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【何度目かの満月 1】
今回のLinksの合宿場所はみなと光輝の自宅に隣接されたLinksスタジオ。
合宿…というか、レコーディング前の短期集中のバンド練習という感じだ。
凪と紅葉は車で5分、徒歩でも15分程なので深夜でも早朝でも帰宅可能。
山奥のロッジやスタジオも良いが、自宅から近いというのも最高である。
「じゃあ平ちゃん、梅ちゃんイイコにしててね。あんちゃんの面倒みるんだよ。」
紅葉は愛犬たちにそう告げると隣のスタジオへ向かった。
「ぶぅーうっ!」
平九郎と梅を覚えたてのずり這いで追いかけているのはみなと光輝の愛娘、愛樹。
この日は犬と赤ちゃんも参加して、かなりリラックスした状態でのバンド練習だ。
とてもロックバンドとは思えないが、今のLinksにはこの形がベストなのだ。
まだベビーシッターが決まらないのでメンバーとみなの専属スタッフのカナが交代で協力して愛樹を見ながら作業をしている。
大変なところもあるが、不思議と良い作品が出来るも事実。
「わぁー!
癒され要素がいっぱいある…!」
幼少期は家庭環境に恵まれず、最近は異国の地で一人暮らしをしていた誠一は特に嬉しそうだ。
作業が深夜に及ぶと泊まることもある彼は日に日に育メンになっているらしい(笑)
「愛樹ー?
ごはん出来たよ。
ごはん、食べる?」
凪も離乳食を勉強して作ってくれたり、愛樹はみんなに可愛がられている。
「だぁっ!」
「…食べるって(笑)」
しばらくするとスタジオからみなが戻ってきた。
「誠ちゃんここのメロディーラインってさ…
…ん?
わぁ、愛樹…! 贅沢ー!
誠ちゃんに抱っこしてもらって、凪に食べさせてもらってるの?」
「椅子に座らせたらグズるんだよ…(苦笑)」
「僕が一人であげるとあんちゃんがスプーンに手伸ばしてきて溢れるし…。難しいね。」
凪と誠一は2人がかりで愛樹の小さな口に野菜スープを運びながら経緯を話した。
「あなたこんなイケメンに囲まれて育ったら将来カレシ作るのに苦労するね…(苦笑)」
「愛樹ちゃんはカレシなんて作らなくていいんだよねー!」
可愛い可愛いと光輝は愛娘の写真を撮りまくっているが、みなに食事中で気が散ると怒られていた。
紅葉も戻ってきて、輪に加わる。
「いいな、あんちゃん…
凪くんにあーんしてもらってる…!
ずるい…!
…でも可愛い…っ!
小さい歯が見えてる…!」
「…紅葉…!(苦笑)
愛樹に妬かない約束だろ?」
「だって…!」
「ふふ…。紅葉くんでもあんちゃんに妬くんだね。…ラブラブだねーって。」
誠一に指摘された紅葉は顔を赤らめた。
「! 恥ずかし…っ!」
「あれ? 足りない? おかわりする?
紅葉、スープあげてて。
…ってか、めっちゃ食うなぁ…!
あ、平九郎…! 愛樹が溢したの食うなよ…(苦笑)
光輝ー、もし愛樹のカレシが同業(ミュージシャン)だったらどーすんの?」
凪がおかゆのおかわりを取りに行きながら光輝に聞いてみる。
「全力で潰すに決まってるだろっ!」
光輝の本気の答えにみんなで笑った。
この合宿が始まる前、凪と紅葉はメンバーにはパートナーシップを結ぶ予定であることを話した。
光輝もみなも誠一もとても喜んで2人を祝福してくれた。
合宿の初日がパーティーになってしまったくらいだ。
みなは紅葉のエンゲージリングに興味津々でカナにも話すと紅葉はしばらく女子2人に囲まれていた。
公正証書の内容はこれからゆっくり相談しながら決めていく予定だが、皆は結婚式やハネムーンはどうするのかと盛り上がっていた。
「ハネムーン?
休み取れるなら考えるよ(苦笑)
式はやるなら和装がいいんだよな? 紅葉?」
「えっ?!
う、うん…!
…でも鼻血出るかもしれない…(苦笑)」
凪の和装を想像して紅葉は思わずそんなことを呟いていた。
まだ夢のような話に感じているのだ。
「ぅー!」
「式挙げるなら愛樹も参列したいって。
静かに出来るかな…?」
「その頃には歩いてるかもだからね…(苦笑)」
みなと光輝は心配そうにしていた。
「騒いでも泣いても大丈夫だよー。」
「式は挙げるとしても呼ぶのは身内とここ(メンバー+カナ)くらいだから。」
「ありがとう。
そういえば珊瑚たちも結婚式するってね。
オンラインで参加出来るってスゴいよねー!」
「そうなの!
楽しみー!」
「みんなで見ようよ!」
「俺、絶対何か起きる気がするんだけど…(苦笑)」
「確かに…(笑)」
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