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【双子のお出かけ】(2)

「まだ元カレのこと好きなの?」 珊瑚の質問には答えないユキ… 暗い雰囲気にならないよう、珊瑚は明るく話を続けた。 「えー、もったいねーよ。 ユキ今年27でしょ? 需要があるの今のうちだからな。 とりあえずナンパ待ちしたり、アプリでセフレでも作って経験値積んどけば?」 「な、な、な…なんてことを言うのっ!!」 思わずバシっと珊瑚の頭を叩く紅葉。 「痛ってーなっ!」 「僕の友達に変なこと教えないでっ!」 「俺の友達でもあるし。 ただのアドバイスじゃん。 どうするかはユキの自由だって。 な?」 「はは…(苦笑) うん、でも…その…、葵と付き合ってた時にも経験値?重ねた方がいいって言われて…試したことあるよ。」 「「はっ?」」 声と表情が揃った珊瑚と紅葉を前に驚くユキ。 「わー、今の双子っぽい!」 「いやいや…! あ、待て。 俺も似た経験あるな…。 あれ? 見せられたんだったっけ?」 「珊瑚ちょっと黙って! どういうこと? 葵くんに言われたの?」 「…僕下手で…。その…あんまり興奮しちゃいけないってなるべくセーブしてたから…。 あとちょっと興味もあったんだ…。 あ、でも結局怖くなって出来なかったから意味なかったんだけどね…。」 「お前…紅葉と同じタイプかと思ったけど、なんつーか変にハードル低くてその好奇心が危なっかしいな…(苦笑)」 「そうかな? でもそれがきっかけで“好き”ってちゃんと伝えられたんだよ。だから後悔してない…。 それでね、その時から葵も優しくなって…!」 思い出したのかユキは嬉しそうに話していたが、結局は自分から別れを告げたのだと思い返したのか話の途中でしゅんとなってしまった。 「元カレとはナンパがきっかけだったんだっけ? 最初はワンナイトのつもりだったのか?」 珊瑚が聞いた。 「うん。 まぁ…葵と出逢った時って家出してたから。 自分の好きなことしてみたかったんだー。 …ゲイだって自覚はあったけど、病院にいるばかりでSEXしたことなかったから1回してみたくて。 お酒飲んで、誰かとSEXして、あとは死んでもいいって思ってたから怖いものなかったんだよね。」 「死んじゃダメだよ…っ!」 紅葉はユキの手を握って訴えた。 「うん。分かってる…。 せっかく紅葉くんに助けてもらった命だし、 今は…退屈な日常に戻ることになっても死にたくないって思ってるよ。」 「じゃあ手術受けろよ。」 珊瑚もキツめに告げた。 手術を拒否している話は紅葉から聞いていたのだ。 「…受けても…もう望むものないし、意味ないかなって…。だから受けないって決めてる。 …ごめんね、ちょっと疲れたみたい。 そろそろ部屋に戻るね。」 慌ててユキを支える紅葉。 ユキをベッドに寝かせると折鶴を1つ渡して病室を後にした。 「さっきの何?」 「鶴だよ? 折り紙。 本当はもっと小さい折鶴で千羽鶴作ろうと思ったんだけど、難しくて…(苦笑) いつもお見舞い来たら1つずつ渡してるんだ。」 「へぇー…下手すぎ。」 「でもユキくん欲しいって…」 「…変なやつ。 なぁ…、あんなの…今のユキは死なないように生きてるだけじゃん。 ってか、元カレに未練タラタラだな。 他の男とヤらせようとするようなサイテーな男のどこがいいんだか…!」 「そこは同意見! 今度葵くんに会ったらビンタしちゃいそう…… あー、どーしよ。 凪くんの同僚だし、先輩のバンドマンなのに…!この感情を抑えられる気がしない…。」 「じゃあ俺がやるわ!今から行こう!」 「えっ! 本気? 今日LIVEだし、もう公演前だよ?」 「…行こ。」 「……うん。」 そんなことダメなのに、紅葉は止めずに同意してしまった。 双子の結束力は固い。 すぐにLiTJのLIVE会場へ向かうことに… そこへ翔から珊瑚に電話が入る。 「あ、翔? はぁ? 今起きたのか? まぁ、いいや。 まだ紅葉と外にいる。 え? 俺は今からお前の元同僚をぶん殴りに行くから忙しい。 洗濯物取り込んで畳んでおけよ。 終わったらみなのとこの買い出しと犬の散歩な。 レニとサチの宿題もチェックしてから帰れよ! レニのは難しくて分からない? …うーん、とりあえずやってあるかだけ見とけ。 …おー、愛してる、愛してる。 …ご褒美? …それはお前の頑張り次第じゃね? ちゃんと全部やっておけよ。じゃあな。」 「ねぇ…今の……愛、どこにあった?(苦笑)」 それから…LiT Jの楽屋に突撃した2人。 双子コーデに盛り上がる周りを通りすぎると… 珊瑚は公演直前のAoiを見付けると胸ぐらを掴んで渾身の頭突きした。 殴るのはダメだと葛藤した結果らしい。 それを見守った紅葉は凪を捕まえて「凪くんが僕の彼氏で良かった。大好き!世界一愛してる!」と熱烈な告白をしたそうだ。 End

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