あやなに教えてもらった洋菓子店で今の時期オススメだという色とりどりのフルーツゼリーとケーキも購入して帰宅した凪。 自室へ戻ると愛犬たちが嗅ぎなれない匂いに寄ってきた。 「あー、香水…？え、臭い？(苦笑)」 あやなの香水やゆーじのタバコの匂いが付いたのだろう。梅は何度か「フンっ！」と不満気に大きな鼻息を鳴らして背中を向けて行ってしまった。 「ヤベー…。梅、怒ってんなー(苦笑)」 凪が話しかけた平九郎もさっさと冷感クッションのところへ戻り眠ってしまった。 「……。」 しかも書き置きのメモによると紅葉は両親と寝てるらしい…。 凪は一先ずシャワーを浴びることにした。 アルコールで鈍る頭を覚ますように少し水圧を上げて温めのシャワーを浴びる。 一人寝は寂しいし、この後また作業を進めようかなと考えていると背中越しにガチャと音がしてドアが開いた。 「うわ…っ！」 「あ、ごめんね。 …おかえりって言おうと思って… 早かったね。」 紅葉だった。 「ビックリした…(苦笑) ただいま…。 寝てたんじゃねーの？」 「お父さんトイレに起きて…連れてったら下からお水の音したから… 僕も入っていい？」 「え…？あぁ…。 でもお前もうユキと温泉に…って！ …バカ。服…！(苦笑)」 着衣のまま浴室に飛び込んで来た紅葉はずぶ濡れだ。ぎゅと凪の首元に腕を伸ばして抱きつくとキスをねだった。 「今日はごめんな。」 キスに応えた凪が抱き締めながら謝ると紅葉は小さく首を振った。 「今度…僕ともお出かけしてくれる？」 「…もちろん。」 女性への不満や凪の浮気の心配より、小さな嫉妬心が一番モヤモヤしたらしい。 凪は「新しい料理人も決まったし、こっちにいる間にデートしよう」と新たな約束をすると紅葉に笑顔が戻った。 濡れてしまった服は洗濯機に入れて、とりあえず紅葉には凪が着ようと思っていたTシャツを着せた。 自分は下着とハーフパンツだけ身に付けて上半身は裸だ。 紅葉の下が気にはなったが、ギリギリ隠れる丈だし、自室までだからまぁ良いかとバスルームから連れ出す。 「あ…。 ゼリーとケーキあるけど食べる？」 ふと思い出して紅葉に聞けばパッと表情が華やいだ。ホントに分かりやすい。 ケーキは明日、早苗やユキと食べるからと、白桃のゼリーを選んだ紅葉はご機嫌そうだ。 凪にくっついたままデートの行き先をどこにしようかと話し始め、流れでユキと部屋で映画を観たと教えてくれた。 「初めて実写のBL映画を観たよ。 ユキくんのタブレットで！」 「へぇー、ネトフリとかの？ どうだった？」 「難しかった！ ユキくんに聞いたらBL映画はハッピーエンドが少ないみたいだよー。 あと…キスシーンとか、もっとあの…すごいシーンとかあって！その…そーいうのあるの知らなくて！…ごめんなさい、見ちゃいけないものを見てしまいました……。」 なんだか大袈裟に話す紅葉が面白くて笑う凪。 「別に謝らなくても(笑) だってAVじゃなくて映画でしょ？ いや…別にAVでも友達と見たくらいで怒らないけどさー(笑)」 「えぇーっ?!」 「え、そんなスゴい内容なの？(苦笑) なんてやつ？」 「だ、ダメっ！ 凪くんは見ちゃダメ！」 気になると、凪がPCで検索しようとするのを慌てて止める紅葉。 「何でだよー(笑) 余計気になるじゃん。」 「だって可愛い子が出てるんだもん！」 「…でも男でしょ？ …今まで紅葉以外の男を可愛いと思ったことないけど…。」 「え…っ。 嬉し…！ あ！あとユキくんが気になること言ってた。」 「何？」 「……あの、…してる時の時間ってどのくらいが普通なの？」 随分と際どい質問を真面目にしてくるところが紅葉らしいが、凪は少し困惑した。 「…それは人と場合によって違いますよね？」 「そう、だよね…！ 変なこと聞いてごめんね！ 映画だから簡単に…サクっと終わるんだと思うんだけど、ユキくんが"葵はこれより早く終わるよ"って。そこから話が…」 「…なんつー暴露してくれてんだよ(笑)」 今度こそ笑い過ぎてツライと凪はストップをかけた。 「…で？ 紅葉は？ 何て答えた？(笑)」 「うぇっ?! え…、ひ、秘密！」 「へぇー…(笑)」 戯れながら凪はさりげなく紅葉の着ているシャツの裾に手を伸ばす。 ハッと気付いた紅葉は懸命に裾を引っ張っているようだ。 「ちょっ…！ 俺のシャツが伸びる(苦笑) やっぱ…下、着てないよなー。 誘ってくれてる？」 「違…っ！忘れてたのっ！ あ…っ、ダメダメ…っ！」 隙をみて差し入れられた大きな手が滑らかな肌をなぞる…。 「紅葉はいつもちゃんと満足してくれてる？ 今日みたいに飲んでると感覚鈍るから遅いんだよなー。…試しておく？(笑)」 凪の誘いに首を振る紅葉。 時間も時間だし、客間にはユキもいる…。 「いつも満たされ過ぎてるから……！ ぁッ…、今日はだめ…って！ もう寝よ？ 歯磨きして寝よ？」 その後の紅葉がどうなったかは……？ END