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【2人の新年】※微R18

不意にグイ…っと、後ろから右腕を掴まれた紅葉は歩みを止めた。 それは決して強引なものではなく、ふわり…と背後から肩、首に回ってきた腕に自身の手を添えながら愛しの人を咎める。 「もー!なーぎー?」 「んー?」 2人の家に帰ってきて数日。 世間も新年特有の雰囲気から日常を歩み始めていた。 凪と紅葉も家族の前では控えていたスキンシップが復活して、凪は紅葉をこれでもかという程に甘やかし、紅葉もほとんどずっと凪にくっついている。 2人と愛犬2匹の生活はどこか懐かしくて、幸せだと改めて感じていた。 「あ…っ! だーめ…! 歯みがきしてから…っ! さっきのステーキ、ソースにニンニクが…!」 「……。」 キスを拒まれ、凪は少し不服そうだ。 隣に住む池波のおじいさんに良いお肉をご馳走になった帰りなのだ。 凪は引かず、そのまま紅葉のニットの裾に手を伸ばしていく。 「っ! …凪…っ!ん…、だめ…だよ。 朝も…したでしょ?」 「……やっと新婚っぽくなってきたのに? 紅葉が足んないんだけど。」 「……!だって…、えっと…じゃあ 練習と、歯みがきとお風呂と平ちゃんたちと遊ぶの終わってからにしよ…?」 「確かに…、練習はした方がいーな…。」 2人は防音設備のある練習部屋へ向かうことにした。 凪は帰ってきてから久々にドラムを叩いて"鈍ってる"と実感したのだ。 少し弾いてすぐに感覚を取り戻せる紅葉とは、明らかな音楽の才能の差があるのは分かっている。 だからこそ地道に努力して、真面目に練習するしかないのだ。 もちろん紅葉だって努力や練習は怠らない。 2人で奏で、創りあげる音楽は唯一無二の宝物だ。 だから、この部屋でだけは"しない"と約束している。 「凪く…、 凪。そろそろ切り上げない?」 今年の目標、情事の時以外でも凪を呼び捨てで呼ぶこと。凪からの要望もあり、とりあえず2人きりの時だけでも頑張ってみている。 「ん。あとちょっと…30分だけやっていく。 先に風呂行ってて?」 「…早く来てね?」 凪と一緒にお風呂が大好きな紅葉に艶っぽく誘われたが、凪は個人練習を続けた。 やっとブランクから抜け出せそうなのだ。 まるでこどもがゲームに夢中になるようにドラムが楽しくて止めたくなかった。 あっという間に約束の30分を過ぎていたようで、ガラス張りのドアの向こうにロング丈の白いニットだけ着て待っている紅葉が熱い視線を送っていた。 「悪い…、集中してた。 これ下履いてんの?(笑)」 「…確かめてみる?」 「…汗つくから…(苦笑) ってか、風呂入らずに待ってたのか?」 自分好みの綺麗な生足が気になって仕方ないのだが、凪がそう言って身を引くと、紅葉は指を絡ませキスをしてきた。 「平ちゃんたちと遊びながらストレッチしてた。やっぱり食べすぎてたよね? モデルさんのお仕事あるからおやつとか気をつけなきゃ…。しばらく揚げ物も控え目にしてもらえる?」 「了解ー。任せとけ。 でもけっこう動いてただろー?」 ドイツではサッカーや薪割り、家畜の世話。 京都では旅館の手伝い。 肉体労働が多かった。 そんなに体重は変わってないはずだ。 「綺麗なラインじゃないと…。 ね、早くお風呂入ろ?僕…もう待てないよ。」 「ん、ごめんな? 綺麗なラインね…。 なるほど、OK! 協力する。」 「えっ? それってどんな…?(苦笑)」 悪戯に笑う凪につられて笑顔の紅葉。 こうしたちょっとしたやりとりも楽しくて幸せだ。 そんな2人の新年。 END

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