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【テレビのお仕事】(2)

番組は特番でクイズだけでなく、様々なコーナーがあった。 「これ、優勝賞金いくらだっけ?」 5kmのマラソン競技を余裕で走り終えたみなが光輝に訊ねる。 「…100万円…! キ、ツっ!」 共に走った光輝は息も絶え絶えだが、普段から走り込んでいるみなはケロリとしている。 「なんだ…。機材の頭金にもならないねー。 まぁ、次に繋がればいいか…。」 地面に寝そべりながらコクコク頷く光輝。 「お疲れー! 休憩だって。」 「あー、光輝…大丈夫?」 「お水あるよ…!」 「ありがと…!」 「テレビの収録って待ち時間長いよね。 暇だなぁ…。 …あと5km走ってきていい?」 「お前、元気だなぁ(苦笑)」 みなの発言に凪を始め、驚く一同…。 そしてチーム戦のゲームでは… 「わーいっ!いっぱい取れたー!」 「あはは。 紅葉ー、落としてるよー?(笑)」 「えっ?! ウソ! あぁーっ!」 ピョンピョン跳ね回りながら背中に背負ったカゴにボールを集める紅葉は楽しそうだが、身振りが大きくてボールが溢れまくっている…。 あんなに動けるのは昨夜の俺の忍耐と努力のおかげですよー、と凪は心の中で唱えながら笑顔の紅葉を見守る。 今もカゴの存在を忘れて屈んでしまい、ほとんどボールが出てしまった。 「あれーっ?」 「ねぇ!何やってんのー?(笑)」 「紅葉…っ!カゴ!置いてっ! 早く!」 次の順番を待つ光輝は必死に指示を出すがもう笑い一色の雰囲気となりゲームどころではない。 「ヤバい…、相当面白いんだけどっ!」 「ウケる! 子犬みてぇ(笑)」 「…いや、どんぐり拾ってるリス?(笑)」 メンバー内だけでなく共演者も大ウケし、撮影は大いに盛り上がった。 撮影の合間… 光輝と誠一は楽屋で個々の仕事をし、みなは休憩。凪はLIT'Jの打ち合わせで通話中…。 紅葉は他の共演者の楽屋に顔を出しに行っていた。 「じゃあまたねー!」 「お菓子ありがとうーっ!」 「ただいまー。 あ、凪くん、電話終わった? コーヒー飲む?」 「おかえり…。ん。」 「紅葉、女の子の友達出来たの? アイドルグループじゃん! よくあんなきらきらしたところに入れるね? どーやって仲良くなるの?」 同性の友人が少ないみなは感心したように紅葉に訊ねた。 「この前モデルの仕事で一緒で。 ブランケット貸してたのをわざわざ事務所に送ってくれて、お礼のお菓子もらったからドイツのお菓子あげたんだよー。」 「へぇ。 あー、マネージャーさんまだペコペコしてる。 男は近付けないって鉄壁だと有名なのに…まぁ、紅葉なら安全だもんね。」 「マネージャーさんは腐女子なんだって。 凪くんとのことすごい聞いてくるから、最初は冷やかしかと思ってちょっと怒ったの。そしたら土下座して泣きしながら謝って推しカプなんですーって教えてくれたんだー(笑) …さっき手繋いでるの見られちゃった。」 「へぇー…。 あー、さっきじたばたしてた人いたな。 なんつーか、面白い人…(笑)」 害がないならいいかと、凪は紅葉を隣に座らせて休憩することにした。 大事なツアーファイナル前にテレビ収録というハードスケジュールも、紅葉がいてくれれば乗り越えられそうだ。 スタジオへ戻る途中に紅葉をナンパしていた俳優とバッタリ会った。 「あ…っ!」 光輝はアイコンタクトと手話で凪に抑えるように伝える。 「紅葉くん! お疲れ様ー!さっきのゲーム大活躍だったね!」 「ありがとうー! テレビのお仕事って慣れてないけど、楽しかった!野村くんのチームも2位ですごいね!」 「頑張ってるよー! あ、ご飯行く日どうするー? オフいつ?今度の金曜とかどう? ってか、さっき連絡先聞くの忘れて…」 「んー? あのね、もうすぐ凪くんの大事なLIVEがあるから無理なの。今凪くんすごく大変で…そんな時に僕だけ遊んでるのはちょっと違うでしょ? あとしばらく卒園式とかお呼ばれしてるから難しいんだー。京都にも帰るし!」 ばっさり言い切る紅葉。 凪以外見えてないし、野村という俳優が付け入る隙は全くなさそうだ。 「…ってことだから。 遠慮してもらえる? 紅葉…時間。 行こ。」 「うん…っ! …ごめんね!」 撮影中の雑談も機嫌の直った凪は笑顔で対応していた。 「野村くんは今度ドラマで格闘技やるんだって?」 「あ、はい! そうなんです! 昔空手を少し習ってて、今また始めたとこで…」 「へぇー! そういえば異色の経歴揃いのLINKS! ドラムの凪くんは黒帯?段持ってるとか?」 MCのフリに驚く野村。 「ひぇっ?! マジ、ですか?」 「あー、一応…。 今はキックボクシングやってます。 最近あんま行けてないんですけど、スパーリングとかやるとスッキリするんで… あ、良かったら今度手合わせします?」 「あはは…! 是非…機会があれば…!」 野村はひきつった笑顔で答えている。 そんなやりとりを見ていたみなは小声で言う。 「…いやいや、お兄さん骨折れますよー?」 「みなっ! 静かに!」 「だって凪の目笑ってないしー」 「凪くん、ファイナル前に怪我したら大変だからダメだよー?」 心配そうに凪に伝える紅葉。 「分かってる。 ほら、社交辞令だから。」 「そっかー!」 紅葉は分かってないが、他のメンバーは半分本気でしょ…と思いながらカメラを見つめていた。

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