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【ツアーファイナル】(2)

翌朝… 凪が目を開けると今朝は隣に紅葉がいてくれた。 「おはよ? 昨夜…僕、結局また寝落ちした、よね?」 「…はよ。 あーいや…。 …身体、大丈夫? 無理させた…!ごめん…。」 凪は紅葉を抱き寄せて耳元でそっと謝罪する。紅葉は先に目覚めて、起きたくても起きれなかったのかもしれない。 「…凪、謝るのはなしだよ! 僕、いいよって言ったでしょ…? ふふ…!…あのね! …愛してるって言ってくれて嬉しかった。」 恥ずかしそうにでも嬉しそうに凪の耳元で告げる紅葉。 「紅葉…!」 「ねぇ、美味しい朝ごはん作って? 僕、お腹すいたっ!」 「…ん。了解。」 凪はこれ以上気にすることは止めて、いつも通りおはようのキスをして、愛犬たちの散歩に行き、紅葉のために特製フレンチトーストを作った。 「おいしっ! ふわふわっ! あー! ほっぺたが幸せ…っ!」 「そう?(笑) 良かった。」 日常の中の小さな幸せに微笑み合う2人。 その後は防音部屋へ向かった。 軽くドラムを叩く凪を見守る紅葉。 「…音でね、分かるよ。 …凪くんの気持ち。 ドラム聴いてたら分かる。」 「…スゲーな、紅葉は…! …分かる?ってか、伝わる?」 これは紅葉の才能プラス2人が一緒に音楽をやってきた経験からなのだろうか…。 言葉にしなくても音楽で伝わることがある喜びに驚く凪。 「うん。 楽しみだけど、緊張もあるし…、終わっちゃうのは寂しいよね。 僕もコンクールとか、オケの本番前そういう気持ち…。」 「そっか。 …そう、だな。 ほんと、そんな感じ。 …LINKSも大事だし、もちろん…紅葉と創る音楽もスゲー好きだよ? でも…今のLIT Jめちゃくちゃ音合ってて…スゲー楽しいんだ。」 「うん。 すごく素敵なことだね! 凪、目一杯楽しんできて」 「…ありがと。 なぁ、身体キツイ? ちょっとだけヴァイオリン聴かせて欲しいんだけど…」 「大丈夫だよ。 準備するね。」 紅葉は立ち上がると、その椅子を凪に勧め、ケースからヴァイオリンを取り出す。 自らの耳のみでチューニングを確認した紅葉は凪にアイコンタクトを送り、一呼吸置いてから旋律を奏でた。 美しく、力強いラインはまるで凪の中心を射貫くようだ。心まで深く、音が響く。 また巧くなってる…と、凪は感じた。 鳥肌が立つほど、紅葉のこの才能を目の当たりにして、己との力量の差に挫けそうになる時もあるが、諦めたくも負けたくもない…。 どうか、一番近くで紅葉の創る音楽に触れていたい。 もがき苦しんで、必死になってでも共に最高の音楽を奏でたいのだ。 「……新曲…?だよな?」 「うん。 まだ、途中だけど……どうかな? なんか粗いよね…。 ヴァイオリンで作って、でもLINKSの曲にもしたいから…この後、もう少し考えてみようと思ってるんだ。」 「確かに粗いけど…ある程度この粗さは残した方がいいかも。 あー、上手く言えねーけど… キレイに整え過ぎないのが正しい?」 「…すごい。 さすが凪…っ! ちゃんと伝わって、僕…、嬉しい。」 紅葉も凪と同じように自分の奏でたい音楽を、そこに込められた気持ちの内側を理解してくれた凪に感動していた。 「紅葉…!」 「LIVE、頑張ってね。 必ず見に行くから…。」 「…あぁ。気合い入れて頑張ってくる…っ!」 2人はしっかりとハグを交わして今日のLIVEの成功を願った。

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