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「ホタル」

「わぁー… キレイ…っ! すごい! こんな感じなんだねっ!」 紅葉は凪に連れられて蛍を見に来ていた。 なんと、凪が知人から大きなキャンピングカーを借りてくれて、平九郎と梅も一緒だ。 小川の周りを淡く照らしながら飛び回る蛍はよく見るとけっこうな数がいた。 普段目にする街中のネオンなど、人工的な光とは違う美しさと儚さのある光に見入る2人… 愛犬たちも気になるようで、一生懸命目で追っている。 「俺もこどもの時以来…。 20年振りとか…?(笑) こんなにたくさん見たのは初めてだな。」 「そうなんだね。 数が減ってるって聞くから心配だったけど… 凪くんと一緒に素敵な光景が見られて良かった。また来年も見たいな。 あ、意外と小さな虫なんだね。」 「じゃあ来年も見に来よう。 こんなもんだったかな? こどもの頃はもう少し大きく感じてたけどなぁー…」 さりげなく未来の約束が出来ることが嬉しかった。 「この大きさでこれだけ光れるのはスゴいね!」 田舎育ちの紅葉は虫も全然大丈夫だ。 スマホで撮影したり、じっくり観察していた。 「平ちゃん、梅ちゃんおやすみー! ふふ、キャンピングカーってすごいね。 秘密基地みたい!」 運転席上部にあるバンクベッドと言われる空間で寝そべる2人。 紅葉は小窓から外を覗き、鈴虫の音色に耳を傾けながらわくわくした様子だ。 因みに愛犬たちは下のスペースに犬用ベッドを敷いて寝床を作った。 「意外と寛げるよな。 え、買おうかな…」 「わぁ! …本当に?(笑)」 「でもなぁ…」 「うん、高いよねー?」 「いや、拘ればまぁ高いけど…買おうと思えば買えるよ。 それよりキス以上出来ないからそれはどうかなって思って…(苦笑)」 「そこー?(笑)」 「はは…っ! 落ち着かないから嫌だよなー。 紅葉…おいで。 キスして、くっついて寝るくらいいいでしょ?」 「うんっ!」 凪の腕の中に飛び込み、紅葉はキスをねだった。 穏やかな口付けと、優しく髪を撫でられて微笑む紅葉。 小さな幸せの重なりが愛おしかった。 「…来月は紫陽花でも見に行こっか…。 梅雨だけど…」 「ほんとー? 紫陽花って色んな色があるんだよね? ふふ、楽しみー! 凪くん、雨でも行こうよっ! カタツムリがいるかも!」 「…まさか飼わないよね?(苦笑) 見頃いつだろうな…。休みと合うといいけど…! おやすみ、紅葉。」 「そうだね。おやすみなさい。」 End

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