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【君と僕が恋人になるまで。】(葵×雪人) (1) ※微R18

※こちらはバンド内恋愛に登場する葵(Aoi、LiT Jボーカル、凪の同僚)と雪人(紅葉の友人)のお話です。 2人の出会いは約2年前まで遡る…。 場所は同性同士の出逢いの場としてもそこそこ有名な都内のとあるバーだった。 ロックバンドLiT JのボーカルAoiはボイストレーニングと音楽雑誌の撮影で1日の仕事を終えた。 お気に入りのアッシュグレーのカラコンを外すと「葵」へと戻り、一夜の出逢いを求めてバーへ向かった。 友人やメンバーたちにはバイだと告げているが、ほぼゲイ寄りの葵。 好みのタイプは色白で出来ればなるべく腰の細い子。 加えて従順な性格だとなおのこと良い。 人気バンドのボーカルを務めるだけあって葵は容姿端麗で話も上手い。 年齢より若く見られるし、派手めな髪色もゴツめのアクセサリーもよく似合う、見た目通り今時のミュージシャンだ。 でもいつでも自分が優先で一人っ子らしいワガママも多い。まぁ…悪くいえば自己中心的な性格が災いしてか、どちらかというと恋愛は苦手なタイプで、気軽に楽しく後腐れなく遊べる相手ばかりを狙っていた。 その日、バーのカウンターで綺麗な赤色のカクテルグラスをじっと眺める青年、雪人に出逢った葵はすぐに声をかけた。 「こんばんはー! …隣いーい?」 顔を覗き込むように話し掛けられて、少し驚いた表情を見せた雪人は「…どうぞ。」と答えた。 「初めましてだよね? よく来てるの? あ、ジンフィズで。 何飲んでるのー?」 「飲んでるというか…飲んでみようかなって考えてるとこ。」 「そうなんだー? 俺葵ー。 何くん? 不思議ちゃん? …一緒に乾杯していい?」 葵の頼んだカクテルが手元に届くと2人は乾杯をした。 喉を潤すようにグラスを煽る葵とは対照的に雪人は唇にグラスを寄せたが、アルコール独特の香りを感じたせいか、口を付けることなくそのままテーブルに置いた。 「…あれ? 飲まないの?」 「……お酒、苦手で…。」 「え? なんで頼んだのー?(笑) やっぱ無理そうって? じゃあノンアルコールのカクテルにする?」 「そんなのあるの…?」 「…ご馳走するよ。」 すぐにバーテンダーに目線をおくる葵。 阿吽の呼吸でバーテンダーはノンアルコールカクテルを作り始めた。 葵に少し心を許したのか、雪人はありがとう、と微笑んだ。 葵はその笑顔を見て、雪人のことが気に入ったようだ。 いつもは“お持ち帰り”した相手とはホテルへ行くのだが、独特な雰囲気の雪人との会話が意外と面白くて、いい感じに酔っ払った葵はタクシーに乗り込むと彼を自宅へと連れ帰った。 「ユキー? 早く上がって来いよぉー。」 「僕、上がっていいの…?」 何故か玄関でボーッと突っ立っているユキを迎えにいく葵。 「はぁ…? ってか、ここで帰す訳ないでしょ? …逃がさないからねー?」 上機嫌な葵に肩を組まれてリビングへ連行されるユキ。 戸惑いつつも、広々とした部屋を見渡して、葵に導かれるままソファーに座った。 「…緊張してんの? 何か飲む? まぁ、酒か水しかねーけど…(笑)」 「大丈夫…。 外から見た時もね…こういう部屋に住んでる人ってどんな人なのかなぁって考えたことがあったけど… そっか。 葵みたいな人が住んでるんだね。」 「…面白いこと言うね? ユキも詩人なの?」 「違うけど…。 葵は詩人なの?」 「半分ねー。」 葵は作詞をするので嘘ではない。 なんでも聞き入れるユキの反応が可愛くて葵は距離を詰めた。 「…キスはしない方がいい?」 「…どちらでも…。 葵に任せるよ。 …っていうか、今のキスじゃなかった?」 葵的にパーフェクトなユキの答えに気を良くして、改めて口付けた。 普段はしない方が多いのだが…。 目を閉じたユキは睫毛も長くて、髪質はふわふわのネコ毛… 益々葵の好みだった。

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