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【特別なクリスマス】(1)
「うーん?
どうしよ?」
紅葉は仕事以来のメールに目を通しながら今冬のスケジュールについて悩んでいた。
まだ9月だが、ちょっと前から「今年のクリスマス前後は仕事を入れないように」と凪から言われているのだ。
その時は単純に凪の実家への帰省かなぁなんて思っていたのだ。
自分たちの仕事もだが、凪の実家である旅館は繁忙期だ。家業の手伝いも最近やっと様になってきたところなので自分が役に立てるなら喜んでいくつもりだ。
でも…夏を過ぎてから12月の仕事以来も増えてきて、特に幼稚園や保育園でのクリスマス会への誘いが多く、そろそろ具体的なスケジュールを決めなくては…と思い、お風呂上がりに凪に訊ねた。
いつも凪にドライヤーをしてもらっている間にタブレットでスケジュールを入力したり、確認するのが紅葉の役目。
「あー、うん。
だよな…。そろそろそんな時期か…!
んー…」
「…?」
何でか言いづらそうに、どことなく視線を反らして端切れの悪い凪を不思議そうに振り返る紅葉。
「どうかしたの…?」
顔を見て聞くと、凪はドライヤーを置いて向き合ってくれた。もちろん髪はだいたい乾いている。
「もうちょっとちゃんとしたタイミングで言い出したかったんだけどさ…。」
「えっ? 何…?
なんか怖いよ…!(苦笑)」
改まれて、嫌な知らせなのかと不安がる紅葉。
凪は慌てて否定する。
「ごめん、違う違う…っ!(苦笑)
あー、あのさ…。
一緒にドイツに行こう。」
「え…っ?!」
「帰ろう。
紅葉の実家。
ちゃんと報告しないとな、俺たち結婚しましたって。」
筋を通す性格の凪は少し照れ臭そうにそう告げた。
「っ!…っ?!
えっ?!ホントにっ?!
クリスマスに?!」
「…本場のクリスマスマーケット、スゴいんでしょ?…案内してよ。」
「っ!
うんっ!」
紅葉は凪に抱き付くと歓喜で震える声で返事をした。
祖母の急逝時以来の帰国となる。
今度は笑顔で帰れるし、家族との再会を思い描くと紅葉は胸がいっぱいだった。
改めて仕事のスケジュールは大丈夫なのかと凪に聞くと…
「うん。
実はマツくんが育休取りたいって言っててさ。
なんか年齢的に子ども一人だろうからってのと親も高齢だから頼るのもちょっと…って言ってたけど…。俺は普通にスゲーいいなって思って。」
「そうなんだ。
それは素敵だね。」
「おー。
で、珍しくツアーのない年末年始になりそうだからさ。
前倒しでLINKSの仕事したり、帰ったら…あ、年末年始はうちの実家の手伝いに入りたいと思ってるから…けっこうドタバタすると思うけど…(苦笑)
一応5日は向こうにいられる予定なんだけど…どうする?紅葉はもう少し残りたいなら…」
「…っ!5日も?
ありがと…っ!」
話の途中だったが、いろんな思いが溢れてきた紅葉は再び凪にギューっと抱き付いた。
「…なかなか帰れなくてごめんな。
…ゆっくりしてきてもいーよ?」
「ううん。
凪くんと帰る。
で、5日間いっぱい遊ぶ!」
「…うん、そうしよう。」
紅葉らしい言葉に凪は笑顔でそう答えた。
その後は5日間、何をしようかという話で盛り上がる2人。クリスマスプレゼントも直接渡せるとテンション高く嬉しそうな紅葉の様子に凪も満足そうだ。
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