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【進路希望と看病】(1)

「あー!ヤバイー! 忘れてたっ!」 「何?」 学校へ向かう直前、紅葉は何かを思い出したのか、ガサゴソと鞄を漁っていた。 慌ただしい平日の早朝… 凪にとっては深夜だ。 2人がプライベートを一緒過ごせる貴重な時間。 「アンケート今日までだった。 書いて持っていかなきゃ!」 「…進路希望調査? へぇー…」 懐かしいと凪は自身の少し昔を思い出しながら紅葉に聞いた。 「何て書くの?」 「…就職? え、Links(バンド活動)って就職で合ってるかな?(笑)」 「なんか違う?(苦笑) ってか、進学はいーの? 今更だけど…」 「え? うん。 音大行かせてもらっただけで十分! 僕勉強苦手だし…(苦笑)」 これからは弟と妹たちの番だから!と話す紅葉は嬉しそうな顔をしていた。 「んー、未定にしとこうかな?」 「…"結婚"はないの?」 「え?! ないよ?」 「はっ?」 「えっ?」 凪の指摘に驚いた紅葉の答えに凪も驚いて声を上げた。 「…卒業したら結婚してくれるんじゃなかったっけ?"専業主夫"でもいーよ?」 悪戯に笑ってそう告げる凪はダイニングの椅子に座る紅葉を背後から抱き締めた。 「あ…! う、ん…っ! そうだけど…、ここ(アンケート)にはなくて…!え?専業主夫? …でも凪くんの方が家事上手だよね?」 「俺? いや、冗談だよ(笑) あ、時間平気? 送って行こうか?」 凪の稼ぎがあれば紅葉が働かなくても大丈夫なのだが、それは何か違うねと2人で顔を見合わせた。 「大丈夫っ! 凪くんもう寝ないと! 今日もLiT JのLIVEでしょー? これ…何かお勉強してるの?」 凪のPCと隣の参考書らしき分厚い本を指差して聞くが… 「秘密…。」 「えー? もう! 何してもカッコいいんだからっ!」 「何それ?(笑)」 紅葉はとりあえず"未定"に丸をつけてプリントをしまった。 リュックを背負うと背伸びをして凪にいってきます兼おやすみのキスをして玄関へ向かった。 夕方… LiT JのLIVEが行われるLIVE House 「はい…」 「凪くん! お疲れ様! リハーサル終わった?」 「ちょうど終わったとこ。 どーした?」 仕事中…しかもLIVE前に紅葉が電話してくることは珍しいので、何かあったのかと訊ねる凪。 外は真冬なのにステージ上はライトの熱と激しいドラムの演奏で汗だくである。 紅葉が用意してくれた、クマ…?だろうか…よく分からないキャラクタータオルを睨みながらとりあえず汗を拭いた。 「おじいちゃんからユキくんが風邪でもう4日もバイト休んでるって聞いて…連絡したら辛そうだから、今からお見舞いに行ってきてもいい? 心配で…」 「見舞い? え、インフルなんじゃねー? うつるよ? お前まだテスト期間中だろ? ってか、行くのAoiの家ー? うーん…。」 紅葉の身体も心配だし、暇なゴシップ記者にでも見られたら面倒だと渋る凪。 紅葉は食い下がらない。 「ダメ…? じゃあジュースとか渡すだけにするから…。 お願い…っ!」 無敵かと思われる凪も恋人のこの"お願い"の一言には弱い。 「……わかった。 行くのはいいけど、一応光輝に一報入れるからちょい待ってて。」 「うん、分かった。 ありがとっ!」 「あ! なぁ…このタオル何?(笑)」 「使ってくれた? 凪くんに似てると思って!可愛いでしょ?」 「…マジで? お前には俺がこう見えてるの?(苦笑)」

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