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【夏のデート】(2)
家電量販店の次は楽器店へ。
ここは予めスケジュールに入っていて、デートの合間に仕事という感じだ。
もはやデートではなくなってきているのでは?と凪は感じていたが、紅葉は店頭の楽器を見たり、スタッフの方からいろいろ話を聞いて楽しそうに過ごしているようだ。
店長や支店のお偉いさんも揃っているのは来月、LIT Jのスケジュールに合わせて凪がドラム教室の講師をする予定なのでその打ち合わせのため。
対象は中学生や高校生が主でドラム演奏の基礎を講義したり、実際に凪のドラムセットを組むので拘りを話したり、デモ演奏や質問コーナーもある。
「へぇー、けっこう広いんですね。」
会場となるスタジオを下見した凪はスタッフから説明を受けながら、イベントの進行順や客席との距離感、音の響きなどを確認していく。
「おかげさまで既にチケット完売ですよ。」
学生向きのイベントということで、より多くの子たちにドラムの楽しさを知ってもらおうと凪はほとんどギャラは貰わず、チケットの値段を抑えたのだ。
「えっ?!」
驚きの声をあげたのは紅葉。
「…お前、紛れ込むつもりだったの?(笑)」
凪が指摘するとギクっと紅葉の身体が小さく動いた。
その様子を見て責任者である店長が微笑む。
「はは…!
大丈夫ですよ。
パス用意しておきます。」
「良かった!
ありがとうございますっ!」
「紅葉ー、そしたら当日、チェックやって?」
「もちろんいーよ!
この距離ならバスドラ小さいのにした方がいいかもねー?」
「あー…そうかもな…。」
紅葉の指摘に凪も同意する。
「本当に仲良いですよね。」
「公私共にパートナーって最強じゃないですか!」
改めて言われると照れ臭いがそうですね、と同意する2人。
「今日みたいに自分個人の仕事に連れて歩いてても説明する必要なくなったので、ラクになりましたね。やっぱ理由つけなくても一緒にいられるっていうのは一番大きいかな。」
凪がそう告げると周りもなるほどと頷いた。
男女のカップルや夫婦と同じように自分たちも一緒にいるのが当たり前だと周りから認知されるのは幸せなことだと改めて感じている。
「やっぱりお二人は一緒にいるのが自然ですよ~。
あ、そうだ!
紅葉さんも今度うちでベース講座やりませんか?」
「うぇっ?!
僕、人に教えられるほど上手じゃなくて…その、技術もまだまだだけど、主に説明が…(苦笑)」
小さい子には音楽遊びを教えているが、ベース講座となると中学生以上が対象となってくるので紅葉は自信がないと言う。
「紅葉の音楽の基礎はしっかり出来てるんですよね。ヴァイオリンやってたから…。
でもベースは独学でちょっとLINKS事情で基礎飛ばして実践(LIVE)やってきたからなんていうか…オリジナリティが強いですからね…。
ってか、未だに紅葉はTAB譜読めないんで、初心者向けは逆に難しいかもしれませんね(苦笑)
普段の練習も感覚とか感性の部分が多くて…"バーンっとなってキュッとなる"とかだからなぁ…(苦笑)」
「…なるほど。よく理解出来てますね(苦笑)」
「まぁ…一応ずっと一緒にやってきてるんで(笑)」
「ふふ…、凪くんがスゴいんですっ!」
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