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第35話 いわない

「嫌だよ、雛瀬先輩...俺、俺もっと頑張りますから! あんな奴らともう口聞かないしもっと、 ちゃんと守れるように頑張るし、何でもする、し、」 恭介は跪くと硝子の腕を掴み、崩れるように泣き始めた。 「関わらないとか、言わ、..っう、わああぁん!」 大の男が迷子のように大号泣し始め、硝子は思わず呆気に取られてしまった。 しかしこんな風に泣かせたかったわけではなく、硝子は慌てて彼の頭を撫でた。 「..い…いずみくん...」 「わぁあぁああぁあん」 「な…泣かないで...泣かないで...」 硝子は必死に彼を落ち着かせるよう頭を抱えるように撫で続けた。 「いずみくん..泣かないで....」 恭介はぎゅううっと硝子の腰にしがみつき、 やがてしゃくりあげながら顔を上げた。 鼻水と涙で自分以上に凄まじい顔であった。 「先輩は俺のこと嫌いですか…っ?」 「..そんなことないよ!」 「じゃあ…、もう、関わらないでとか言わない?」 「....う、..」 どうしたらいいのかわからず言葉を詰まらせると 恭介の瞳からまたボロボロと涙が溢れる。 「関わらないでとか、言わないって、言ってよ先輩..っ」 「わ、わかった..言わないよ」 「本当?」 「うん...」 硝子は渋々頷くと恭介はじっと見つめてくる。 その淀みのない純粋な瞳は、とても綺麗で 目を逸らしたくなるのを堪えて硝子は見つめ返した。

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