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【凪のサプライズ 1】

※「バンド内恋愛2」第88話(プロポーズ)の翌朝のお話です。 「紅葉ー! もう起きてー! 学校行くんだろ? 朝飯食う時間なくなるぞー!」 階段の下から凪に呼ばれた紅葉は半分寝惚けながら起きてきた。 美味しそうな匂いにつられたのか真っ直ぐ凪のいるキッチンへやってきた紅葉… 「はよ…。 身体は? へーき?」 凪は紅葉の腰を抱いて、頬にキスを落とすとそう訊ねた。 久々に身も心も繋がることが出来て満足感で思わず顔がにやけるが、負担の大きい紅葉の身体が心配だった。 「んー…。 卵焼き……!」 多少ふらついてはいるが、顔色も良いし、寝癖と空腹以外体調は大丈夫そうだ。 まだ頭は起きてないなと、凪は苦笑しながら、端の一切れを紅葉の口に入れてやる。 「んま…っ!」 「顔洗っておいで。」 「はぁい…。 …ん? ご飯の撮影してるの?」 キッチンの端に小型カメラがあるのに気付いた紅葉はまた凪のFC用のお料理動画撮影かな?と特に気にせずボーっと凪を見つめた。 「うん。」 「そっかぁ。 んー、お腹すいたぁ! 戻ったらコーヒーいれるね。」 紅葉は凪の頬にキスを返して洗面所へ向かった。 しばらくして…いつもの… 「凪くんー! 寝癖がー…!」 といつ声が聞こえる。 「あとで直してやるから。 ……さすが紅葉、まだ気付かないか…(苦笑)」 凪は呟いて、カメラを紅葉の方へ向ける凪。 すると… 「ふがッ、みぎゃあぁーっ!」 「…なんつー叫び声だよ…!猫?(苦笑)」 笑いながらカメラ片手に紅葉の元へ移動する凪。 そこには…洗顔クリームのチューブを握り絞めながら自分の左手を眺めて固まっている紅葉がいた。 因みに洗面台と床が洗顔クリームまみれである…。驚いた紅葉がチューブを握り締めたせいかと思われるが、朝からなかなかの惨状に凪も一瞬固まった。 凪は一先ず録画のままカメラを置いた。 騒ぎを聞き付けた平九郎と梅が洗顔クリームを口にしないように押さえ、紅葉を落ち着かせようと考えたが…。 「こ、こ、こ…!」 「…ニワトリ?(笑)」 「違うよ! …こ、これは何ですか?」 紅葉は左手薬指にある指輪について凪に問いただした。 先に出しっぱなしの水を止める凪。 「何って…婚約指輪だけど? ビックリした?」 「! こ、ん…やく…ゆ…びわ?」 驚きのあまり日本語がカタコトな紅葉。 とりあえず英語で言い直してみる凪…。 「…エンゲージリング。 昨日、プロポーズ受けてくれたよな? 渡すタイミング悩んで、サプライズにしてみた。 起きてすぐ気付くかと思ったけど、今やっと気付いたんだな…(笑) …気に入った? サイズどう?」 「………は、…はぁ……」 紅葉は困惑した様子だった。 「…あれ? 気に入らなかった?」 凪は少し心配そうに聞いた。 喜んでくれるかと思ったが… 「…初めて貰ったので…よく分からないけど…」 「そりゃそーでしょ…(苦笑)」 他の誰から貰うというのだ。 角度を変えて指輪を眺めながら紅葉らしいことを呟く彼に笑う凪。 「…スゴい……! キラキラしてる…っ!!」 そういうと紅葉がパッと明るい笑顔になったので、ホッとする凪。 どうやらビックリしすぎてただけで、一応喜んではいるようだ。 「でも僕…男だけど、婚約指輪…貰っていいの?」 少し戸惑っているのも事実。 凪は丁寧に説明した。 「紅葉のこと女性扱いしてるわけじゃないよ? 最近は女性から男性にプロポーズする時に贈られる事もあるみたいだし、別に男性から男性に贈ったらダメってことはないよな?って思って。 けじめとして俺があげたかったんだ。 なかなかいいデザインがなくてフルオーダーにしたから時間かかったけど、なんとか間に合った。」 「なん…と? フルオーダー…? 凪くんのデザイン?」 だから女性らしすぎず、だからと言ってゴツゴツしすぎていないのかとデザインにも感心する紅葉。 「…デザイナーさんと相談してって感じだけどね…。」 「…っ!!」 凪の想いが詰まった指輪をプレゼントされて感無量の紅葉…。ようやく頭も働き始めたようだ。 勢いよく凪に抱き付いた。 「ありがと…っ! 昨日から幸せ過ぎて…夢じゃない? 僕、ちゃんと起きてるよね?」 「おっと…。 …良かった、喜んでくれて。 …でもそれ(洗顔クリーム)は置いて欲しかった…。お前それ新品? あんだけ溢したのに、今俺にかかったんだけど…(苦笑)」 「うそっ? わーっ!! あ…ごめん、髪に……!」 凪のキレイな黒髪にガッツリ洗顔フォームがかかっていた……。

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