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【恋愛の進め方(2)】

ピンポーン…… 「はいはい…っ!」 凪は玄関へ急ぐ。 「どーもー。 …って、風呂上がりか(笑) 上がっていい? 要くん、おいでー。」 「おじゃまします…!」 お風呂でプラスアルファしてしまって、時間ギリギリ…バタバタになったが、なんとか間に合った。 「…どーぞ。 サスケとマツくんも来てるよ。」 凪と紅葉の家にはLIT Jのマツ(育休明け)が息子の廉(れん)を連れてきていた。 奥さんが美容室に行っているらしい。 遠慮がちなマツに対して紅葉と平九郎、梅が大興奮そして大歓迎だった。 「凪! これ頼まれたやつと適当に買ってきたやつね。要くんの袋のはイチゴ。 …そんで、葵はいつ帰ってくんの? レコーディングは?(苦笑)」 ゆーじの問いに紅葉が答える。 「ユキくんが明後日の便って言ってたよ? あ、凪く…ん、手伝うね?」 ぎこちなく凪を呼んだ紅葉は廉を隣にいたサスケに託してキッチンへ向かった。 赤子を受け取ったサスケは慌てている。 「えっ、マジ? うわ、小さっ! あは、小さいマツくんだ(笑) …じゃあやっぱリリース遅くなるな…(苦笑)」 「似てるかな? んと、ツアーリハ優先したいから無理せずそうしよう。歌詞自体は出来てるみたいだしね。」 リーダーのマツがそう言うとゆーじも「了解ー。しょーがねーな、葵は(笑)」と続いた。 LIT JはLIVEが主のインディーズバンドなので融通もきくしなんとかなるのだ。 そのままミーティングを続ける。 ゆーじは廉を見て気付いた。 「要くん、要くん! 見て。どこが似てるかなって思ったら鼻が完全にマツだよ!」 「…!ホントだ。 手も足も全部小さい…!」 「小声じゃなくても大丈夫だよ(笑) 抱っこするー?」 仲睦まじい様子のゆーじと要を見て、凪と紅葉もホッとしていた。 「なんかあの2人、距離縮まったよね?」 「そんな感じな。 ってか、お前もそういうの分かるようになったんだなぁ。」 「分かるよー! 僕、あの2人より先輩だもん!」 得意気に語る紅葉が可笑しくて凪は笑う。 「なんだそりゃ(笑) …あー、ちょ…っ、待て。 ここをこう持って、力加減このくらい…」 「…わ…!難しいねー!」 巻き寿司を教わる紅葉。 「なんかあの2人またラブラブ度アップしてんなー…(苦笑)」 くっついてイチャイチャしながら料理を進める凪と紅葉を見て、サスケが呟やき、周りが同意した。 マツが帰宅し、サスケも仕事へ。 巻き寿司とチャーシューの手土産にマツの奥さんはめちゃくちゃ喜んでくれた。 紅葉の家族分や厨房の仕事で大量料理をしていたせいかけっこうな量が余り、作り過ぎたと凪は呟いた。 隣の池波のおじいちゃんやみなの家にも持って行き、 紅葉のヴァイオリンを聴きに要と2人防音部屋へ。 凪とゆーじで片付け中だ。 「上手くいってんの?」 「うん、まぁ…。 ちょっとずつ? あ、年末のその節はありがとうねー。 凪のお母さんに生け花?教えてもらったの楽しかったんだってー。 花ってどこで習えんだろう?」 「あー、そうなの? いや、知らねーけど…(苦笑) アレンジメント教室とか? カナとか、スタッフの女の子に聞いてみたら? あとは花屋でバイトするとか?」 「おー!そうだね! 習い事かバイトしたいって言ってるし、いいかも! で、凪…。 手繋いでキスの次は何をどう進むべきかな?」 皿洗いの手を止めたゆーじは真剣な表情で凪に訊ねた。 「…中学生かっ! お好きなようにどーぞー?」 「いや、マジで! 一歩ずつ、どう進めば?」 「そりゃあ様子見で進むしかなくね? んー、一緒に風呂とか…?」 「いや、それレベル高い。 むしろ事後でしょ?(苦笑)」 今日のことを指摘されて思わず笑う凪。 「…そう、だな(苦笑) じゃあ、一緒に寝てみたら?」 「………うわ…っ! でも魘されてる時心配だしな…。 ありかな。」 「他には…膝に乗せる、ドライヤーかける、髪セットして、ボディクリーム塗る…、マッサージ、歯磨き…」 「歯磨きまでっ? …凪はとことん尽くし系だな…(苦笑)」 「紅葉は曲創ってる時何も出来ねー時あるから(苦笑) そーいえば、…病院は?行けたの?」 「んー、うん。 マツの嫁さん(看護師)のツテで一回行ってみたけど… やっぱPTSDってやつだって。 まぁ、日常生活は出来てるから…俺には話しにくいこともあるだろうし、カウンセリング通う感じかな。 あー……、この前キス、したら、"キスは初めて"って泣きながら言うんだよ。 なんかもうたまんなくてさ。 ホントに俺が救えんのかな?」 「…お前しかいねーじゃん。」 凪の台詞にゆーじは頷いた。 「……そう言って貰えると…! あ、ごめんね。紅葉くんに頼りっぱなしで…」 「いや、それは全然。 本人も気にしてねーし。 なんか…やっぱ癒し効果みたいなのあるんだろうな。 実家の板長もスゲー怒りっぽくて当たり散らすしヤバいやつなんだけど、休憩時間に紅葉の練習が被ると聞き入ってて…。ホントに僅かだけど…変わった感じしたんだよね。」 「そうなんだ…! いや、紅葉くんはマジでスゲーよ。 あれだけの感情を音楽で表現出来るってさ…相当だよね。俺も正直羨ましいよ。」

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