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【素材を活かすということ】※微R18
紅葉は「夏だしドライヤー熱いなぁ…自然乾燥でいいや~」と、割りと大雑把なところがあるので、世話焼きタイプの凪は同棲中から次第に日々のケアをフォローするようになり、今では当たり前の日常となった。
もちろん多忙な時や生活時間帯が合わない時は紅葉が自分でやるのだが(面倒だとやらないけど)、紅葉のケアも2人の大事なコミュニケーションの時間なのだ。
この日もお風呂で紅葉の全身を磨きあげ、ドライヤーを当てている凪。
「OK…!乾いたぞ。」
「ありがとー。
もう動いていい?」
「あとトリートメントだけつけるからちょっと待って…。」
「わぁ…!
いい匂いだねー。」
「だろ?
お前の好きそうなの出てたから買ってみた。
やっぱ紫外線強いしなぁ…。
…ん?爪も切っておくか…。」
「いいの?
じゃあお願いー!」
以前、自分で切った時に深爪気味に切ってしまいしばらく違和感に悩まされた紅葉。
特に左手はヴァイオリンやベースの弦を押さえるので慎重に切りたいのだが、意外と加減が難しいのだ。
凪はちょっといい爪切りを購入し、絶妙な長さに切ってくれるようになった。
しかもネイル&ハンドクリームを使ったマッサージ付きだ。
この辺りをSNSで呟くと"尽くされ過ぎ!"と話題になるほどだ。
「んー、至福…っ!」
紅葉が呟くと凪は笑った。
「大げさ…(笑)
ってか、珍しく小難しい日本語使ったなー(笑)」
「もうすぐフィン(ドイツにいる紅葉の弟)が来るからねっ!」
余程楽しみなようで、ここ数日準備に余念がないし、兄として日本の良さや美しい日本語を教えたいとはりきっているようだ。
続いて紅葉の足の爪切りを始める凪。
切りながら紅葉に話しかける。
「紅葉ー…
エステ、いつ行くの?」
「ん?
あー…まだ決めてなくて。
…でももうちょっと後にしようかなって。」
「…帰省したからちょっと間あいたでしょ?
確か…いつも2ヶ月くらい?で、行ってるのに。今度撮影あるよな?」
「…え…、そんなヤバい?」
元々、体毛は薄いタイプの紅葉。
化粧ののりや写真映えが良くなるので、唯一の贅沢として脱毛エステに通っているのだ。
とは言っても、そんなに高額のコースではないが…。
凪は首を横に振った。
「それはないけど…でもお前、エステ行った後いつも嬉しそうにしてるじゃん?」
「え…っ?!そうかな?」
「…そう見えるよ。
だから自分に自信が持てたり、心の満足感を得られるなら行った方がいいんじゃねーかなって。
習い事感覚?
ほら、俺だってジム行ったりするし。」
それと同じだと凪は理解を示してくれている。
「あれだよな…。
式とか出費多かったから?
フィンも来るし、行きは空手協会が出してくれるけど、うち来る分で滞在伸ばすから帰りの飛行機代とか土産代もあるもんな。」
「そう…だね。…みんな進級もあるから。」
仕送りを増やしたいのだと紅葉は伝えた。
凪の母の早苗からもらったお小遣い(というかバイト代)は先日新しい炊飯器を買って早苗に送りたいと相談を受けてOKしたところだ。(実家の家電は立て続けに壊れる時期らしい。)
結局、自分のためにはお金を遣わない紅葉。
「そっか…。
忙しくてちゃんと話せてなくて悪かったな。
あー、その辺は心配しなくて大丈夫だから…。」
「…?」
「ちゃんと家計費とは別に用意してるし。
俺だって割りと稼いでるよ?(笑)
だから…とりあえず今度の撮影の前に行って来いよ。」
「えっ?!でも…!」
「ってか、実はもう契約しといたから。」
「えぇっ?!
どーいうこと?!」
「いつもの店でいいんだよな?
"前と同じメニューで、パートナーにプレゼントです"って言ったら契約と支払い出来たから大丈夫。」
「凪くん…っ!
そんな…!」
予期せぬ高額なプレゼントに驚く紅葉。
しかし、別に普段からブランド物ねだるわけでもないんだから…と凪は笑った。
お返しもいらないと付け加える。
「…紅葉は磨かなくてもキレイだけど、こうやって髪も爪も磨けばもっと良くなるんだからさ…。
身も心も磨いて、自信もって、俺の側にいて欲しい。」
料理に限らず良い素材は活かすべきだと、凪は改めて感じているのだ。
「凪くん…っ!!」
「ってか、俺もジムだいぶサボってるからこっから頑張るわ…(苦笑)」
「…ありがとう…!
僕も…、なんか凪くんに出来ること…!
あ!マッサージする?」
PC作業が多くて肩が凝ると言っていたのを思い出し、紅葉はそう提案する。
「おー…!
じゃあ後で頼もうかな?」
「後で…?
ん…っ! や…っ! 何…?」
爪切りを終えた足に口付けられ、驚いていると今度は太股を撫でられ紅葉は思わず声を上げた。
「ずっと見えてんだよねー…、爪切りしてる間さ?(苦笑)」
「…?」
「紅葉…そのロング丈のTシャツ…けっこう前に買ったやつだよな…ヨレるまで着てエライけど…さ、なんで下着履いてないの?(笑)」
「っ!!
忘れてた!
違うの! 暑くて!
後で履こうと…!」
「じゃあ"後で"履こうなー(笑)」
凪は笑い、紅葉にキスを贈るとそう返したのだった。
真夏の夜は長くなりそうだ。
END
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