116 / 201

【怪我の功名】(1)

Linksは活動休止中だが、撮り溜めていた動画を編集してファンクラブ向けに不定期で配信をしたり、光輝、凪、紅葉の3人はネット番組を担当している。 今日は番組の収録日。 「もしバンド以外の仕事をするとしたらどんな仕事がしたい、似合いそうか…だって。」 「自分視点と他の人視点で職業あげたらいい?」 「そんな感じかなー。 あ、僕は普通に会社員かな。」 真面目な光輝はサラリーマンも普通にこなせそうだ。 「いや、光輝は公務員じゃね? 役所とかお堅い系。」 「博物館の人! なんか…光輝くんいそう!(笑)」 「えー、定時で終われるのかな?(笑)」 凪が公務員、紅葉は何故か博物館職員をあげ、光輝は結局定時のない今の仕事が一番好きだと言った。 「凪くんはやっぱり料理人?」 「それか、最近だとジムのトレーナーとかもありかな。」 「すっごいお客さん付くだろうけど、めちゃくちゃキツそうなメニュー組みそうだね(笑) あ、ホストも向いてそう。 髪色もぽいし… 凪はジムトレーナーよりダークなイメージだから(笑)」 光輝の指摘に笑う凪。 黒髪の襟足部分だけ金髪に染めた凪は確かにホストっぽい。 「トレーナーやるには爽やかさが足りないって?(笑) ホストは誠一じゃね? 俺あんなに飲めないよ?」 「でも…似合うと思う。 …紅葉は凪がもしホストだったらどーする?」 「…み、貢いじゃう…かも。」 ホストの凪を想像したのか目をキラキラさせた紅葉は割りと本気でそう答え笑いを誘った。 「…100万とかするシャンパン何本も入れてくれんの?(笑)」 「え、っと…貯金使っちゃおうかな…っ!」 遊びで凪がそう聞けば、普段250円のアイスを買うのにも悩む紅葉の財布の紐がゆるゆるだ。 凪も光輝も爆笑だった。 「そんな紅葉は? どんな仕事をしてみたい?」 「お仕事なら幼稚園か保育園の先生! だけど、1回メイド喫茶でバイトしてみたいな。」 「あ? そんなんダメに決まってんだろ…っ!」 「凪、収録中だよ?(苦笑)」 さっきの笑顔はどこへやら…「適当に編集しといてよ」と思わず素が出る凪を宥める光輝。 「1回だけだよ? ダメなの? あ!じゃあさ! 今度みんなでやろうよ!」 「どこで? あ、…ここで? リーマン(公務員)とホストとメイド? ヤベー組み合わせだな…(苦笑)」 「あれだよね? 展開としては僕が仕事サボってメイド喫茶に行っちゃうオタク気質なお客さんで、メイド姿の紅葉の接客受けて癒されてるところに常連客のホストの凪が入ってきて睨まれるっていうコントだよね?」 「…光輝はプロデュース業が身に染みて来てんね(苦笑)」 その後、紅葉宛てにファンから質の良いメイド服が届いたらしい。 「可愛いっ!! 着てみてもいい?」 「…どーぞ?」 自宅へ持って帰り、試着する紅葉。 ご丁寧にウィッグ(学祭で使った)も持ち出して、軽くメイクもしてメイドになりきっている。 「どーぉ? かわい? 凪くんもスーツ着てくれる? 一緒に写真撮ろうよっ!!」 「え、ホントにやるの? コスプレごっこ…(苦笑) …いーけど…、後でどーなっても知らねーよ?」 紅葉に急かされて、手持ちのスーツとアクセサリーを纏い、髪もセットし、ホストっぽく仕上げた。 今日もLiT JのLIVEがあり、テンションが高いのもあって意外とノリノリだ。 「か、カッコいい…っ!!」 スマホを向けて凪を連写する紅葉。 「…どーも。 可愛いメイドさん、ビールお願いね。」 「……あ!はぁい!」 紅葉はエプロン付きのフリルスカートを翻してキッチンへと向かった。 凪はソファーに座ってスマホをいじりながら待つ。 「お待たせしました! ラブラブビールですっ! お摘みもお持ちしましょうかー?」 「……なしで。」 「かしこまりましたっ! では、今から愛をたっぷり入れますねー! ラブラブラブ!美味しくなぁれ!」 「………けっこう勉強してんだね。」 「??」 ノリについていけてない凪は戸惑いつつ、グラスに口をつけた。 とりあえず気を取り直してごっこ遊びに付き合う凪。 「新人さん? 名前は?」 「紅葉ですっ! 今日から入りました!」 「へぇー、可愛いね。 いくつ?」 「ふふ…! ありがとうございます! 21歳です! お兄さんはホストさんですか?」 「そう…。良かったらお店に遊びに来てよ。 お酒好き? 一緒に飲もうよ。」 「えー、でもお兄さん指名したら高そう…!」 「サービスするよ? なんならアフターも行っちゃう?」 「アフター…?? なぁに? どこに行くの?」 知らなかったらしく、紅葉は訊ねた。 「…メイドさんはアフターないの?」 「ない…かな?」 「そっか。 まぁ、フツーにご飯とか? あとはゆっくり2人きりになれるとこ…とか?」 数秒間考えて意味が分かったらしい紅葉は驚き、大きな目を見開いた。 「NO!! 凪くん! 今すぐホストは辞めて下さいっ!」 大きな声に驚き、寝ていた平九郎と梅が思わず顔を上げた。 「(笑) 何? 急に素に戻んないでよ(笑) あいつらもビックリしてんぞ?」 ダメダメと凪に抱き付いて必死な紅葉。 凪は焼きもちをやく可愛い恋人を宥めながら紅葉のウィッグを外した。ついスカートから伸びた脚に目がいってしまうのは男の性だ。 「紅葉ちゃんがメイド辞めるなら俺もホスト辞めようかなー?」 「店長ー! 辞めまーすっ!」 即答した紅葉。 「コスプレごっこ終わりね。 じゃあシャワー行こっか。 化粧も落とさないと…。」 「うん。」

ともだちにシェアしよう!