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【類は友を呼ぶ】(2)
「どうせ隣の分も作るつもりだったから材料もあるし、大丈夫。口に合うか分からないけど、良かったら食べてって。
一人暮らしって…普段ちゃんと食ってる?」
「いーのかな…。
実は彼氏さんがめちゃくちゃ料理上手って聞いてて、紅葉くんの弁当もすごい美味しそうで仲間内で話題になってて、一度食べて見たかったんですよね…!(笑)
あ、えっと…いつもは…昼は学食と夜は居酒屋でバイトしてるから賄いとか…。」
「朝は食べないの?」
「朝は毎日じゃないけど、新聞配達してて…時間ないから。」
朝ごはんなしは考えられない紅葉は驚く。
苦学生なのだと悟った凪はお菓子を勧めつつ、夕飯もたくさん食べていきなと言った。
その後、防音の練習部屋に感激する友人とヴァイオリンを弾く紅葉。
凪はその間に夕食を作り始めた。
それから…愛犬の散歩を紅葉と高橋くんで済ませて戻る頃にスペアキーは届いていた。
ホッとしたのか、紅葉が凪の手伝いをしている間に高橋くんはソファーでうたた寝を始めていた。
「疲れてるんだろうな…。」
「そうだね。
奨学金もらってるって言ってたけど、家賃とか生活費は自分で働いてるんだって!」
聞けば彼は紅葉の次のポディション、第二ヴァイオリン担当らしい。
「そっか…。スゲー頑張ってんね。
…よし、出来た。
先に隣に持って行こう。」
材料を多めに買っておいて正解である。
凪はこっちは高橋くんにお土産の分ねと言って、タッパーにもおかずを用意してくれていた。
優しい恋人に感謝のキスを贈る紅葉。
「ありがとう…!」
「いーえ。
どういたしまして。」
凪がもう一度口付けようとした時、紅葉のお腹がけっこうな音量でぐぅーと鳴った。
「さすが…っ!(笑)」
凪は爆笑である。
「ごめん…っ(苦笑)
お腹すいちゃった…!
すごいいい匂いなんだもん!」
「食べよ。
おーい!飯出来たぞー?」
凪の呼び掛けに愛犬たちの方が先に反応を見せた。騒ぎだす彼らに驚き、高橋くんも目を覚ます。
「わわっ!
…うわーっ!」
ドテーン!と、豪快にベッドから落ちる彼を見た凪はやっぱり紅葉の友達だなと改めて思ったのだった。
因みに鍵はその後、彼の家の中から見つかった。
つまり鍵を掛けずに出掛けたようだ。
「今朝、配達に遅れそうで…バタバタしてたから忘れたみたい!
あんなに探してもらったのにホントにごめん!心配してもらって、ご飯までご馳走になったのに…
泥橅? 全然大丈夫だった!
日本って平和だよねー。
まぁ、ヴァイオリンさえあればいいし。」
そう応える彼に紅葉よりヤバいかもしれないな…とうっすら思った凪だった。
End
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