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【紅葉くんのお仕事とデート】(2)

因みにこの2つの仕事のギャラで機材買おうと提案すると凪は驚き、少し困惑していた。 「嬉しいけど、複雑…! 俺のためにそんな身体張んないで?」 「でも…!」 「…分かった。 機材は買おう。どっちみち必要経費だし。 でも次からは要相談ね。 その代わり俺も紅葉の欲しいやつ買うから。 今何欲しい? なるべく高いやつね。」 「うーん…? あ! ハーゲンダッツのアイスっ!」 「…安っ!(笑)」 思った以上にお手頃なリクエストに笑う凪。 紅葉のこういう飾らないところが好きだ。 「でもー! 今すぐアイスが食べたいの…。」 「この寒いのに…?(笑) えー…じゃあ買いに行くか。」 「うんっ!」 「あとは?」 「んー…じゃあデートしたいな。」 「お。いーね。 最近出掛けてないし。 デートね。 どこ行くかなぁ…」 「楽しみーっ! あ…、あの、凪くん? 手…! 外だよ? …いーの? 僕、イベントでいろいろ言っちゃったし、凪くんまで何か言われるかも…!」 焦る紅葉は自分の発言のせいで、凪や家族、バンドに迷惑がかからないか心配しているようだ。 凪も、家族も、バンドのメンバーたちも笑って「大丈夫だよ」と言ってくれてすごく嬉しかったのだ。 「いいよ。 恋人同士なんだからフツーじゃん? …俺が手繋いで歩きたいんだからさ。」 「僕も…! 凪くん、手袋してなくても手温かいね。」 「寒い?ポケットの中入れておこうか。 あん時の紅葉、カッコ良かった。 LGBTに悩む子や親世代からもありがとうって声が多いんだって? 他からの反響も良いみたいだし。」 「大したことしてないんだけど、そう言ってもらえるのは嬉しいなー。 チョコレートのイベントでもらったチョコレート柄のエプロンも幼稚園で大人気なんだよー!クマさんももらえたし!ふふ…! あ、そういえば、あの時のチョコ食べてくれた?」 「…まだ。 あれ絶対甘いじゃん?(苦笑)」 「えー!」 「…帰ったら食べるよ。」 「ふふ。 デートも楽しみだなぁー!」 「どこ行きたい?」 「どこにしよっか~?」 後日… 2人がデートの行き先に選んだのは体験型のアート施設で、近代的で不思議な空間を楽しみながら移動していく。 「はぁー… 芸術的なことはよく分からないけど、全部キレイだね。えっと、語彙力がなくてごめんね?」 「アーティストとは思えない発言だけど…確かにそんな感じ。 これは計算されたアートだな。 音の響き方とか勉強になるけど… ごめん、紅葉は山とか自然の方が良かった?」 「ううん。 これはまた幻想的だし、キレイで好きだよ。 何か音楽にも繋がるかもしれないね! ちょっとボーっとしてていい?」 「いいよ。」 紅葉と凪は近くにあったベンチに座り、インスタ映え間違いない、色が変わる水のカーテンを眺めた。心地好いフィーリングミュージックが聴こえる。 しばらく寄り添っていると、コテン…と、凪の左腕に重みが増した。 「…まさか…寝てんの?(苦笑)」 さすがにデート中に居眠りされるのは初めてである(苦笑) 今日はデートの前に2人でみっちり自主練習をしてきたので、疲れたのかもしれない。 凪はまぁいいか、と10分程眠らせてから恋人を起こした。 平日で人が少ないとはいえそろそろ周りの視線が痛い…。 ハッとした紅葉は大きな目をパチパチさせた。 「ごめんーっ!」 「いーよ(笑) 疲れた? 帰る? 」 「大丈夫。 癒され過ぎただけ…! ごめんね、デート中なのに…! 怒った?」 「全然。俺も寝顔見て癒されてたとこ。」 ふわりと向けられた笑顔が優しくて紅葉は赤面した。 「恥ずかし…っ!」 「もうすぐ終わりだって。 メシ行こうか。」 「うん。」 凪に連れられたのは鉄板焼のお店で、紅葉は目の前で調理されていく高級肉に釘付けだった。 2人で日本酒も飲んだので、酔い冷ましで歩きながらタクシーを拾えるところまで移動することに。 「ご馳走さまでした! すごい美味しかったね!お肉っ! お野菜もー!」 「そうだな。 良く食べてたな(笑)」 「お腹すいてたから…!」 ふふ、と笑う紅葉の手を握りながら凪は聞いた。 「このあとどーする? 平九郎たちの世話はユキに頼んだし、 …ホテル、行く?」 「っ?! やだ…っ」 繋いだ手を離されて、プイッと横を向かれてしまった。お腹が膨れたので試しに聞いてみたのだが、どうやらご機嫌ナナメのようだ。 「…まだ怒ってるの?(苦笑)」 「だって…っ! 僕がトイレに行ってる間に凪くんまたナンパされてた! …ニコニコしちゃってさー!」 「誰かさんがあんなとこで居眠りするから目立ってたみたいだよ?後ろ姿撮られてSNSあがってるって。」 「えっ?! ほんと?」 「…ほら、これ…!」 見せられたスマホの画面にはグラデーションが美しい水のカーテンを仲良く見ている(紅葉は寝てる)2人が映っていた。 「すごくお似合いですねって言ってくれたからお礼言ってただけ。」 「……そっか…!」 「お、タクシー来た。 帰ろ? 身体冷えるよ。」 「うん。 あの…、ホテル、はいーの?」 「え? あ、うん。別にそれ目的のデートじゃないし、さっきのは半分冗談だから(笑)」 再び凪の手を取った紅葉はギュッと彼の大きな手を握った。 アルコール度数の高い日本酒を飲んだせいか、車に揺られると睡魔が襲い、帰宅後もうとうとしていた紅葉。 凪は体調に気を配りながらお風呂に入れて、髪を乾かすとベッドへと運んだ。 半分寝ながら今日のお礼を伝える紅葉。 「デート楽しかった…」 「そっか。 俺も楽しかったよ。」 「お肉……」 「はいはい、また食べような?(笑)」 「…うん。 ……ん、好き。」 その一言を言うと紅葉は完全に寝入ってしまった。 「……どっちだろ?肉?(苦笑)」 凪は恋人の髪を優しく撫で、キスを落とすとおやすみを告げて眠りについた。 End

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