105 / 201
【連休の過ごし方】(1) ※微R18
久しぶりに凪と紅葉、2人の休みが重なった。
しかも珍しく連休だ。
まぁ、そう言っても2日間だけだが…。
2人が所属するLinksはボーカルみなが妊娠中のためツアーなど精力的な活動はしていないのだが、コツコツ地下活動をしている。
紅葉は学業やコンクール、実習もあるし、凪はLiT Jも掛け持ちしているので新曲発表にツアーの準備で多忙である。
いつも休日は不定休だし、どちらかは休みでももう一人は仕事だったり学校だったりすることが多い。
すれ違いの中でもなんとか2人の時間をつくっているのだ。今更だが、同棲していて良かったねと苦笑する日々。
今回のスケジュールを聞いて、紅葉も凪も2日も一緒に休めるなんてと喜んだ。
「あと1日あったらお義母さんたちのとこに遊びに行けたのにねー!」
残念と、話すのは紅葉の方で凪は笑った。
いつの間にか実子の凪より、恋人である紅葉の方が自分の家族に馴染んでいて不思議な感覚である。
LiT Jのツアーで京都へ行った時も、凪はスケジュールの都合で帰省出来なかったのだが、紅葉はLIVEを覗いたあと、実家へ泊まりに行っていたりする。
「一人で寝るの怖いからお義父さんとお義母さんの間にお布団ひいてもらって寝たよ。」
と、聞いた時は既に遠慮も何もないなと苦笑しつつ、あれ?俺のLIVE見に来てたはずじゃなかった…?と困惑したことも…。
「何?
俺と2人じゃ不満なのー?」
冗談でそう訊ねればあたふたする紅葉。
「えっ?!
そんなわけ…!! もちろん嬉しいよ?
えっと……、何も決めてなかったけど、何する?」
「何って…ナニじゃない?
連休って最高だよな?」
えっ?という顔で固まる紅葉をそのままソファーに押し倒して口付ける。
「ん、んーっ!」
まだお昼前だけど、こんな連休のスタートもありかなーと、凪が考えていると、ゲシゲシ…と右肩に割りと強い衝撃があり、続いて耳や頬をベロベロ舐められた。
もちろん紅葉にではなく、愛犬の平九郎と梅に。
片手で『待て』を伝えてみるが、夜なら寝てくれてる彼らも昼間の今は無理そうだ。
完全に遊ぶつもりらしくなんだか嬉しそうに尻尾を振っている。
いくらなんでもさすがに気が散る……。
凪は諦めて唇を離すと名残惜しい気持ちを抑え込みながらダラダラと上半身を起こした。
ちょっと色っぽい顔付きになった紅葉の手を引いて起こしてやる。
すかさず平九郎たちは紅葉の顔を舐め始めた。
「ん……。
わ…! 平ちゃんと梅ちゃんも一緒に遊びたいの?」
「いや、今のは遊びじゃねーし(苦笑)
ったく、しょーがない…。
ドッグランでも行く? 寒いけどな…」
「やった!
みんなでお出かけだってー!」
少し郊外へ出れば大型犬の遊べるドッグランがある。凪はそこで愛犬たちをたっぷり遊ばせて疲れさせてから、夜にリベンジを誓った。
そのためにドッグランでは紅葉はあまり疲れさせないように気をつけなければいけない。
ボール投げならいいかな…と、
凪は新品のボールを用意し、出掛ける準備にかかった。
「楽しかったねーっ!」
「寒くなかった?」
「走ったから大丈夫ー!
ホカホカー!」
「…疲れたでしょ?
昼寝でもしたら?」
「…眠くないよ?
ちょっと休憩したら一緒に自主練習しよ?
お休みでも練習は大事だよね。」
何故か紅葉は平九郎たちと一緒にボールを追いかけて走っていて…、凪の作戦は失敗だったようだ(笑)
その後は結局いつも通り、防音部屋で練習をして、買い出しに出掛け、夕食は隣の池波氏を誘って3人で鍋を囲んだ。
池波氏から貰った辛口の日本酒が美味しくて、ついつい杯が進む。
紅葉は緑茶が良いそうだ。
一番若いのに一番渋い…(苦笑)
そのうちうつらうつらする池波氏を自宅へ送り、後片付けへ。
贅沢も何もない平々凡々な1日だが、食後の蜜柑を摘まむ紅葉は幸せそうだ。
それから紅葉はドイツの家族とビデオ通話を楽しみ、祖父母の体調を気遣う。
仕事が一段落した時間を見計らって凪の家族にも電話をしていた。
「最近蜜柑いっぱい食べてるよ。
この前お義母さんが送ってくれた蜜柑はけっこう酸っぱかったね!」
「え?
あれレモンよ?」
「ウソー?!
レモンにしてはオレンジ色だったよ?
蜜柑だと思って食べちゃった…。
あはは! どうりで酸っぱいと思った!」
「私、檸檬よって書いたけど…あ!漢字で書いたのが良くなかったわね。ごめんね。
よく食べられたわね…(苦笑)」
凪は2人の会話を聞き、驚きながら癒されていた。
ともだちにシェアしよう!