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第22話 弁当箱
先輩はいつも遠くを見ている、
その瞳に映りたかっただけだった。
ショッピングセンターの弁当箱売り場のコーナーで
恭介は難しい顔をしてしゃがんでいた。
ガラの悪い高校生には不釣り合いのコーナーであるが
恭介は真剣であった。
「んんんん....」
昼間の出来事が思い浮かび、唸ってしまう。
保健室から去っていく硝子の姿。
そのシンデレラのような尊い後ろ姿が何度も何度も再生される。
その反芻行為は、彼の姿を心のメモリーに焼き付けていることだと自覚していたので
好きにさせているのだった。
可憐な雛瀬先輩。
美しい雛瀬先輩。
彼を思うとうっとりとため息が溢れてしまうほど
恭介の中で硝子は謎の神格化が進んでいた。
「ピンクor赤....」
ポツリと呟いては手に持った二つの弁当箱を見比べ、
一度ぎゅっと目を閉じては見開いた。
「決めた!」
叫びながら立ち上がると近くにいた親子連れが不審な目を向けてきたが
構うことなくレジに走る恭介であった。
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