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第9話 告白
昨日の出来事を思い出し硝子は思わず一歩後ろに下がった。
しかし自分の上履きは彼の手の中にあるのでどうにかして返してもらわねばならない。
「...あの..それ」
「昨日はすみませんでした!!!」
恭介は応援団のような声を出し凄まじい勢いで頭を下げてきた。
ひっ、と思わず息を飲む。
幸い硝子がもたもたしていたせいで始業のベルはとっくに鳴り
他に生徒はいなかったが、逆を言えばしんと静まり返った玄関内は2人きりで少し恐ろしかった。
「本当は、キスだけ、するつもりだったんですけど、先輩見てたら、とめらんなくて、気付いたら、
俺、ひどいことを....でも、
俺は先輩を傷付けようと思ったわけでは決してなくて、
信じてもらえないかもしれないけど...でも、俺」
恭介が弱々しい声で呟き、硝子はようやくふうと息を吐いて落ち着く努力をした。
「....あの、うわばき..」
「俺、雛瀬先輩の事が好きなんです...!」
「かえして....」
キッと顔を上げた恭介はいやに真面目な顔をしていた。
好き。
硝子はその言葉の意味がわからなかった。
知らない国の言葉を聞いているような気分で、ぼけっとしていると恭介は跪き綺麗に上履きを揃えて置いてくれた。
「....許されることだとは思ってないですけど..でも...っ」
彼は跪いたまま泣きそうな声を出した。
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