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第33話 泣いてる
暫くして女子達は泣きながらバタバタと走り去って行ってしまった。
硝子は彼の気配を感じながらもそちらを見る事も出来ず縮こまっていた。
「.....雛瀬先輩...、ごめんね、怖かったですよね?
怪我してないですか?」
「...ッ!」
恭介の手がそっと肩に触れ硝子はびくりと身体を震わせてしまった。
また、やってしまった。
しかし恭介は優しく肩を撫でてくる。
「ごめんね先輩...ごめんね」
酷く悲しい声で謝られるので、硝子はようやく落ち着きを取り戻して恐々と顔を上げた。
思いの外彼の顔が近くて少し驚いてしまったが、さっきのような険しい表情が消えていて
幾分かホッとしてしまって、
硝子はようやく深く息を吐くことができた。
「...いずみ、くん..俺.....迷惑..」
「雛瀬先輩泣いてる」
恭介は急に目を見開くと硝子の頬を両手で掴んできた。
いつの間にか泣いてしまったらしい。
彼と目を合わせる形で固定され、その瞳に睨まれているようで硝子は唇を噛んだ。
「...泣かせやがって」
恭介はまたぼそりと呟き、硝子の腕をとって立ち上がった。
急に立ち上がらされふらふらしたが彼に引っ張られるように歩き出す。
眼鏡がないためぼやけているが恭介に引っ張られ階段を降り廊下を進み、
角を曲がり、連れられるまま必死に足を動かしていた。
彼は怒っているだろうか。
自分なんかに優しくして後悔しているだろうか。
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