じゃあ何くれんだよ? ボーナス? 現金? お前のその顔、録なもんじゃねーだろ?」 「夢がないなぁ…(苦笑) はいっ! そんなひねくれっ子からどーぞ。」 そう言って光輝が凪に手渡したのは一枚の紙で… 他のメンバーとスタッフのカナにも配った。 「バーチャル映像コラボのLIVE…? 配信限定…!」 「タイアップ付きの新曲? え、まだレコーディングしてないよね?」 「うん。新しい取引先、スポンサーっていうか業務提携みたいな形で何かやりたいですねーって話してて。 あ、タイアップはCMで、紅葉の知り合いの社長さんが是非にって。」 「……? 誰?」 心当たりがないのか、紅葉は首を傾げている。 「小山内さんだよ。 のど飴のCM、紅葉出てね。」 「のど飴? 辛くないかな?」 「いや、そこじゃねー。 …そいつ誰だよ。 どこで引っ掻けた?」 「え?! 分からないよ…っ!」 「凪…! 引っ掻けたって…っ!(笑)」 この人、紅葉の知り合いだよね?と、光輝に見せられた企業のHPにはよく見知った男性が写っていた。 「あぁっ! ぴーちゃんともんちゃんのパパさん!」 「…とりあえず疑ってごめんな。 で、…誰?(苦笑)」 頭を抱える凪に以前(平九郎が)保護したインコの飼い主さんだと説明する紅葉。 柴犬も飼っていて、ご近所なので時々散歩で会うのだが、いつも平九郎と梅にはおやつを、紅葉にはフルーツ味ののど飴をくれる気前のいいおじさんだ。 確かに少し前に会った時に紅葉ってテレビに出てるの?とか、のど飴好き?と聞かれたが… 「社長さんだったの?」 「…知らなかったんだね(苦笑)」 光輝は苦笑していた。 「ユキ、お前もそういう奴釣って来いよー!それと、このくらい旨いメシ作れって! お前の料理、いつも味薄いじゃん!」 「ごめん……。」 「Aoiモラハラだよ。 ユキくんバイト頑張ってるじゃん?」 みなの指摘にカナも頷いてこっちにおいでとユキを移動させた。 「Aoiくんも働こうね。 あ、凪はこっちもよろしく。」 光輝は人のいい笑顔でAoiの肩を叩き、同じように紙を渡した。 2つのバンドを掛け持ちしている凪はまだあるのかと溜め息をついて文句を言った。 「イヤだ。 休みくれ。」 「年末年始、ちゃんと帰省出来るでしょ?」 「そーだけど、違う。 実家でも働くんだよ(苦笑) えー、LiT Jは何? …翔くんのバンドとコラボ?」 「ついに俺たち世界デビューかっ!」 Aoiも嬉しそうだ。 「深夜のネットラジオ。 時差的にコラボ出来るなって思って。 通訳もよろしくね。」 「…どんだけ俺を働かせるの?(苦笑)」 新しい仕事にみんなで盛り上りながら話す。

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