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【凪のサプライズ 2】

拭き取ってもぬるぬるするだけなので、結局シャワーを浴びた凪。 「洗顔で髪洗ったの人生初だわ…(苦笑)」 「ごめんね…。 でも僕よく間違えるけど、別に大丈夫だよ!」 「それ全然フォローになってないからね…?(笑) 朝飯食べれた?」 時間がなくなるから紅葉には先に食べるように言ったのだ。 というか、既に時間が押していて、凪は車で送っていくつもりでいる。 「うん…。でもやっぱり胸がいっぱいで…おかわりは出来なかったよ。」 「…いやいや…! 朝からケーキ食ってるじゃん(笑)」 昨日残したケーキを食べている紅葉を見て驚く凪。まぁ、食欲があるのはいいことだが…。 「へへ…。 ねぇ、凪くん! このすごーくキラキラしてるのは何? もしかしてダイヤモンド?」 紅葉は半分冗談で聞いたのだが、凪は当たり前だと肯定した。 「そうだよ。」 「ふへ、えぇっ?! ほ、ホントにっ?!」 高価な宝石を前に動揺する紅葉。 平九郎と梅に指輪を見せて自慢(?)していたが、思わず固まった。 「そんな大きな石じゃないし、埋め込んだからそんな目立たないでしょ?」 「……でもこんなキラキラ…!! え…ダイヤモンドは小さくても良質だと高いってみなちゃんに聞いよ? どうしよう…僕…怖くてつけてられない……。」 貧乏性の紅葉は多分だが、相当高価な指輪にビビリまくっていた。 以前もらったネックレスでさえ、高価で大切な物を失くしたら大変だからとデートの時にしかつけないと決めているのだ。 凪は再び紅葉にカメラを向けて芝居を含めて残念がってみせる。 「え? つけてくれないの? せっかく紅葉のために作ったのに? えー、つけてよ。 婚約指輪って言っても給料3ヶ月分とかじゃないし。 まぁ…左手だと楽器弾く時邪魔かな?って思ったけど、右につけてもいいし、チェーンも用意してあるよ。 」 凪の給料3ヶ月分の指輪なんて恐ろしい値段になってしまう…。 そして凪は謙遜しているが、それなりに値の張るものだろう…。紅葉はこの指輪に見合う人間にならなければと決意を新たにして頷いた。 「…学校につけてっても大丈夫かな?」 「高校生じゃないんだから平気だろ? しかも今日演奏レッスンとかないんでしょ? じゃあいいじゃん。 あ、弁当も作ったから持ってって?」 昨夜、夕食を作る時に下準備の段階でいくつか取り分けてあり、豪華な弁当まで作ってくれていた凪。 どこまでが誕生日祝いで、どこまでがプロポーズの演出なのか分からないがとにかく幸せだと微笑む紅葉。 「うん…。 ありがとう…!」 実は友人の間で有名な紅葉の彼弁(彼氏の作ったお弁当)。 今日は確実に指輪に視線と話題がいくだろう… 質問責めにあってお弁当を食べる余裕もないかもしれない…。 「あ。 お返しとか考えなくていーからね?」 「え?」 「…結婚指輪のデザインは紅葉に任せるからよろしく。」 「…凪くん…っ!!」 再びギュッとハグをして、甘いキスを交わした。 「ありがとう…。 指輪も凪くんのことも一生大事にするね。」 「…あぁ。」 「大好き…! 愛してます…っ!」 「俺も…愛してる、紅葉。」 幸せいっぱいのキスを交わす2人…。 このままだと学校に行けなくなりそうなので、なんとか切り替えて支度を進めた。 紅葉は真新しい指輪を眺めては凪のことを想い、2人の未来を想い描いた。 End

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