33 / 151

第32話 凍り付く

胸倉を掴んでいた女子生徒がそれに気付き、 突き飛ばすように硝子から手を離した。 「なにこいつ..気持ち悪い..」 女は心底軽蔑したように呟き、自分の掌を摩った。 硝子は立っていられなくなり膝から崩れ落ち、階段を踏みはずしながらへたり込んだ。 女子生徒達は悲鳴をあげながら硝子から後退った。 「....おいなにしてんだ」 低い声が上から降り注ぎ、 硝子以外の全員がそちらを見た。 「きょ、恭介!」 その名前に硝子は恐々と階段の上を見上げる。 いつもにこにこしている恭介が凄まじい形相で立っていて、 怖くなって硝子は目を閉じて体を縮こめた。 「誰になにしてんだって聞いてんだよクソ雌共」 「だ、だって...こいつ」 恭介の低い声に空気が凍り付く。 自分のせいだ、自分のせいで、いずみくんが怒っている。 硝子は逃げ出したくてたまらなかったが身体が震えて立つことができない。 足元に蝶の羽がバラバラと凄まじい勢いで落下していき、埋もれていきそうで怖かった。 「きょう、」 「退けよ」

ともだちにシェアしよう!