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第29話 瞳
悪意のない綺麗な瞳。
そんな眼差しを向けられたのは初めてだった。
「それともやっぱり迷惑ですか…
俺みたいなのが作った弁当なんて…」
彼の言葉に硝子は首を横に振った。
正直、とても嬉しいことなのだけれど
複雑な気持ちのまま硝子はじとっと彼を睨んだ。
「そんなことは…ないけど…」
「じゃあいいじゃないですか。
先輩はお腹いっぱいになるし俺は幸せだしwin-winっすよ」
「うぃん...?で、でも俺本当に何も...お礼できない...」
「先輩が喜んで食べてくれるなら
それだけで充分です
雛瀬先輩は、俺にとってめちゃめちゃ......」
恭介は急に言葉を切り震え出し、
やがて地面に手をついて俯いている。
「い、いずみくん...?だいじょう...」
「大丈夫です!なんとか収めてみせます!」
一体どうしたというのか。
ひたすら不可解であったが、こんな風に誰かとたくさん話したのは初めてで
自分が人と会話ができていることも驚きだが、むず痒いような少し怖いような変な気持ちだった。
嬉しい、のかもしれない。
本当にそうならば
こんなことを思ってはいけないのだろうけど。
「雛瀬先輩睫毛長....かわい...しぬ...」
恭介は暫く震えていた。
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