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【ネクタイ】(1)
「いいお式だったね!
マツくんも若菜さんもとっても素敵だったぁ~。やっぱり和装カッコいいなぁ。
日本の伝統的なお式って初めてだったから…すごく良かったー!」
「そうだな。」
嬉しそうに話す紅葉に同意する凪。
もし紅葉と結婚式やその代わりとなる祝いをすることになったら和装の衣装にしようと心に決め、首もとのネクタイを緩めるとフッと笑った。
「…っ! あ、お料理も美味しかったねー。」
実は凪がネクタイを緩めるという仕草が大好きな紅葉。
普段あまりスーツを着ないので、見られたことに内心ガッツポーズをした。
バンドマンが多いからとセミフォーマルのドレスコードだったので礼服ではなく、ブランドスーツとネクタイでコーディネートした。
滅多に着ない互いのスーツ姿に新鮮さを感じ、ドキドキしていた。
「あぁ。
紅葉のヴァイオリンもすごい良かったってみんな喜んでたな。」
「ふふ…っ!」
6月吉日
LiT Jのベース兼リーダーであるマツの結婚式と披露宴が行われ、凪と紅葉は揃って参列し、紅葉は約束通りヴァイオリンの演奏も披露した。
帰りのタクシーの中で話をしながら、そっと手を繋ぐ。
「あ、電話…!
お義母さんだっ!
もしもーし!
うん。今帰りだよー。
すごい良かったよっ!
ご飯も美味しくて…!
あ、もう届いたんだー!
…いえいえ。なんか心配かけちゃって…
良かったら使って下さい。」
楽しそうに話す相手は凪の母親のようだ。
「えっと次…?
聞いてみるね。
…凪くん、次いつ頃行けるかなー?」
早くも次の帰省予定を聞かれ、凪は電話を代わった。
「夏に帰るよ。
あー、盆にはズレるだろうけど…、祭りに間に合えばっておもってる。
そう、ドイツの家族も何人か…
多分みんなは無理そうだけどね。
部屋? …離れでいいんじゃない?
うん、よろしくー。」
凪は通話を終えると紅葉にスマホを帰した。
「夏祭り…みんなで行けるの?」
「せっかくだからね。
日本らしいとこがいいかなって。
紅葉も行きたいって言ってたでしょ?」
「うんっ!わー、楽しみ!」
「あと何か梅シロップ送ってくるって。
…そーいえば、母さんに何か贈ったの?」
「ん? あ、日傘!
仕事でたまたま傘の専門店が近くにあって…お義母さんに似合いそうなのがあったんだよー!
ほら、この前遊びに行った時に僕、喘息出ちゃってすごく心配かけちゃったから…!
結局お手伝いも全然出来なかったし…。」
早苗は紅葉をいろいろ連れ回してしまったからだと気にしていて、仕事を抜けて看病してくれていた。そのお礼も兼ねて和服でも似合いそうな日傘を贈った。
「そっか…!
でも気遣わなくていーのに…(苦笑)
母さん心配性なんだよ。」
「…凪くんのお父さんのことがあったからだよね?」
病気で急逝した実父のことを思い出すようで、去年紅葉が入院した時も早苗の取り乱し様は普段の彼女からは想像出来なかった。
そして今回も帰省中に喘息の発作が出てしまい、幸い持ってきた薬ですぐに治まったのだが、すごく心配をかけてしまったのだ。
「まぁね…。
普段からメシとか健康にうるさいけど…仕方ねーよな。
それだけ母さんにとってもお前のことが大事ってことだよ。
ってか、去年もだったけど、この時期は喘息気をつけないとな…。」
「うん。梅雨バテもあるのかな?
気を付けるね。」
「ちゃんと食べてちゃんと休まないと…」
「それなら今日はバッチリだね!
ちょっと食べ過ぎたぁー…(笑)」
紅葉の台詞に凪は顔を見合わせて笑った。
「帰ったら一緒に運動しよーな?」
「んんっ?」
どんな…とは聞けずに顔を赤らめる紅葉。
美味しいお酒を楽しく飲んだ凪はご機嫌だ。
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