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【アパレルイベント】(2)
竜之介の予想を上回り、約1時間後には商業施設に現れた凪。
紅葉の控え室で責任者に笑顔で挨拶を済ませると、早速イベントの様子が分かるモニターをチェックしている。
30分前に「あと30分で着く。入館の手筈宜しく。」と連絡を受けた竜之介は「マジか…!早いし…!」と、固まっていた。
因みに責任者は青い顔をしてより一層あたふたしている。「あのぉ…私共に何か不手際でも…?」との問いかけに、笑顔しか見せない凪にビビりまくっている。
責任者やブランドの関係者と話しながら10分から15分程モニターを眺めていた凪は問題点を指摘していく。
「あのさ、いきなり来て口出して悪いんだけど…このペースじゃ閉店時間までに終わらないよ?15分で8人しか捌けてない。1時間で30人前後?
ここ来る前にうちのRyuに並んでる人数確認してもらったけど、まだけっこう並んでるよね。
単純計算で1時間で40組目安でいかないと。
しかもここ駅から離れてるから、閉店までいたら電車間に合わない子もいるだろうし、せっかく来てくれてるのにその子たちイベント参加出来なかったら可哀想だよ。」
「そうですよね…!
すみません!
売り場のスタッフに言って急がせるので…!」
「…因みに何て指示出します?」
「えっと…
リーダーがいるのでちょっと相談してきます。」
「いや…それもっと早い段階なら分かるんですけど…時間もったいないですよね?(苦笑)」
「あ…、すぐなんで…!」
埒が明かないと凪はため息をついた。
責任者として現場にいるのだから状況を把握して臨機応変に指示を出していかなければ上手く回るはずはないのに…人相手のイベントが企画書通りに進むわけがなかった。
「紅葉、不器用なんで作業しながら話しするの苦手なんですよ。…ほら、また封入間違えた(苦笑)」
最愛のパートナーを見守る視線は優しいが、次の瞬間切り替わる凪。
LINKSのドラムとして、個性派揃いのバンドを纏めてきた彼の実力はかなりのものだ。
リーダーは光輝だが、LINKSの全体を見て判断する力は凪が誰よりも備わっているだろう。謂わばLINKS芯のような存在だ。
「レジで会計してもらってからの流れなんですけど、購入金額の確認してノベルティセットするスタッフさん2名に増やせませんか?
パターン多くてけっこう時間かかってるんで。
で、袋詰めするスタッフさん2名は変わらず…、お客さん側にもスタッフさんついてもらって、必ず商品確認してから紅葉のとこに案内。
…ここは丁寧にやっていいと思うんですよね。
ただ、購入点数で順番前後するかもだからそこは事前案内で。
紅葉はシール貼って渡すだけ。
これで、1~2分話せると思う。
撮影のお客さんはレジでリストバンド渡してるんですよね?商品渡したら先にパネル前にスタンバイしてもらって、リーダーが列止めるタイミング判断して対応。
…これでいけませんか?
30分やってみて一回止めて何組捌けたか責任者が集計。その間リーダーがスタッフに問題点あるか聞いて改善。どうですか?」
「……ありがとうございます。」
責任者の男はそう答える他なかった。
「じゃあ今話し聞いてた人たちで担当者に説明。3人いるからリーダーとレジ班、ノベルティ班、袋詰め班…ちょうどいいですね。
…Ryu聞いてた?流れ変わるから紅葉に説明。」
「了解っス…!」
その後は凪の発案通りにイベントを進めていく。
先ほどまでよりもスムーズに流れていく様子を確認して誰よりもホッとしていたのは責任者だ。呑気にお茶を啜っている。
この男とは分かり合えないなと感じた凪はここまできたら疎まれようとも勝手にさせてもらおうと開き直り、近くにいたスタッフに並んでるファンに再度案内やトイレ休憩など確認するように伝える。
そこへRyuから電話が入った。
「…兄さん?
なんか在庫足んないらしくて…スタッフさん2名倉庫行ってかき集めてくるから人手足りなくなっちゃうんですけど、どーしましょ?」
「商品なきゃ話なんないでしょ。
行ってもらって。」
竜之介との通話の後ろに紅葉の声が聞こえた。
「最近?んー、何してるかなー?
…家事手伝い…?(苦笑)
ご飯?うん、作ってもらってるー!
昨日ー?激ウマの春巻き食べたよ!
へへ…、いいでしょー?
そっかー!バイト先でご飯食べれるんだね!
忙しいんだ? 頑張ってるねー!」
紅葉は疲れも見せず頑張っているようだ。
「兄さん…?」
「あー…、皆忙しそうだから俺がそっち行って手伝う。」
「はっ?!」
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