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【夏のデート】(3)

なんだかんだであっという間に時間が過ぎていて夕食へ。 和食や京料理は飽きただろうと、中華をセレクトした凪。 ホテルに入るレストランは味も一流だ。 半個室の落ち着いた店内で食事とお酒を楽しむ2人。 「美味しいー! でもこんなラフな格好で大丈夫だったかな?」 半ズボン姿の紅葉は少し気にしていた。 「平気。似合うじゃん、その服。 …気にしないで食べな。」 凪は優しく諭し、紹興酒を口にした。 「ありがと…。」 紅葉はその一言で安心して微笑む。 食事のあと、酔い醒ましにと凪が紅葉を連れ出し広いホテル内を端の方まで歩いていく。 「…? どこまで行くの?」 「…秘密。 あ、ちょっと目瞑っててよ。」 「えっ?!」 「ほら、掴まって。」 紅葉に腕を取らせ、目を閉じたのを確認するとゆっくりと歩いて行く凪。 どんなサプライズなのかとドキドキしながら着いていくと、空調の効いた屋内からもわっとした空気に変わったのが分かった。 「外…? え、何??」 この時、何故か紅葉は肝試しだったらどうしようかとハラハラしていた。 いいよ、と言われて目を開けた先に飛び込んできたのは幻想的にライトアップされたプールだった。 「わぁー…っ! プールだっ!」 「…行ってみたいって言ってたでしょ?」 多勢の目と日差しが心配だと言われ、海もプールも自粛していた紅葉…。 まさかのナイトプールに目をキラキラさせている。 「泳いでいいのっ?」 「…2時間だけね。 もう少しお腹落ち着くまで待つ?(苦笑)」 「わぁーい!プールー! 初めてだぁっ! お腹は全然平気っ! あ…でも水着ないや…。」 「ちゃんと用意してあるから…(笑) 向こうで着替えれる。 そっちの浮き輪とかも使っていいって。」 「ほんとっ?! やったー! じゃあ他の人が来る前に早く着替えよう! あ、映え写真も撮りたいねー!(笑)」 「…他は来ないからゆっくりでいい…。 走ると転ぶよ?(笑)」 貸し切りだと分かった瞬間、紅葉は手にしたばかりのスイカ柄の浮き輪を落とした。 「僕たちだけ…? …そんな贅沢していーの…?」 「ははっ! 紅葉が心配するほど高くないから(笑) たまにはいいじゃん。 …あー、じゃあ実家ついてきてくれたお礼ってことで…。 せっかくだし…2人で夏らしいことして遊ぼう。」 「そんなの…っ! 凪くんが頑張ったんだからご褒美もらわなきゃでしょ?!凪くんがしたいことで良かったのに…っ!」 涙声の紅葉に少し怒った口調でそう言われて戸惑う凪。 「じゃあそれは東京戻ったらで。 …嬉しくないの?」 「違…っ! もう…、めちゃくちゃ嬉しいよっ!」 腕の中に飛び込んできた紅葉にギュっと抱き締められて「ありがと!」と言われれば、凪も自然と頬が緩んだ。 「待って、次は絶体出来るからっ!」 「……。あー、うん。 息吸って、止めて、顔浸けて、ゆっくり息吐く …」 「ぷはっ! …なんかタイミング違ったっ!」 「落ち着けって…(苦笑) 別に泳げるようにならなくてもいーじゃん。 浮き輪乗って浮いてるだけでも楽しいよ? 説明難しいけど、多分ここはそーいうプールだって(苦笑)」 水着に着替え、露天風呂より大きなプールを前に足が着くのかな?と一瞬入るのを躊躇っていた紅葉。 そこまでは可愛かった。 イメージだが、初プールではしゃぐ紅葉とキャッキャ言いながら写真撮ったり、イチャイチャじゃれ合いながら水遊びを楽しむんだろうなと思っていた凪…。 しかし何故か真面目に泳げるようになろうとしている紅葉に戸惑う凪。 凪は適度に泳げるが別に水泳をやっていたわけではないので、素人が素人に教えても2時間で泳げるようになるのは難しいだろう…。 「わわっ! ゴーグルするの忘れたっ! …だって泳げる方がカッコいいじゃん…! もしフィンが来てるときにCMとかでやってる大きいプール行くってなってらさ…」 「そーいうプールはダメ。」 「え…?何で?」 「…この身体、他のヤツに見せたくねーんだよ。」 「っ!」 「ごめんな、我慢して」と、抱き寄せてキスを繋ぐ… 因みに目のやり場に困ると日差しはないのにラッシュガードを着せられている紅葉。 「…ん…っ! あ、だめ…っ。 …あんまりキスとかしてたら…反応しちゃうから…!」 「これ以上はしないから…いいじゃん。 だって貸し切りだよ? 誰も見てねーよ?(笑)」 「もう…っ! ダメ…! …ねぇ、泳ぐってどんな感じ? 凪くん、僕をおんぶして泳げる?」 「…さぁ?そんな泳ぎたいの? とりあえずやってみる?」 「わぁーっ!」 そこからは2人で泳いだり、紅葉を浮き輪に乗せて凪が押したり引いたり、ぐるぐる回したりとナイトプールを楽しんだのだった。

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