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【バレンタインと大事なこと… 2】※微R18

そこへ凪が帰宅。 早朝…というか、彼にとっては深夜?からジムに行っていたようだ。 一応オフだが、深夜ラジオもあるというのに朝から元気だ。 「ただいま。 おー、紅葉。はよ。 なんか起きてる時に顔合わすの久しぶりだな?(笑)」 はにかんだ笑顔が眩しい…。 「凪くん…っ!」 確かに、一緒に住んでいるのにすれ違いが続いていた。 紅葉は思わず彼に抱き付いた。 「おっと…! ん? …どーした? なんかあった? 飯は? 足りたの?」 紅葉の顔を覗き込んで心配そうに聞いてくれた。 優しい凪にまさかバレンタインのチョコを用意していないとは言い出せなくて、紅葉は慌てる。 「あ…っ! うん! ごちそうさま! お野菜たっぷりで美味しかった。 人参が甘かったよ! あの、僕…もう行かないといけなくて…!」 「えっ?もう? 早くね? スケジュール変わったの?」 「えっと…!うん…。」 「残念。せっかく会えたのになぁー(苦笑) まぁ、仕方ねーか。 …あ。コーヒー飲む時間くらいはある?」 切なそうに身体を離す凪。 でもやっぱり優しい恋人に胸が締め付けられる紅葉。…嘘は付けない。 「…っ! 違うんだ。 あの…練習前にちょっと買い物行きたくて…。」 「買い物? 何買うの? …急ぎ? 俺あとで出るし、夜でも間に合うならついでに買っとこうか?」 「えっ?! いい、大丈夫…っ!」 まさか凪に渡すチョコを本人に買ってきてもらうわけにはいかないので首を振る紅葉。 凪はふーんと返しながらもコーヒーを淹れてくれているようだ。 「じゃあ…まぁ、店まで送ってくし、とりあえず座って一緒にコーヒー飲まない?」 紅葉は彼の提案に頷いた。 「美味しい…。 なんか…ホッとするね。」 凪と飲むコーヒーは豆は同じはずなのに一人で飲む時より美味しく感じ、何よりソファーの隣に座る彼に癒される。 「紅葉…。」 カップを置いたタイミングで名前を呼ばれ、顔をを向けるとそのまま口付けられた。 「ん…っ。」 長い腕で身体を抱き寄せられて、角度を変えて重なる唇…。 コーヒーの苦い香りが鼻を抜けていくが、合わさる舌は何故だか甘く感じる。 紅葉も彼の身体に腕を回して更なるキスを求めた。 もう…チョコレートのことなど諦めがついた。 バレンタインのチョコレートを探しに行くより、練習時間ギリギリまで凪の側にいたいと心からそう思う。 そっちの方が断然大事だ。 「チョコ……!」 キスの合間に思わずそう呟く紅葉。 「…ん?」 凪は短いキスを紅葉顔中に降らせ、髪に指を通しながら話を聞いてくれた。 「用意するの忘れちゃった…! …ごめんなさい。」 「…え? あー、バレンタイン? あぁ、いーよ。 紅葉忙しいんだし。 むしろ今年はもういらないかなぁ…(苦笑)」 「えっ?!」 まだバレンタインデーの午前中だが、まさかもうたくさんチョコレートをもらったのだろうか…! 凪ならそれもあり得ると紅葉が不安そうな顔をしていると…! 「あー、違う。 …ほら、一昨日俺個人のファンクラブイベントだったじゃん? 時期的にってことでまさかのチョコレート菓子作りだったんだよなぁ(苦笑)」 「えぇっ?! そうなの? お料理教室ってしか聞いてなかったから…!」 「まさかのお菓子作り…(苦笑) 講師の先生呼んでさ。 俺男一人で…。 俺のイベントなのにめっちゃ浮いてたし(苦笑) まぁ、ファンの子たち楽しそうだったからいーんどけど。 もうさ…、チョコレートの匂いがヤバくて。 で、もういいなって思った。」 思い出したのか凪は苦笑していた。 「ふふ…っ! そっかぁ…! でも…何も用意なくてごめんね?」 チョコレートじゃなくても何かプレゼントしたほうが良かったのでは、と後悔する紅葉。 「ちゃんとあるよ。」 「えっ?」 凪は冷蔵庫に向かい、小さな箱を持ってきてくれた。 「開けて?」 「なに…?」 言われるままに箱を開ける紅葉。 中には小ぶりのチョコレートケーキが入っていた。 「ケーキだぁ…っ!」 「ガトーショコラ。」 「すごい! これ…凪くんが作ったのっ?!」 頷く凪に驚く紅葉。 「甘さ控え目にしたからこれなら俺も食える…はず。 バレンタインチョコって言ってもさ、俺たちはどっちが用意してもいーじゃん? 2人で食べるんだからさ。 何を食べる、誰が用意するっていうのよりそこが一番だよ。 なぁ、まだ時間ある? せっかくだから一緒に食べよーぜ。」 嬉しくて紅葉はギュっと凪を抱き締めた。 「すごく美味しい…。 あと…、すごく嬉しい。 凪くん、…大好き…!」 「…良かった。 俺は…紅葉のその笑顔が見たかった。」 凪に言われ、紅葉は再び穏やかに笑った。 お礼代わりに今度はチョコレートのキスをして、すっかり甘えモードの紅葉。 ここ数日悩んでいるバイトが出来なくて困っている友人の話を相談すると… 「じゃあ…今日オフだし、何か料理作っとくからうちに連れてくれば?」の一言でまたもや紅葉を驚かせた凪。 どこまで優しいのかと感激している紅葉は甘いキスをたくさんもらって、過酷な練習へと向かった。

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