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【ホワイトデーと思いやり (3)】

翌朝… 凪が作業明けに朝食用のお握りを作ってくれたおかげで紅葉はギリギリまで眠ることが出来た。 おはよう兼ありがとうのキスをしながら髪を整えてもらう、至福の時…。 「今日けっこう寒いから…ちゃんも暖かくして行けよ? 向こうは海近いし風もあると朝晩はかなり冷えるよ。 あと…忘れ物ない?チケットは? スマホと財布落とすなよ?」 凪は過保護なくらいに心配してくれて…おかげで紅葉はニット帽とマフラー、手袋を纏ってモコモコだ。 「はぁい。お握りも全部持ちました! うん、寒そうだねー。 でもカイロもあるから大丈夫だよー。 凪くん、帰ってきたらちゃんと寝てね?」 「おう。一区切りついたし午後まで寝る。 準備OK? …ちょうど時間だし、行くか。」 「うん! お願いします。 凪くん、お土産楽しみにしててね。」 「…お前が欲しいと思ったやつ買っておいで。」 車内だと人に見られるかもしれないので、玄関先で行ってきますのキスを交わした。 早朝の駅前で友人と合流してロータリーにいる凪に手を振る紅葉。 「ヤバいよぉ…もうさみしい……。」 「えぇっ?! ほんとラブラブだなぁ(苦笑)」 友人たちを驚かせながらも無事に目的地に着いた。 みんなにお握りを配ろうとリュックを漁っていると封筒が入っていた。 「何だろう…? もしかしてラブレター?」 凪からのラブレターかとわくわくして封筒を手に取る紅葉。 「えっ?! いや、茶封筒でラブレターはないでしょー!(笑)」 開けてみると中にはお金が入っていて驚く紅葉。同封されたメモには見慣れた凪の字で「友達と好きなものでも食べておいで。 寒いからちゃんと店に入って暖まること。」と書いてあった。 どうやらお小遣いらしい…! 恋人の優しい思いやりに胸がいっぱいになる紅葉。さっきまで一緒にいたのに今すぐ会いたい気持ちになり、彼を想った。 「うー…!会いたいよ…。 …よしっ!次は絶対凪くんと来よう…!」 「ほんと大好きなんだねー。」 「今日は俺らで我慢してね?(苦笑)」 「2人は目立つから、海外のパークがいいかもねー!」 「ハネムーンで行ってきなよー!」 「! それいいねっ!」 紅葉は凪にお礼のLINEを送りながら友人たちの提案に賛同し、妄想を始めるのだった。 「凪くんとなら…ちょっと怖いアトラクションに乗ってもいいかも。 ギューって出来るし…! …帰ったら海外のパーク…、調べないと!」 「おーい、もみっちー? 前! 列進んでるよー?」 「戻ってきてー!」 「朝早すぎて目開けながらまだ寝てるんじゃない?(苦笑)」 昨夜の名残めありふわふわした、正に夢心地で初めてのパークを楽しんだ紅葉。 夜になり「駅まで迎えに行くから着く時間分かったら教えて。」という凪からの連絡にきゅんきゅんしながら頬を赤らめ、さすがに友人たちに呆れられるのだった。 END

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