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【手のひらの温もり(1)】

凪と紅葉がドイツへ行った時の珊瑚と紅葉よお話です。 久々に珊瑚と並んで故郷の街を歩く…。 幼少期から珊瑚の方が大きかったが、フォトグラファーという仕事柄か少し会わない間に珊瑚は背も体格も少し大きくなったように見える…。 昔から綺麗で整った顔立ちは人目を引いていたが、なんだかまた色気が増したような…? 「何? じろじろ見んなよ。 ほぼ同じ顔だろ。」 口は悪いのは相変わらずだ…。 「え…けっこう違うと思う…。二卵性だし。 ねぇー!なんでそんな大人でセクシーな感じになれたの?」 さっきすれ違った男2人組も「今の兄弟かな?右の子(珊瑚)、ヤベー。すげーセクシーだな。」って言ってるのが聞こえた。 「はぁー? なんだよ…、知らねーよ。 普通に大人になっただけじゃん。」 「なんかズルい…。」 紅葉の指摘に何が?と怪訝な顔をする珊瑚。 「お前は相変わらずボケっとしててふわっとしてるよなー…。」 「あ、久々に会ったのに悪口ー? ヒドイ。 そんなことないよ! 僕だって大人だよ?前よりちゃんとしてるでしょ!」 「んー…、まぁ…? ちょっと頼りないような…不安そうな感じは抜けてきたかもなー。」 「っ! ほんと? あ。ホットチョコレートだ! ちょっと休憩しよ。ご馳走するよ!」 通りがかった店で温かな飲み物を買い、休憩する2人。引っ越しの手続きもたくさんあり、ややこしいので甘い物でもとらないとやっていられなくなってきたのだ…。 意外とチョコレートが好きな珊瑚は少し落ち着いたようで、優しい口調に戻って紅葉に話かける。 「仕事も順調そうだし…、凪とも、向こうの家族とも上手くいってるみたいで安心した。」 確かに紅葉が不安そうな顔を見せることは減ったと思う。 明るいのにどこか臆病なところがあった紅葉が自分に自信がもてるようになったのは凪や凪の家族、バンドメンバーのおかげだと、珊瑚はちゃんと分かっていた。 「うん!…ありがとう。 まだ幼児音楽教室の方は手探りなんだけど…まぁ楽しくやってるよ! 珊瑚の方はけっこう海外にも行ってるの? 撮影大変?」 「んー、ヨーロッパ圏内だけどな。 夜空撮るのはまだ全然…! 始めたばっかだからな…。 眠いし、寒いし、そんな金になんねーし。」 「…珊瑚の写真好きだよ。 だから辞めないでね。」 「辞めねーよ(苦笑) やっと好きなもの撮れるようになってきたのに…!」 「ふふ。良かったー! ねえ、翔くんとはどうー? けっこうすれ違いって聞いたけど、仲良し?」 2人が協力して、時に自分たちのことよりも祖父や弟たちのフォローを優先してくれているのは本当にありがたい。 でもなんとなく珊瑚の元気がないように感じて紅葉は訊ねた。 「…どうかな? 落ち着いたっつーか…。 くだらない言い合いはするし、普通に家族としては仲良いよ。 みんなの面倒もみてくれるし、じーちゃんのことも気にかけてくれて…そこはスゲーありがたい。 でもあいつは…元は女が好きだし…。」 「ん?」 やはり何かあるようで、珊瑚の話を聞く紅葉。 「出会った頃より背も伸びて、ゴツくなったからな、俺。 …あんま抱きたいとか思わないんじゃねーの? 正直、ボトム苦手だからやんなくてもいーならそれもありかなとも思うけど… かと言って今更逆も…んー…って感じだし。 まぁ、浮気もなさそうだし…、いや俺は知らないだけかもだけど…! 別にいーんだけどな…っ!」 「……?? ごめんね、よく分からないけど… 翔くんは今も珊瑚のこと大好きだと思うよ? だって珊瑚を見てる目がすごーく優しいし! 珊瑚の話する時、一番楽しそうだもん!」 珊瑚がいない時に翔にもちょっと話を聞いたのだが、「時々遠距離だけど、珊瑚の仕事応援してるし!同じ家に帰ってきてくれるだけで十分幸せ!」と言っていたのが印象的だった。 それを珊瑚にも伝えると珍しく顔を赤らめていた。 「…あ、そ…。 ちょっと…恥ずかしいからこの話止めねー?(苦笑)」 動揺する珊瑚に対して紅葉はハキハキと喋り続ける。家だとなかなか2人で話す機会もないので今がチャンスなのだ。 「続けますっ! だから大丈夫!信じてあげてね。 あと珊瑚はキレイだよ! 自信もって!」 「紅葉のくせに言うようになったな…」 「僕も大人になったの!」

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