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【双子のお仕事】(1)

夏休みの朝… 双子たちはまた洗面所に並び身支度をしていた。 「わぁーい! 目標体重になってるー! 良かったぁ! 凪くんのご飯が美味しくて全然食欲がセーブ出来てなかったけど、さすが凪くんだなぁ! ちゃんと体重落ちてるっ! これで今日の撮影も一安心だぁ!」 紅葉は体重計に乗り、表示された数字を見て歓喜していた。 「そりゃあ毎晩あんだけ運動してりゃあ痩せるだろ。」 「えっ?! さ…珊瑚、何言ってるの? …まさか…っ!!」 「…バッチリ聞こえてるけど? 前にも言ったけど、お前声デカイって。」 片割れの発言に青くなって赤くなる紅葉。 「そんなことより今日のお前の撮影ってココでやるやつ?」 「そんなこと?!」 紅葉的には一大事な事件だが、珊瑚は気にしていないようでスマホの画面を見せてきた。 オロオロしながら確認すると、確かに今日モデルの撮影を行うスタジオの名前だった。 「そうだよー。 あれ? 場所とかまで話したっけ?」 「……マジかー…。 最悪。 受けてからもしかしてと思ったけどそんな偶然あるかー?まさか仕組まれて…? でも今更断れねーしなぁ…。あーぁ…。」 「え、何? どーしたの?」 「知り合いの知り合い…みたいな流れで撮影のヘルプに入ることになったんだけど…」 「えっ?! ホントっ?! 珊瑚が?アシスタントのお仕事? わー、スゴーい! じゃあ一緒に行こー!」 「……スゲーイヤな予感しかしない。 ねぇちょっと、今日だけ他人のフリして?」 「えー、何でよー?」 珊瑚はキャップとウィッグ、キャップを用意し、わざとダサい格好をして現場に入った。 主役である紅葉は関係者たちからチヤホヤされているが、珊瑚は雑用。 カメラマンのアシスタントなので当たり前だ。 普段だいぶボケーっとしている紅葉にモデルが務まるのかと心配していた珊瑚だが、服を着替え、髪を整え、メイクを施された紅葉は顔つきが変わりその佇まいも確かにモデルだった。 “まともな顔も出来るじゃん…! 写真は…まぁまぁかなー。 このセットならもっといいアプローチ出来そうなのに…” 「おい!」 「あ、はぁい…。」 珊瑚は下っ端の雑用に徹した。 休憩時間になり、「次の衣装の順番変わったとか言ってたから色見を確認して来い」と言われ、しぶしぶ紅葉の楽屋へ向かう珊瑚。 ノックをしようとしたところで中から紅葉の声が聞こえた。 「あの、困ります…!」 「何、気にせず着替えたらいいよ。 男同士じゃないか…!」 「でも…! すみませんが遠慮していただけたら…」 「別にじろじろ見てるわけじゃないんだから…大げさだよ。それとも…私を意識してるのかな?」 「えっ?」 「そうだ。終わったら2人で食事に行こう。 中華の上手い店があるんだ。 予約しておくよ。」 「いえ、あの… 2人きりはちょっと…!」 なんとか断ろうとしている紅葉と、多分どっかのお偉いさんだか知らないが下心満載の男の会話にげんなりする珊瑚。 形だけノックして返事も待たずに中へ入った。

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