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⑨
ただ、僕らは、これらの”行為自体”については、一度も深く話し合ったことはなかった。
“何度目だ?”
今夜も、互いの体中に、僕の、あいつのキスの後がある。今更、キスの数云々を言いたいわけじゃない。
ただ、いつからだろう、あんなキスをするようになったのは。
セックスの後、互いをかきいだき、指をからませ、静かに唇を重ねる。ちょっと泣きたいような胸の奥のうずきと共に。
「おやすみ。」
不意に背中越し、向こうから、あいつがささやいた。我に返った僕は、寝たふりをきめこむつもりだったのに、「うん」とうっかり返事をしていた。
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