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 今は、時計の、チッチッという音きり聞えない。でも、まだあの大音響が耳の奥でウンウンいっていた。  口の中でもつれる舌の感触が、しびれているはずの口によみがえってくる。喉もとからかっと熱くなり、胸をやき、下腹を割る。  僕はカップをデスクに置くと、立ち上がった。あいつは我に返ったようにそんな僕を見上げる。僕はゆっくりあいつに近づき、その手のカップをとると、同じようにデスクに置いた。   あいつの目はさっきより冷静で、戸惑うように揺れている。僕は少し屈み、あいつに顔を近づけた。ずっと前からそうしているように、あいつはそのあごをあげ、僕らの唇は重なり、お互いを煽るようにキスを繰り返した。  あいつをそのままベッドにたおし、僕もその上にのしかかるようにしてベッドに上がった。Tシャツをたくし上げ、胸に唇を当てようとしたら、あいつの身体がこわばるのがわかった。 「何?」  顔を上げると、あいつはあの戸惑ったように揺れる瞳でささやいた。 「俺、よく知らない……」 「え?」  僕は、本当にあいつが何を言っているのかわからなかった。 「……男同士って」  あいつはうわ言のように付け足した。それでも僕はよくわかってなかった。ただ、そんなことをいうあいつが、ひどく愛おしい気がして、僕はもう一度、あいつにキスした。唇に頬に、首筋に。そして、裸の胸に唇を這わせていった。 「幸裕……」  しばらくしてあいつがまた呼んだ。少し声がかすれていた。 「――前、開けて」  僕は少し体を上げ、言われたとおりにあいつのジーンズの前を開け、下着に手を入れた。熱く固くなったあいつのに触れると、あいつは小さくのけぞった。大きく上下するその喉仏がひどく卑猥に見えた。僕も急いでジーンズの前を開け、自分の固くなったものとあいつのを重ねて一緒にしごいた。  あいつは目をぎゅっと閉じ、すこし苦しそうに眉根を寄せながら、でも、徐々に小さく喘ぎ始めた。僕も、下腹からこみ上げる快感にたまらず、喘ぎ声に震えるあいつの唇を強く吸い、舌をかき入れた。  “熱いもん”  あいつがライブハウスで言った言葉をふいに思い出していた。 「ああ――」  喘ぎ声は、“もっと、もっと”とせがむように、切れ目なく、甘く高くなっていく。その声は、歌っているあの声に近かった。

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